6月9日はきっと晴れるから

第2章 95 恋人同士の時間

「ごちそうさまでした。フフ…やっぱり用意してくれた料理を誰かと一緒に食べるって美味しくて幸せだね」

食事を終えて2人でお茶を飲んでいると、彩花が笑みを浮かべて俺を見た。

「彩花‥‥」

そんな彩花が愛しくてたまらず…そして、それと同時に不吉な予感が脳裏を横切る。
もし…もし、また俺が失敗して彩花を失ってしまったら…？果たして俺は正気を保っていられるのだろうか……と――。

不安な気持ちが顔に現れてしまったのだろうか？
彩花が不思議そうな顔で声を掛けて来た。

「どうしたの？拓也さん」

「い、いや。何でも無いよ。彩花と恋人同士になれたことが信じられないくらいに嬉しくて…夢じゃないかと不安になってしまったんだ」

「拓哉さん…」

彩花が俺の隣に座って、声を掛けて来た。

「夢じゃ‥‥無いよ？」

「うん……そうだよな」

そして俺は強く彩花を抱きしめ、唇にキスをした。

そうだ……この感触が夢のはずは無いんだ…。
そして益々俺は深く彩花に口付けした――。



＊＊＊＊

　俺たちはまるで熱に浮かされたかのように何度もキスを交わした。

その後、ようやく落ち着いた俺達。
彩花は会社に電話を掛け、今日は体調不良で休ませて欲しいと頼み…電話を切った。

「うまく休むことが出来て良かったな」

電話を掛け終えた彩花に早速声を掛けた。

「うん‥‥。初めて仕事さぼっちゃった…」

「気にすることは無いって。彩花は今までずっと真面目に働いてきたんだろう？有給だって恐らくたまるばかりで1日も使っていないんじゃないのか？」

「うん…確かにそうだけど……」

「よし、なら今日はデートをしよう！」

「え…ええっ？！デ、デートッ？！」

「そうだ。何処へ行きたい？彩花の行きたい場所ならどこだって連れて行ってやるぞ？」

「本当…？」

「ああ、本当だ。と言う事はどこか行きたいところがあるんだな？」

「でも…いいのかなぁ？」

「遠慮するなって。俺達恋人同士だろう？」

「こ、恋人‥‥」

途端に真っ赤になる彩花。

「どうして赤くなるんだ？」

「だ、だって‥‥使い慣れない言葉だから‥‥」

「だったら慣れないとな？俺と彩花は恋人関係なんだから」

「う、うん…そうだね。それじゃ、どこがいいかな‥‥」

真剣な表情で出掛けたい場所を考えている彩花。そんな彼女を見ているだけでも幸せだ。

「あ、思いついた」

彩花が突然パチンと手を叩いた。

「決まったか？何処へ行きたい？」

「うん…あのね‥‥」


そして彩花は自分が行きたい場所を告げて来た。

「え…？」

その言葉に一瞬俺は驚いた。
けれど、考えて見ればそれは彩花らしい場所だった。


「よし、それじゃそこへ行ってみようか？」

「うん」

彩花は笑いながら頷いた。


この瞬間…‥俺たちは最高に幸せだった。

だからこの後に悲劇が起こるとは思ってもいなかった――。