6月9日はきっと晴れるから

第1章 47 アパートの整理

　朝食後、私と拓也さんはたっくんが住んでいた部屋に行くと一緒に片付けを始めた。

「拓也さん、これはどうすればいいのかな？」

私は何に使うのかよくわからないケーブルやコンセントの束の行方を尋ねた。

「ああ、それはもう全部まとめて捨てるから不用品のところにまとめておいてくれ。あの男は片付けもろくに出来ないくせに何でもかんでも溜め込むんだよ」

言いながら拓也さんはテキパキと片付けをしている。そんな彼の横顔をチラリと見ながら思った。

…拓也さんは何故そんなに詳しくたっくんのお父さんの事を知っているのだろうと…。


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　午後1時―

全ての片付けは終わった。取り敢えず家具、家電、食器類はリサイクルショップに売ることになり、それ以外の私物はコンテナボックスを借りてそこに預け、たっくんの私物は全て児童相談所に送る手続まで完了した。


「はい、お疲れ様」

私の部屋に戻り、拓也さんの目の前にコーヒを置いた。

「ああ、サンキュー」

私も彼の向かい側に座り、コーヒーを飲もうとして…尋ねた。

「ブラックだけど…良かった？」

「勿論。俺は基本ブラックしか飲まないからな」

そして拓也さんはコーヒーを口に運んだ

「ん、美味い。やっぱり労働後のコーヒーは美味いな」

「そうだね」

「それにしても、ある意味拓也の父親がだらしない性格で助かったな。殆ど荷ほどきうしていなかったから片付けにあまり時間を費やさずに済んだ。リサイクル業者も明日には来てくれるし…明日にはこの部屋の解約が出来そうだ」

嬉しそうに言う拓也さんとは裏腹に私は悲しい気持ちと寂しい気持ちが入り乱れていた。

「どうしたんだ？彩花。…元気が無い用に見えるけど…？」

拓也さんが私の様子がおかしいことに気づき、声を掛けてきた。

「うん…。もうたっくんがお隣に戻ってこないのかと思うと寂しくて…」

それだけじゃない。

これは…あくまで私の勘でしか無いけれども、拓也さんはいずれ私の前からいなくなってしまう気がする。そうでなければ出会ってまだ間もないのに…こんなにも情熱的に私を愛してはくれないだろう。まるで私と拓也さんはすぐに終わりを告げる恋愛関係のように思えてならなかった。

「本当に…彩花は卓也のことを大切に思っているんだな。だから、俺は…」

その後の言葉は聞き取れなかった。

「何？今何か言った？」

「いや、何でもない。それじゃコーヒーを飲み終えたら、軽トラを借りに行くか？」

拓也さんが笑顔で言う。

「うん、そうだね。…今日、明日はたっくんに会えないけど…大丈夫かな…」

たっくんの寂しげな顔が脳裏に浮かぶ。

「多分大丈夫だろう？あの施設には卓也と似たような環境下に置かれた子供も多いし、子供なんてものは大人が思うよりも意外とその場の環境になれやすいものだからな」

「うん…」

その言葉に寂しげに頷くと、拓也さんが神妙な顔で私を見た。

「全く…彩花の頭の中は本当に卓也の事ばかりなんだな」

「そ、そんな事は無いよ」

「まぁ…別に構わないけどな。…ありがとう」

「え？」

どうして拓也さんがお礼を言うのだろう？尋ねようとした時、拓也さんが立ち上がった。

「よし。コーヒーも飲み終えたし…そろそろ行こうか？」

「う、うん。そうだね」

そして私達は戸締まりをすると、2人で一緒にレンタカー会社へ向かった―。