6月9日はきっと晴れるから

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第2章 62 守りたい存在

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「さて、この後どうするかな…」

卓也の治療が終わり、腕組みしながら考えた。
軽い脳震盪を起こしただけだから、じきに親父は目を覚ますだろう。そして卓也がいなければ絶対騒ぐに違いない。
かと言って治療の終わった卓也を見れば、今度はどこ手当てをしてもらったのだとしつこく尋ねてくるのは目に見えて分かっていた。

すると…。

「ぼ、僕…もう帰るよ…」

卓也が俯き加減に口を開いた。

「卓也…」
「たっくん…」

「きっと僕がいなければ、お父さん…また機嫌が悪くなると思うんだ。でも…部屋にいれば、多分何も怒られないと思うから…」

けれど卓也の小さな身体は震えている。
こうなったら…。

「よし、なら俺が一緒に行ってやるよ。なら心強いだろう?」

「う、うん!」

途端に卓也は嬉しそうに笑みを浮かべる。…やっぱり不安だったのか。
無理しやがって…。

「私も一緒に行きます」

すると背後で彩花がとんでもないことを言ってきた。

「え?!何を言うんですか!駄目に決まってるじゃないですか!」

驚いて彩花を振り返った。

「何をそんなに驚くのですか?元々は私が上条さんを巻き込んだのですから自分だけ知らんふりするわけにはいきませんよ」

正義感が強い彩花は自分の未来なんか当然知るはずは無かった。


「いいえ、駄目です。危険すぎます。貴女はか弱い女性だ。ましてや、隣に住んでるんですよ?絶対に関わりがあることを知られてはいけません」

彩花…お前、親父に目をつけられたら殺されてしまうんだぞ?!

すると…。

「上条さん!」

彩花の目が険しくなった。

「は…はい…?」

何故だ?彩花が何故か酷く怒っているように見える。

「たっくんのこと、少しは考えてあげて下さい」

「え…ええっ?!」

突然の言葉に驚いた。

「見て下さいっ!こんなに…震えて怖がっているじゃありませんか!」

彩花に言われ、卓也を見下ろして愕然とした。

「……」

卓也はシャツの裾を握りしめ…小刻みに震えていたのだ。

「ご、ごめん!卓也!俺は…別にお前を怖がらせるつもりは無かったんだ!」

頭を下げて卓也に謝罪した。

「お兄ちゃん…」

俺を見上げた卓也の目は赤くなっいた。恐らく涙を堪えていたのだろう。

「南さん…先ほどは済みませんでした」

彩花に向き直り、俺は頭を下げた。

「それじゃ、私も一緒に行っていいんですね?」

ほっとした表情の彩花。

「いえ、それでもやはり駄目です。俺は卓也も南さんも守りたいんです。だからこそ、卓也の父親には関わらないで貰いたいんです。お願いします」

「上条さん…」

彩花は目を見開いて俺を見た。

「よし、それじゃ行くか、卓也」

「う、うん…」

そして俺は卓也を連れて彩花の部屋を後にした――。
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