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第2章 92 言葉遊び
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「俺のスマホから彩花の会社にこのメール送りつけといてやる。これを目にしたら奴はこんなのは誰かの悪戯に決まってると言うかもしれないが、少なくとも社員たちは疑いの目を向けて来るに決まっている。何、仮に俺だとばれたって構うものか。彩花のメールアドレスを転送してもらったと言って、元々彩花に送り付けて来たメールを証拠として見せてやればいいんだから」
「でも…そんなことをしたら拓也さんに迷惑がかかるんじゃ‥‥」
彩花は心配そうな顔で俺を見る。
「いいんだよ、俺のことは。彩花の役に立てればどうってことないさ」
「拓哉さん‥‥」
「よし、それじゃやるか」
早速彩花が転送してきたメールを会社のアドレスを打ち込んで送信した。
「…よし、これで大丈夫だ。後はこのままにしておこう。それで彩花、明日は会社を休め。朝になったら上司に連絡を入れればいいだろう?」
「う、うん‥‥」
それでもまだ彩花は不安そうだ。
「大丈夫だって、俺がついてるんだからもっと気を大きく持てよ。いざとなったら俺が彩花の前に立って盾になってやるから」
そう、かつて彩花が自分の命を犠牲にしてまで俺を助けてくれたように…。
「でも、それでも‥‥」
彩花は肩を震わせて俺を見つめる。
「全く、本当に彩花は心配性だな。よし、もっと酒を持ってくるか」
「え?い、いいよ。もう充分だから」
けれど彩花の制止を聞かず、キッチンに行くと早速冷蔵庫から追加のビールを取り出すと部屋へ持ってきた。
「ほら、もっと飲めよ。飲んで…あれこれ考えるのは忘れろ」
プルタブを開けると、彩花の前にビールを置いた。
「う、うん。分かった、飲むよ……」
彩花は殻になったビールをテーブルの上に置くと、新しい缶ビールに手を伸ばした。
****
「ねぇ…拓也さん…」
2本目の缶ビールですっかり酔ってしまった彩花が赤らんだ頬で声を掛けて来た。
「何だ?」
すっかり出来上がってしまった彩花が心配になった俺は場所を移動して、彩花の隣に座っていた。
「どうして…会って間もない私に‥‥そんなに親切にしてくれるの……?」
首まで赤くなり、アルコールで潤んだ瞳で彩花は俺を見つめて来た。
その姿があまりに色気があり、思わずドキリとした。
彩花は酔っている‥‥。
なら、今なら‥‥俺の気持ちを伝えても大丈夫だろうか?きっとこの様子では明日になれば俺の言葉など忘れてしまうだろうから。
「それは‥‥彩花のことが好きだからさ。初めて会った時からずっと‥‥」
そう、俺は多分15年前から彩花のことがずっと好きだったんだ。
だけど、こんな台詞‥‥お互いシラフの状態では決して言葉に出来ないだろう。
「それ……本当?」
彩花が潤んだ瞳で俺に寄り掛かって来た。
「ああ、本当だ。一目惚れしたのさ」
「良かった…私もそうだったんだ」
「え?」
その言葉に驚いた。
「彩花……今、何て言ったんだ?」
「うん。私もね……実は拓哉さんを始めて見た時から…いいなって思っていたんだ」
彩花は…酔ってるだけだ。
そして俺も酔っている。これは、酒の上での単なる言葉遊びなんだ。
そう言い聞かせながらも、自分の心臓の鼓動は先ほどから煩い程に高鳴っている。
「彩花‥‥」
すると彩花が俺をじっと見つめ…。
「拓哉さん…好き…」
そして彩花は俺の胸に顔をうずめて来た―—。
「でも…そんなことをしたら拓也さんに迷惑がかかるんじゃ‥‥」
彩花は心配そうな顔で俺を見る。
「いいんだよ、俺のことは。彩花の役に立てればどうってことないさ」
「拓哉さん‥‥」
「よし、それじゃやるか」
早速彩花が転送してきたメールを会社のアドレスを打ち込んで送信した。
「…よし、これで大丈夫だ。後はこのままにしておこう。それで彩花、明日は会社を休め。朝になったら上司に連絡を入れればいいだろう?」
「う、うん‥‥」
それでもまだ彩花は不安そうだ。
「大丈夫だって、俺がついてるんだからもっと気を大きく持てよ。いざとなったら俺が彩花の前に立って盾になってやるから」
そう、かつて彩花が自分の命を犠牲にしてまで俺を助けてくれたように…。
「でも、それでも‥‥」
彩花は肩を震わせて俺を見つめる。
「全く、本当に彩花は心配性だな。よし、もっと酒を持ってくるか」
「え?い、いいよ。もう充分だから」
けれど彩花の制止を聞かず、キッチンに行くと早速冷蔵庫から追加のビールを取り出すと部屋へ持ってきた。
「ほら、もっと飲めよ。飲んで…あれこれ考えるのは忘れろ」
プルタブを開けると、彩花の前にビールを置いた。
「う、うん。分かった、飲むよ……」
彩花は殻になったビールをテーブルの上に置くと、新しい缶ビールに手を伸ばした。
****
「ねぇ…拓也さん…」
2本目の缶ビールですっかり酔ってしまった彩花が赤らんだ頬で声を掛けて来た。
「何だ?」
すっかり出来上がってしまった彩花が心配になった俺は場所を移動して、彩花の隣に座っていた。
「どうして…会って間もない私に‥‥そんなに親切にしてくれるの……?」
首まで赤くなり、アルコールで潤んだ瞳で彩花は俺を見つめて来た。
その姿があまりに色気があり、思わずドキリとした。
彩花は酔っている‥‥。
なら、今なら‥‥俺の気持ちを伝えても大丈夫だろうか?きっとこの様子では明日になれば俺の言葉など忘れてしまうだろうから。
「それは‥‥彩花のことが好きだからさ。初めて会った時からずっと‥‥」
そう、俺は多分15年前から彩花のことがずっと好きだったんだ。
だけど、こんな台詞‥‥お互いシラフの状態では決して言葉に出来ないだろう。
「それ……本当?」
彩花が潤んだ瞳で俺に寄り掛かって来た。
「ああ、本当だ。一目惚れしたのさ」
「良かった…私もそうだったんだ」
「え?」
その言葉に驚いた。
「彩花……今、何て言ったんだ?」
「うん。私もね……実は拓哉さんを始めて見た時から…いいなって思っていたんだ」
彩花は…酔ってるだけだ。
そして俺も酔っている。これは、酒の上での単なる言葉遊びなんだ。
そう言い聞かせながらも、自分の心臓の鼓動は先ほどから煩い程に高鳴っている。
「彩花‥‥」
すると彩花が俺をじっと見つめ…。
「拓哉さん…好き…」
そして彩花は俺の胸に顔をうずめて来た―—。
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