6月9日はきっと晴れるから

第2章 83 鳴り響くインターホン

　駅に到着した頃には12時近くなっていた。

そこで近場のファミレスに入り、ランチを食べることにした―。


店内に入り、窓際のボックス席に座るとすぐにメニューを広げた。

「ふ～ん……メニューの料金は今も15年前もあまり大差無いんだな…」

思えば、あの頃の俺はいつも貧しく、飢えていた。
あのろくでなし親父は当然俺の食事を省みるようなやつでは無かった。
冷蔵庫の中はいつも空っぽで、食材など殆ど無かった。
だから学校の給食で栄養を繋いでいたようなものだった。

当然、ファミレスなど入ったことすら無い。

「彩花ともファミレスで食事したことは無かったしな……」

メニューを眺めながら、ついつい彩花の顔が脳裏によぎる。
昨日会ったばかりだというのに、もう会いたくてたまらなかった。

「彩花と一緒に食事に気軽に行けるような関係が築けたらいいのにな」

いや、この際贅沢は言わない。
せめて電話やアドレス交換位出来たら……。

そんな事を考えながら、日替わりランチを注文した――。



＊＊＊＊

　
　ファミレスで食事をとり終えると、今度はスーパーへ行った。
そして色々食材を買って帰ることにした俺は帰り道に後悔することになった。




「う～ん…失敗したな…」

買い物カートを押して買い物をしていたときには気付かなかった。
普段は自転車で買い物に来ていたので、今日もそのつもりで買い物に来てしまっていたのだ。

「お、重い…」

流石にこれはまずかった。
５Kｇの米に、じゃがいもや大根、人参、玉ねぎ、キャベツに缶詰…。
これらを両手にぶら下げて歩いてマンションまでの道のりは男の俺でもきつかった。

「…ここに滞在中の間だけでも自転車をレンタルしてみるか…」

ぼやきながらとてつもなく重い買い物袋をぶら下げて、マンションを目指した――。



＊＊＊＊

ドサドサッ！

マンションに帰り着くと、無造作に買ってきた買い物袋を床の上に置いた。

「ふ～…流石に疲れたな……」

全く無茶な真似をしてしまった。

「今は…午後3時過ぎか……」

少し、休むことにするかな。
それにタイムトラベルをすると数日間は何故か身体がだるく感じる。


重い足取りでベッドに向かうと、そのままドサリと横になり…目を閉じた――。



＊＊＊＊


ピンポーン
ピンポーン

「う‥‥」

何処かでインターホンが鳴っている。

「え…？何だ？」

ムクリとベッドから起き上がると、驚いたことにいつの間にか日は落ちて部屋の中はすっかり暗くなっていた。

しかもそれだけじゃない。
部屋の中ではインターホンが鳴り響いていた。

「…誰だ？まさか‥‥警察だろうか？」

部屋の中で鳴り響くインターホンを聞きながら玄関へと向かい、そっとドアアイから外を覗き込み‥‥思わず息を呑んだ――。