156 / 200
第2章 96 幸せからの転落
しおりを挟む
俺と彩花はレンタカー会社に来ていた。
「はい、それではこちらが車のキーになります。もういつでもご利用できます」
カウンターで男性スタッフから車のキーを受け取った。
「どうもありがとうございます」
そして背後に立つ彩花を振り返った。
「よし、それじゃ行こうか?」
「うん」
彩花は嬉しそうに笑った――。
****
「それにしても意外だったな~彩花の行きたい場所が日帰り温泉だなんて」
軽のワンボックスカーを運転しながら、隣に座る彩花を見た。
「うん。私、温泉が好きなんだけど実は今まで一度も温泉に行ったことが無くて‥‥だから一度でいいから誰かと温泉に行ってみたかったんだ。…もしかして迷惑だったかな?」
彩花が伏し目がちに尋ねて来た。
「まさか。そんなはずないだろ?むしろ彩花が初めて一緒に温泉に行く相手が俺で嬉しいよ。ありがとうな」
「そ、そんなお礼なんて。むしろお礼を言うのは私の方だよ。こんな車まで出してもらうなんて…」
「そうか?でもごめんな。本当なら大型スーパー銭湯じゃなくて、ちゃんとした温泉に連れて行ってやりたかったんだけどな……」
「いいんだってば。だって私が突然言い出したことなんだし……あ!」
「何だ?どうかしたのか彩花?」
「う、うん。ちょっとアパートのガスの元栓を締めたかどうか忘れちゃって……」
彩花が不安そうに俺を見た。
「よし、なら戻るか?5分もあればアパートに戻れるしな」
「拓也さん…ごめんね?」
申し訳なさげに彩花が謝ってきた。
「いいんだって。それくらいのこと気にするなよ。それじゃ、戻るか」
「うん」
そして俺は車をアパートへ向けた――。
****
「着いたぞ、彩花」
車をアパートの向かい側の道路に横付けした。
「うん、ありがとう。それじゃ確認してくるね」
シートベルトを外す彩花に尋ねた。
「俺も一緒に行こうか?」
「ううん、すぐだからここで待っていてよ」
「ああ。分かった」
「それじゃ待っててね」
彩花は笑顔で車から降りると、アパートへと向かった――。
5分後――
「遅いな……彩花。ガスの様子を見てくるだけなのにそんなに時間がかかるものなのか?」
アパートを見つめていると、突然男が敷地から飛び出してくるのが見えた。
「う、うわっ!な、何だっ?!」
男はかなり慌てた様子でアパートを振り向き…その顔を見て俺は息を呑んだ。
何と男は椎名だったのだ。
「椎名っ?!」
嫌な予感が脳裏を横切り、シートベルトを外して車から降りると椎名を追いかけた。
「待てっ!こいつめっ!」
あいつはスーツ姿に革靴のせいで早く走れない。追いつくのは簡単だった。
「貴様っ!何故逃げるっ!」
50m程走ったところで椎名の襟首を捕まえ、羽交い締めにすると奴は必死で暴れる。
「は、離せっ!離せよっ!!」
「言えっ!貴様、彩花のアパートに行ったんだろうっ?!」
「そ、そうだっ!ま、待ち伏せしていたら…彩花がやってきて俺を見て真っ青になって…逃げようとして階段から…落ちてしまったんだよっ!そ、それで怖くなって俺は…」
「何だってっ?!」
俺は椎名をその場に残してアパートへ向かって駆け出した。
「彩花!」
そして、俺は見た。
頭から血を流し、アザだらけで階段下に倒れている彩花の姿を――。
「はい、それではこちらが車のキーになります。もういつでもご利用できます」
カウンターで男性スタッフから車のキーを受け取った。
「どうもありがとうございます」
そして背後に立つ彩花を振り返った。
「よし、それじゃ行こうか?」
「うん」
彩花は嬉しそうに笑った――。
****
「それにしても意外だったな~彩花の行きたい場所が日帰り温泉だなんて」
軽のワンボックスカーを運転しながら、隣に座る彩花を見た。
「うん。私、温泉が好きなんだけど実は今まで一度も温泉に行ったことが無くて‥‥だから一度でいいから誰かと温泉に行ってみたかったんだ。…もしかして迷惑だったかな?」
彩花が伏し目がちに尋ねて来た。
「まさか。そんなはずないだろ?むしろ彩花が初めて一緒に温泉に行く相手が俺で嬉しいよ。ありがとうな」
「そ、そんなお礼なんて。むしろお礼を言うのは私の方だよ。こんな車まで出してもらうなんて…」
「そうか?でもごめんな。本当なら大型スーパー銭湯じゃなくて、ちゃんとした温泉に連れて行ってやりたかったんだけどな……」
「いいんだってば。だって私が突然言い出したことなんだし……あ!」
「何だ?どうかしたのか彩花?」
「う、うん。ちょっとアパートのガスの元栓を締めたかどうか忘れちゃって……」
彩花が不安そうに俺を見た。
「よし、なら戻るか?5分もあればアパートに戻れるしな」
「拓也さん…ごめんね?」
申し訳なさげに彩花が謝ってきた。
「いいんだって。それくらいのこと気にするなよ。それじゃ、戻るか」
「うん」
そして俺は車をアパートへ向けた――。
****
「着いたぞ、彩花」
車をアパートの向かい側の道路に横付けした。
「うん、ありがとう。それじゃ確認してくるね」
シートベルトを外す彩花に尋ねた。
「俺も一緒に行こうか?」
「ううん、すぐだからここで待っていてよ」
「ああ。分かった」
「それじゃ待っててね」
彩花は笑顔で車から降りると、アパートへと向かった――。
5分後――
「遅いな……彩花。ガスの様子を見てくるだけなのにそんなに時間がかかるものなのか?」
アパートを見つめていると、突然男が敷地から飛び出してくるのが見えた。
「う、うわっ!な、何だっ?!」
男はかなり慌てた様子でアパートを振り向き…その顔を見て俺は息を呑んだ。
何と男は椎名だったのだ。
「椎名っ?!」
嫌な予感が脳裏を横切り、シートベルトを外して車から降りると椎名を追いかけた。
「待てっ!こいつめっ!」
あいつはスーツ姿に革靴のせいで早く走れない。追いつくのは簡単だった。
「貴様っ!何故逃げるっ!」
50m程走ったところで椎名の襟首を捕まえ、羽交い締めにすると奴は必死で暴れる。
「は、離せっ!離せよっ!!」
「言えっ!貴様、彩花のアパートに行ったんだろうっ?!」
「そ、そうだっ!ま、待ち伏せしていたら…彩花がやってきて俺を見て真っ青になって…逃げようとして階段から…落ちてしまったんだよっ!そ、それで怖くなって俺は…」
「何だってっ?!」
俺は椎名をその場に残してアパートへ向かって駆け出した。
「彩花!」
そして、俺は見た。
頭から血を流し、アザだらけで階段下に倒れている彩花の姿を――。
0
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる