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第2章 100 疲弊する心
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「ど、どうしたんだ?!上野っ!酷い顔色じゃないかっ!」
15年後の『時巡り神社』に再び戻って来た俺を見て、開口一番教授の口から出た言葉だった。
「教授‥‥久しぶりですね……」
何日かぶりに見た教授が酷く懐かしく感じた。
「久しぶり…?あ、ああそうか。お前は15年前に遡って、そこで日数が経過しているんだものな。まぁ、俺にしてみればついさっき姿を消したばかりの上野が再び目の前に現れたようなものだし」
「そうですね…教授からすればほんの数分しか経過していないわけですよね…?」
けれど、俺にとっては……長く、そして絶望に満ちた数日間だった。
「その様子だと…また駄目だったんだな?」
「…はい」
こくりと頷き返事をする。
「‥…そうか。とりあえず研究室に戻ろう。何、心配するな。今度は俺が運転してやろう」
教授は俺に笑いかけた――。
****
「それで?今回は何が駄目だったんだ?南さんと親しくなることも失敗したのか?」
ハンドルを握り、アクセルを踏みながら教授が尋ねて来た。
「いえ……。今回は‥‥彩花と初めて恋人同士になれました…」
「何だってっ?!そうだったのか!けれど……その割にはお前、今にも死にそうな顔をしているじゃないか……と言うことは、やはり今回も失敗したのか?一体何があったんだ?」
「はい、実は‥‥」
俺はポツリポツリと、今回のタイムトラベルで何があったのかを報告した。
今回は子供の頃の俺を救う為に、俺の父親を警察に突き出したものの身分証明の提示を求められたこと。
彩花と無事に恋人同士になれたものの、職場の妻子持ちの男にストーキングされていること。
そしてその男の出現のせいで彩花はアパートの階段から転げ落ち…命に関わる事故に遭ったこと。
そして警察から疑われていること…全てを教授に打ち明けた。
「……」
教授は黙って俺の話を聞き…最後に深くため息をついた。
「…全く…なんてことだ……それで南さんの死は決定的なものとなり、また警察がお前の元を訪ねてくる可能性があるから、この世界に戻って来たってわけか」
「…はい」
「そうか。それは‥‥辛い目に遭ったな。…どうする?もうやめるか?」
「やめる…?」
教授は俺に彩花を諦めろと言うのだろうか?
「冗談じゃありませんっ!俺は絶対に彩花を諦めたりしないっ!必ず彼女を6月9日の死から救い出すって心に決めたんですからっ!」
「だが…お前の心が持つのか?今だってそんなにボロボロなのに‥‥」
教授は本当に心配そうだった。
「いえ、やります。必ず…俺は彩花を助けると決めたのですから」
きっぱり教授に言い切った。
そして、ここからが‥‥俺の本当の試練の始まりだった。
その後も俺は何度も何度もタイムトラベルを続け…、必ずと言っていい程彩花と恋人同士になった。
そして、必ず彩花は6月9日に死ぬ運命からは逃れることが出来なかった。
彩花の死は様々だった。
交通事故で死ぬこともあったし、突然の病に倒れて死ぬこともあった。
様々な死を迎えて来た彩花ではあったが、圧倒的に『死』の要因となるのは親父。次に椎名が原因だった。
彩花が死を迎えるたびに、俺の心は死んでいった。
頭がおかしくなりそうだったし、誰か彩花を助けてくれと叫びたくなる時もあった。
それらの気持ちを全て胸に抑え込み、新たな彩花の前に立つのは並大抵の精神力では無かった。
よく気が狂わずにいられるものだと我ながら思ってしまう。
いや‥‥もしかすると、既に俺の心は狂っているからこんなことを続けられているのだろうか?
そして、20回目のタイムトラベルを失敗に終えた時……俺と教授はある一つの結論を導き出すのだった――。
15年後の『時巡り神社』に再び戻って来た俺を見て、開口一番教授の口から出た言葉だった。
「教授‥‥久しぶりですね……」
何日かぶりに見た教授が酷く懐かしく感じた。
「久しぶり…?あ、ああそうか。お前は15年前に遡って、そこで日数が経過しているんだものな。まぁ、俺にしてみればついさっき姿を消したばかりの上野が再び目の前に現れたようなものだし」
「そうですね…教授からすればほんの数分しか経過していないわけですよね…?」
けれど、俺にとっては……長く、そして絶望に満ちた数日間だった。
「その様子だと…また駄目だったんだな?」
「…はい」
こくりと頷き返事をする。
「‥…そうか。とりあえず研究室に戻ろう。何、心配するな。今度は俺が運転してやろう」
教授は俺に笑いかけた――。
****
「それで?今回は何が駄目だったんだ?南さんと親しくなることも失敗したのか?」
ハンドルを握り、アクセルを踏みながら教授が尋ねて来た。
「いえ……。今回は‥‥彩花と初めて恋人同士になれました…」
「何だってっ?!そうだったのか!けれど……その割にはお前、今にも死にそうな顔をしているじゃないか……と言うことは、やはり今回も失敗したのか?一体何があったんだ?」
「はい、実は‥‥」
俺はポツリポツリと、今回のタイムトラベルで何があったのかを報告した。
今回は子供の頃の俺を救う為に、俺の父親を警察に突き出したものの身分証明の提示を求められたこと。
彩花と無事に恋人同士になれたものの、職場の妻子持ちの男にストーキングされていること。
そしてその男の出現のせいで彩花はアパートの階段から転げ落ち…命に関わる事故に遭ったこと。
そして警察から疑われていること…全てを教授に打ち明けた。
「……」
教授は黙って俺の話を聞き…最後に深くため息をついた。
「…全く…なんてことだ……それで南さんの死は決定的なものとなり、また警察がお前の元を訪ねてくる可能性があるから、この世界に戻って来たってわけか」
「…はい」
「そうか。それは‥‥辛い目に遭ったな。…どうする?もうやめるか?」
「やめる…?」
教授は俺に彩花を諦めろと言うのだろうか?
「冗談じゃありませんっ!俺は絶対に彩花を諦めたりしないっ!必ず彼女を6月9日の死から救い出すって心に決めたんですからっ!」
「だが…お前の心が持つのか?今だってそんなにボロボロなのに‥‥」
教授は本当に心配そうだった。
「いえ、やります。必ず…俺は彩花を助けると決めたのですから」
きっぱり教授に言い切った。
そして、ここからが‥‥俺の本当の試練の始まりだった。
その後も俺は何度も何度もタイムトラベルを続け…、必ずと言っていい程彩花と恋人同士になった。
そして、必ず彩花は6月9日に死ぬ運命からは逃れることが出来なかった。
彩花の死は様々だった。
交通事故で死ぬこともあったし、突然の病に倒れて死ぬこともあった。
様々な死を迎えて来た彩花ではあったが、圧倒的に『死』の要因となるのは親父。次に椎名が原因だった。
彩花が死を迎えるたびに、俺の心は死んでいった。
頭がおかしくなりそうだったし、誰か彩花を助けてくれと叫びたくなる時もあった。
それらの気持ちを全て胸に抑え込み、新たな彩花の前に立つのは並大抵の精神力では無かった。
よく気が狂わずにいられるものだと我ながら思ってしまう。
いや‥‥もしかすると、既に俺の心は狂っているからこんなことを続けられているのだろうか?
そして、20回目のタイムトラベルを失敗に終えた時……俺と教授はある一つの結論を導き出すのだった――。
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