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第2章 58 少し近づく2人
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今、俺と彩花は互いの部屋に帰る為に2人で並んで住宅街を歩いていた。
本当に…天にも登るほど嬉しい気持ちで一杯だった。
こんな風に大人に成長した俺が…彩花の隣を歩き、彼女を見下ろしているなんて…。
「何だかすみません…。私の分まで荷物を持っていただいて」
俺がどれほどの喜びを胸に秘めているのか気付く様子もなく、彩花は謝罪してきた。
「え?何を謝るんですか?」
「上条さんに私の分の荷物まで持って貰っていることです」
「そんなの当然じゃないですか。俺の分の荷物を入れて貰っているわけですし。第一、荷物を持つのは男の約目ですよ」
「そうですか…?ありがとうございます」
歩きながら丁寧に頭を下げてくる彩花。
恐らく彼女は今まで誰にも頼らずに1人で生きてきたのだろう。
そう…俺と同じ様に…。
「でも本当にすごい偶然ですね。まさか南さんのアパートの向かい側が俺の新居だなんて。そう言えば今日、そちらに引っ越しのトラックが来ていませんでしたか?」
さり気なく子供の頃の俺の存在をアピールする為に引っ越しトラックの話題をすることにした。
「ええ、そうです。いままでずっと空き部屋だった私の隣の部屋に引っ越してきました。何しろ安普請なアパートで、音がとても響くので…その、外に出ることにしたんです」
言いにくそうに彩花が話す。
別にそんな申し訳無さそうにする必要はないのに。
「そうだったんですか…そう言えばあの部屋に子供も住むようですよ?ランドセルや学習机が運ばれているのが見えましたから」
「そうだったんですか…」
そこまで話した時、俺が住むマンスリーマンションと彩花が住むアパートが見えてきた。
引っ越しのトラックはもういない。荷物の運搬が終了したのだ。
「引っ越しトラック、もういませんね」
「ええ、そのようですね…」
俺の言葉に頷く彩花。
「それじゃ、すぐに冷凍庫に自分の分をしまってくるので少し待っていてもらえますか?」
本当は部屋に入れてあげたいが、初対面の男の部屋に呼ぶなんて警戒されるような真似は出来るはずがなかった。
「はい、分かりました。ではここで待っていますね」
彩花の返事を聞くと、急いで自分の部屋へと向った。
ガサッガサッ
彩花の保冷バックから買ってきた自分の分の冷凍食品を少々乱暴にしまうと急いで外に出た。
あまり彩花を待たせるわけにはいかない。
「す、すみません。お待たせしました」
小走りで彩花の元へ向かと、残りの冷凍食品が入った保冷バッグを差し出した。
「いえ…何もそんなに慌てる必要はありませんよ?」
彩花はクスクス笑いながら俺を見る。
その愛らしい姿に心臓の音が高鳴ってくる。
そうだ…。あの事を伝えておこう。
「あの、南さん。俺はこのマンションの103号室に住んでいます」
「はい…?」
怪訝そうに返事をする彩花。
「もし…万一、何か困ったことがあったら遠慮なく訪ねてきて下さい。必ず力になりますから」
「え、ええ…分かりました…」
若干引き気味に彩花は返事をする。
もしかすると…警戒されてしまったかも知れないが、構わなかった。
絶対に今日、隣の部屋で騒ぎが起こる。
心優しい彩花の事だ。子供の俺を見捨てることはないはずだ。
そして、きっと俺を頼ってくるに違いない。
「それでは俺…もう行きますね」
先に部屋に戻った方が彩花は自分の部屋に戻りやすいだろう。
「ええ。今日はありがとうございました」
そして俺は彩花に背を向け、自分の部屋へと戻った―。
本当に…天にも登るほど嬉しい気持ちで一杯だった。
こんな風に大人に成長した俺が…彩花の隣を歩き、彼女を見下ろしているなんて…。
「何だかすみません…。私の分まで荷物を持っていただいて」
俺がどれほどの喜びを胸に秘めているのか気付く様子もなく、彩花は謝罪してきた。
「え?何を謝るんですか?」
「上条さんに私の分の荷物まで持って貰っていることです」
「そんなの当然じゃないですか。俺の分の荷物を入れて貰っているわけですし。第一、荷物を持つのは男の約目ですよ」
「そうですか…?ありがとうございます」
歩きながら丁寧に頭を下げてくる彩花。
恐らく彼女は今まで誰にも頼らずに1人で生きてきたのだろう。
そう…俺と同じ様に…。
「でも本当にすごい偶然ですね。まさか南さんのアパートの向かい側が俺の新居だなんて。そう言えば今日、そちらに引っ越しのトラックが来ていませんでしたか?」
さり気なく子供の頃の俺の存在をアピールする為に引っ越しトラックの話題をすることにした。
「ええ、そうです。いままでずっと空き部屋だった私の隣の部屋に引っ越してきました。何しろ安普請なアパートで、音がとても響くので…その、外に出ることにしたんです」
言いにくそうに彩花が話す。
別にそんな申し訳無さそうにする必要はないのに。
「そうだったんですか…そう言えばあの部屋に子供も住むようですよ?ランドセルや学習机が運ばれているのが見えましたから」
「そうだったんですか…」
そこまで話した時、俺が住むマンスリーマンションと彩花が住むアパートが見えてきた。
引っ越しのトラックはもういない。荷物の運搬が終了したのだ。
「引っ越しトラック、もういませんね」
「ええ、そのようですね…」
俺の言葉に頷く彩花。
「それじゃ、すぐに冷凍庫に自分の分をしまってくるので少し待っていてもらえますか?」
本当は部屋に入れてあげたいが、初対面の男の部屋に呼ぶなんて警戒されるような真似は出来るはずがなかった。
「はい、分かりました。ではここで待っていますね」
彩花の返事を聞くと、急いで自分の部屋へと向った。
ガサッガサッ
彩花の保冷バックから買ってきた自分の分の冷凍食品を少々乱暴にしまうと急いで外に出た。
あまり彩花を待たせるわけにはいかない。
「す、すみません。お待たせしました」
小走りで彩花の元へ向かと、残りの冷凍食品が入った保冷バッグを差し出した。
「いえ…何もそんなに慌てる必要はありませんよ?」
彩花はクスクス笑いながら俺を見る。
その愛らしい姿に心臓の音が高鳴ってくる。
そうだ…。あの事を伝えておこう。
「あの、南さん。俺はこのマンションの103号室に住んでいます」
「はい…?」
怪訝そうに返事をする彩花。
「もし…万一、何か困ったことがあったら遠慮なく訪ねてきて下さい。必ず力になりますから」
「え、ええ…分かりました…」
若干引き気味に彩花は返事をする。
もしかすると…警戒されてしまったかも知れないが、構わなかった。
絶対に今日、隣の部屋で騒ぎが起こる。
心優しい彩花の事だ。子供の俺を見捨てることはないはずだ。
そして、きっと俺を頼ってくるに違いない。
「それでは俺…もう行きますね」
先に部屋に戻った方が彩花は自分の部屋に戻りやすいだろう。
「ええ。今日はありがとうございました」
そして俺は彩花に背を向け、自分の部屋へと戻った―。
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