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第2章 12 ネットカフェにて
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「くそっ…!あいつ…一体何処にいるんだ…?」
ネットカフェのフリードリンクでコーヒーを入れながら苛立ち紛れの声が漏れてしまった。
本来なら今夜はビジネスホテルに宿泊するはずが、予想もしない展開になってしまい予定がすっかり狂ってしまった。
あいつが出所して行方知れずになっていたこと。
出会えたことに感極まって彩花を抱きしめて痴漢扱いされてしまい、彼女に近づくことができなくなってしまったこと…。
精神的ショックでビジネスホテルを探す余裕がなく、つい目に止まったネットカフェに入ってしまったのだ。
「まぁ、別にここでも構わないけどな…食事も出来るし、シャワーもある。リクライニングだから横になることも出来るしな…」
自分のブースに入って内鍵を掛けると、すぐに扉がノックされる音が聞こえた。
コンコン
「はい?」
鍵を開けて引き戸を開けるとそこにはカレーライスを手にした店員が立っていた。
「ご注文の品をお届けに参りました」
「ありがとうございます」
熱々のカレーを受け取ると店員は「ごゆっくりどうぞ」と言って去って行った。
扉を閉めて、再度鍵を掛けるとカレーをテーブルに運んだ。
「うん、うまそうだな…頂きます」
早速カレーを食べながら俺は彩花のことを思い出していた。
彩花は良く俺にカレーライスを作ってくれた。俺が喜んで食べる姿を嬉しそうに見つめていたっけ…。
あんな安普請のアパートに住んでいたのだから、きっと生活は苦しかったに違いない。なのに彩花は俺の為に、自分の部屋によく招いて食事を作ってくれた。
狭い部屋で2人向かい合わせで座り、食事をしたあの時間…とても幸せだった…。
彩花…今度は恋人同士として2人で一緒に食事が出来たら…。
もはや俺の中では彩花の命を救った後は元の世界に帰ることなど、考えてもいなかった―。
****
翌朝―
俺は朝からPCに向かって調べ物をしていた。
明日、6月9日は彩花は子供時代の俺を連れて遊園地に連れて行ってくれることになっている。
彩花は俺を8時半に養護施設まで迎えに来てくれて、2人でバスを待っている時に…あいつが現れて、彩花を…メッタ刺しにして殺害した…。
明日は何としても先回りをして、あいつを探し…捕まえて凶行に及べないようにしてやる。
そうすれば彩花の命は助かるんだからな。
今の俺は彩花から痴漢扱いされている。恐らく彼女に接近するのは不可能だろう。
だが、目の前で自分の命を助けてくれたのが俺だと分かったら?
彩花は優しいし、義理人情に熱い女性だ。
きっと…俺のことを受け入れてくれるはずに違いない。だから明日は何としても失敗することは出来ない。
こうして俺は期待と不安が入り混じった複雑な気持ちを抱えながらネットカフェで計画を練り続けた―。
ネットカフェのフリードリンクでコーヒーを入れながら苛立ち紛れの声が漏れてしまった。
本来なら今夜はビジネスホテルに宿泊するはずが、予想もしない展開になってしまい予定がすっかり狂ってしまった。
あいつが出所して行方知れずになっていたこと。
出会えたことに感極まって彩花を抱きしめて痴漢扱いされてしまい、彼女に近づくことができなくなってしまったこと…。
精神的ショックでビジネスホテルを探す余裕がなく、つい目に止まったネットカフェに入ってしまったのだ。
「まぁ、別にここでも構わないけどな…食事も出来るし、シャワーもある。リクライニングだから横になることも出来るしな…」
自分のブースに入って内鍵を掛けると、すぐに扉がノックされる音が聞こえた。
コンコン
「はい?」
鍵を開けて引き戸を開けるとそこにはカレーライスを手にした店員が立っていた。
「ご注文の品をお届けに参りました」
「ありがとうございます」
熱々のカレーを受け取ると店員は「ごゆっくりどうぞ」と言って去って行った。
扉を閉めて、再度鍵を掛けるとカレーをテーブルに運んだ。
「うん、うまそうだな…頂きます」
早速カレーを食べながら俺は彩花のことを思い出していた。
彩花は良く俺にカレーライスを作ってくれた。俺が喜んで食べる姿を嬉しそうに見つめていたっけ…。
あんな安普請のアパートに住んでいたのだから、きっと生活は苦しかったに違いない。なのに彩花は俺の為に、自分の部屋によく招いて食事を作ってくれた。
狭い部屋で2人向かい合わせで座り、食事をしたあの時間…とても幸せだった…。
彩花…今度は恋人同士として2人で一緒に食事が出来たら…。
もはや俺の中では彩花の命を救った後は元の世界に帰ることなど、考えてもいなかった―。
****
翌朝―
俺は朝からPCに向かって調べ物をしていた。
明日、6月9日は彩花は子供時代の俺を連れて遊園地に連れて行ってくれることになっている。
彩花は俺を8時半に養護施設まで迎えに来てくれて、2人でバスを待っている時に…あいつが現れて、彩花を…メッタ刺しにして殺害した…。
明日は何としても先回りをして、あいつを探し…捕まえて凶行に及べないようにしてやる。
そうすれば彩花の命は助かるんだからな。
今の俺は彩花から痴漢扱いされている。恐らく彼女に接近するのは不可能だろう。
だが、目の前で自分の命を助けてくれたのが俺だと分かったら?
彩花は優しいし、義理人情に熱い女性だ。
きっと…俺のことを受け入れてくれるはずに違いない。だから明日は何としても失敗することは出来ない。
こうして俺は期待と不安が入り混じった複雑な気持ちを抱えながらネットカフェで計画を練り続けた―。
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