70 / 200
第2章 10 初めてのタイムトラベル
しおりを挟む
磁場発生装置が完成した週の土曜午前10時―
俺と宮田教授は『時巡神社』に来ていた。
「いいか、上野。これからお前は15年前の6月7日…事件発生の2日前に戻る…でいいんだな?」
「ええ、そうです。2日もあれば事件を食い止めることが出来ます。あいつの居場所は俺の記憶が正しければ拘置所にいるはずですからね。そこで待ち伏せして、あいつが事件を起こせないようにすればいいだけですから」
「う、うむ…なら早速戻る時間を設定するのだ」
宮田教授は言いよどみながら、磁場発生装置を操作する様に促してきた。
「はい、分かりました」
早速装置に戻りたい時間をセットする。
「…準備できました」
背中に背負ったリュックを背負いながら俺は返事をした。
「ああ、それじゃ…上野。行って来い、見当を祈る」
「はい」
そして俺はスタートボタンを押した途端…辺りを濃い霧が覆い始める。そして途端に足元が大きく揺れ動くような目眩を感じる。
「く…」
霧の中、宮田教授の声が聞こえてきた。
「いいか…上野…何があっても…決して…」
言葉はもうそれ以上聞こえなかった―。
****
「う…」
激しい目眩後…徐々に濃い霧が晴れていく。
「あ…」
やがて霧が完全に晴れ、俺は1人神社に立っていた。…当然宮田教授の姿はない。
「…成功したのか…?本当にここは15年前の6月7日か…?」
林の中を抜け、鳥居をくぐり抜けて俺は路上に出た。
「…景色が違う…」
そこは俺が知る世界ではなかった。目の前の古いアパートは今は新築マンションになっている。
「…時間を確認しに行こう」
宮田教授に言われていたこと…。まずはスマホを契約しに行かなければ…。
俺は駅前に足を向けた―。
****
2時間後の13時―
「どうもありがとうございました」
スマホの手続きを終えた俺は店員に見送られながら店を出た。
「信じられないな…」
俺から見れば旧式のスマホを握りしめながらポツリと呟いた。
やはりここは10年前の6月7日の金曜日だった。
「という事は…あのアパートがあるってことだよな…」
短かったけど、幸せな日々を彩花と過ごしたあのアパート。
この時の俺は既に養護施設に預けられていたけれども、彩花は土日は必ず俺に会いに来てくれていた。
彩花…。
まだ彼女は仕事に行っている時間なのでアパートには帰っていない。でもその前に…どうしてもあのアパートをこの目で確認しておきたかった。
****
「あった…あのアパートが…」
今では駐車場になっているのに、この世界ではアパートとしてちゃんと存在している。
「…っ」
途端に彩花と過ごしたあの頃がまるで走馬灯の様に思い出され、胸が熱くなった。暫く感無量でそこに佇んでいたが…やるべきことが俺にはある。
そう、それはあいつの凶行を止めることだ。
俺はあいつが交流されている拘置所へ向かった―。
****
「え…?出所…した…?」
「はい、その人物なら今朝早くに出所しましたけど?」
「そ、そんな…嘘ですよね?!では何処へ行ったのか教えて下さいっ!」
受付にいた刑務官に気づけば俺は大きな声で詰め寄っていた。
「そんなこと教えられるはずないでしょうっ?!もうお帰り下さいっ!」
そして、俺はなすすべもなく追い返されてしまった。
「嘘だろう…?そんな…」
俺は焦りながら爪を噛んでいた。
そんなバカな。
俺の記憶が正しければ、あいつは6月8日に出所したはずだ。
何故だ?何故予定が狂った?
ひょっとして…俺がここにやってきたことで過去が代わってしまったのだろうか…?
だったら…。
拳を握りしめた。
俺の取るべき行動は後1つしかない。
こうなったら彩花に直接会うしか無い。
けれど、俺が彩花に会うことで…運命が大きく狂っていくことなるとは、この時の俺は思いもしていなかった―。
俺と宮田教授は『時巡神社』に来ていた。
「いいか、上野。これからお前は15年前の6月7日…事件発生の2日前に戻る…でいいんだな?」
「ええ、そうです。2日もあれば事件を食い止めることが出来ます。あいつの居場所は俺の記憶が正しければ拘置所にいるはずですからね。そこで待ち伏せして、あいつが事件を起こせないようにすればいいだけですから」
「う、うむ…なら早速戻る時間を設定するのだ」
宮田教授は言いよどみながら、磁場発生装置を操作する様に促してきた。
「はい、分かりました」
早速装置に戻りたい時間をセットする。
「…準備できました」
背中に背負ったリュックを背負いながら俺は返事をした。
「ああ、それじゃ…上野。行って来い、見当を祈る」
「はい」
そして俺はスタートボタンを押した途端…辺りを濃い霧が覆い始める。そして途端に足元が大きく揺れ動くような目眩を感じる。
「く…」
霧の中、宮田教授の声が聞こえてきた。
「いいか…上野…何があっても…決して…」
言葉はもうそれ以上聞こえなかった―。
****
「う…」
激しい目眩後…徐々に濃い霧が晴れていく。
「あ…」
やがて霧が完全に晴れ、俺は1人神社に立っていた。…当然宮田教授の姿はない。
「…成功したのか…?本当にここは15年前の6月7日か…?」
林の中を抜け、鳥居をくぐり抜けて俺は路上に出た。
「…景色が違う…」
そこは俺が知る世界ではなかった。目の前の古いアパートは今は新築マンションになっている。
「…時間を確認しに行こう」
宮田教授に言われていたこと…。まずはスマホを契約しに行かなければ…。
俺は駅前に足を向けた―。
****
2時間後の13時―
「どうもありがとうございました」
スマホの手続きを終えた俺は店員に見送られながら店を出た。
「信じられないな…」
俺から見れば旧式のスマホを握りしめながらポツリと呟いた。
やはりここは10年前の6月7日の金曜日だった。
「という事は…あのアパートがあるってことだよな…」
短かったけど、幸せな日々を彩花と過ごしたあのアパート。
この時の俺は既に養護施設に預けられていたけれども、彩花は土日は必ず俺に会いに来てくれていた。
彩花…。
まだ彼女は仕事に行っている時間なのでアパートには帰っていない。でもその前に…どうしてもあのアパートをこの目で確認しておきたかった。
****
「あった…あのアパートが…」
今では駐車場になっているのに、この世界ではアパートとしてちゃんと存在している。
「…っ」
途端に彩花と過ごしたあの頃がまるで走馬灯の様に思い出され、胸が熱くなった。暫く感無量でそこに佇んでいたが…やるべきことが俺にはある。
そう、それはあいつの凶行を止めることだ。
俺はあいつが交流されている拘置所へ向かった―。
****
「え…?出所…した…?」
「はい、その人物なら今朝早くに出所しましたけど?」
「そ、そんな…嘘ですよね?!では何処へ行ったのか教えて下さいっ!」
受付にいた刑務官に気づけば俺は大きな声で詰め寄っていた。
「そんなこと教えられるはずないでしょうっ?!もうお帰り下さいっ!」
そして、俺はなすすべもなく追い返されてしまった。
「嘘だろう…?そんな…」
俺は焦りながら爪を噛んでいた。
そんなバカな。
俺の記憶が正しければ、あいつは6月8日に出所したはずだ。
何故だ?何故予定が狂った?
ひょっとして…俺がここにやってきたことで過去が代わってしまったのだろうか…?
だったら…。
拳を握りしめた。
俺の取るべき行動は後1つしかない。
こうなったら彩花に直接会うしか無い。
けれど、俺が彩花に会うことで…運命が大きく狂っていくことなるとは、この時の俺は思いもしていなかった―。
0
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
エリート警察官の溺愛は甘く切ない
日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。
両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

社長室の蜜月
ゆる
恋愛
内容紹介:
若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。
一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。
仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。

思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる