6月9日はきっと晴れるから

結城芙由奈@コミカライズ発売中

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第2章 79 月見酒

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 コーヒーを飲み終えた頃には時刻は21時になろうとしていた。

流石にこれ以上彩花の部屋にいるわけにはいかない。

「ありがとう、食事とコーヒー。どれも美味かったよ」

立ち上がると彩花に礼を述べた。

「ううん。それほど大したおもてなしは出来なかったけど…」

彩花はどこか照れくさそうだった。

「今度は何か俺にお礼をさせてくれよ。…そうだ。来週の土曜日は卓也と3人でプレジャーランドに遊びに行くだろう?そのお金、全額俺に払わせてくれよ。勿論食事もな」

何しろ、15年前…俺は相当彩花の世話になったからな。その御礼を返さなければ。

「え…?でもそれじゃあまりに…」

「いいんだって。俺、こう見えても中々貯金があるんだぜ?それに…本当は彩花だって早くここから引っ越したいんじゃないのか?」

すると俺の言葉に驚いたのか、彩花が目を見開いた。

「どうして私が引っ越したいって分かったの?」

「それは…分かるよ。壁も薄いし、防犯も何もあったもんじゃない。若い女性が住むような場所じゃ無い…通れは思うよ」

「卓也さん…」

「だから、俺が帰ったらきちんと戸締まりしろよ?」

「うん、そうするね」

素直に頷く彩花。

「よし、それじゃ今度こそ本当に帰るよ」

そして玄関に向かうとスニーカーを履くと、改めて彩花を振り返った。

「じゃあ、今度は土曜日だな」
「土曜日…。うん、そうだね」

「おやすみ彩花」
「お休みなさい、拓哉さん」

2人で手を振ると彩花の部屋を後にした。


 アパートを出て、空を見上げると綺麗な夜空が広がっていた。
当然、隣の部屋は明かりが消えて真っ暗になっている。

あいつのことも注視していないとならないな…。

そして、自分の借りているマンスリーマンションへと帰宅した――。


****


 シャワーを浴び終え、タオルで濡れた髪を拭きながらベッドの置かれた部屋に戻ると、早速『地場発生装置』にPCを繋げながら呟いた。

「本当に教授は凄いよな…。あんな人間なのに、自在に時を超える事が出来る機会を発明するんだから」

どれ…。

今、彩花はどこのルートにいるのだろう?
どうか『死』へ続くルートに入っていませんように……。

ドキドキしながら、PC画面を覗き込んだ。


「…やった…大丈夫だ…。今のところ、彩花は全く新しいルートを進んでいるぞ?このまま進んでくれれば6月9日に彩花は死ななくてすむかもしれない…!」

嬉しくて小躍りしたくなってしまった。


「よし、今夜は祝杯でもあげるか!」

立ち上がり、キッチンへ向かうと冷蔵庫から缶ビールを取り出した。

「きれいな月だし…今夜は月見酒でもするかな」

そして窓際に座り、プルタブを開けるとビールを口にした。

「あ~美味いな…。そう言えば…彩花は酒を飲むのかな…?」

出来れば、今度は彩花と酒を飲んでみたい…。

そう遠くない未来に――。
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