6月9日はきっと晴れるから

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第2章 5 時巡神社

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 この神社を初めて見つけた時も…ちょうど今のように空が黄昏ている頃だった―。


**

「ん?こんな町中に林…?」

自転車に乗ってコンビニバイトの配達へ向かう途中、住宅街の中にひときわ大きな存在感を表している林に何となく惹かれた。つい、自転車を止めて林の奥を覗いてみると赤い鳥居が目に留まった。

「神社…?こんな林の奥に…?」

俺は普段から別に信心深い人間などでは無かった。けれども何故かこの林の奥にある神社に好奇心があった。

「配達の帰りに寄ってみるか…」

そして再び自転車にまたがると、勢いよくペダルを踏んで配達先へ向かった―。



「ありがとうございます、又のご利用をどうぞお待ちしております」

代金を貰い、配達先のお客に頭を下げるとすぐに俺は自転車にまたがり先ほどの林へ向かった。


キーッ!

ブレーキを止め、自転車から降りると早速林の中へ足を踏み入れた。

ザッザッザッ

足元から葉っぱを踏みつける音が聞こえてくる。
林の中には石畳が敷かれ、それがまるで神社への道案内をしているように感じる。そして木々の間から赤い大きな鳥居が見えてきた。

「鳥居…あれをくぐれば神社に行けるのか?」

鳥居を潜り抜けると、突然林の道が開け、眼前に神社が飛び込んできた。扉もぴったりと閉じられ、完全な廃墟のように見える。

「本当に神社があったのか…それにしても随分古びた神社だな…」

神社の周囲はうっそうとした木々に覆われ、まるで人の気配を感じない。恐らく宮司がいないのだろう。

「ここは…なんて名前の神社なのだろう…」

ネットで検索すれば分かるかもしれない。そこでポケットからスマホを取り出し…目を見開いた。

「え…、な、なんでだ?」

スマホに『圏外』の表示がされている。今までずっとスマホを使っていて『圏外』表示が出るのは初めてのことだった。

「一体どういうことなんだ…?」

設定画面を開いて、いろいろいじってみても一向に『圏外』表示は消えない。

「仕方ないな…」

再びポケットにスマホをしまと、今にも朽ち果てそうな古びた神社に近づき…足を止めた。
神社の名前らしき木の立て札を発見したからだ。

「『時巡神社』…?え?時を巡る…まさか…っ!」

もし…もし本当に時が戻れるなら…俺は迷わず彩花が殺される時間に戻って…彼女を救い出しに行くのに…。

「何てな…そんな簡単に時が戻るはず無いよな…SFの世界じゃあるまいし…」

俯き、自虐的に笑った。

「…帰ろう。まだバイトの途中だし…」

そして顔を上げた時、異変を感じた。

「え…?霧…?」

気付けばこの辺り一帯に怪しげな霧が発生していた。それは不気味さを感じさせる。

「…何だか不気味な雰囲気になってきたな…。帰ろう」

俺はますます深くなっていく霧から逃げるかのように、林の中を早足で歩いた。
そして外に出て唖然とした。この辺り一帯が濃い霧に覆われていたからである。
いや、それだけじゃない。ここにとめておいたはずの自転車が消えているのだ。

「嘘だろう?!盗まれたのか?!」

くそっ…!あれは…バイト先の自転車なのに…!

「全く…スマホは圏外だし、自転車は盗まれる…こんなんじゃ連絡も取りようがないな。…仕方ない、歩いて戻るか」

こうして俺はバイト先のコンビニ目指して歩き始めた…。


****

「え…?な、なんでだ…?」

バイト先であるはずのコンビニにやってきたはずなのに、なぜかそこは古い酒屋の店になっている。

そ、そんな…!住所はあっているはずなのに…!そうだ、この店で何か知らないか尋ねてみよう!

そこで俺は酒屋の中に入り…驚愕の事実に気付く―。





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