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第1章 40 力になりたい

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 悲しかった気持ちが電話から聞こえてくるたっくんの明るい声で浮上する。

「たっくん、どうしたの?突然電話かけてきたりして…」

『うん。施設の人がね、10分だけなら電話を掛けたい人にかけていいですよって言ってくれたから掛けてみたんだよ。お姉ちゃん、昨日の夜はお兄ちゃんと会いに来てくれてありがとう。僕、とても嬉しかったよ』

拓也さんの話に触れてきたので、私の胸がズキリと痛む。

「そう?良かった。会いに行って。たっくんは電話かけるまで何してたの?」

『うん、部屋で本を読んでいたんだ。施設には図書室があって、いろいろな本が置いてあるんだよ』

「そうなんだ?良かったね」

『うん…』

けれど、徐々にたっくんの声に元気が無くなってくる。

「たっくん…どうかしたの?」

『うん…明後日から、又違う学校に行くことを考えて…ちょっと不安になっちゃって…』

「…たっくん…」

たっくんが不安に思うのは無理ない。だって転校してきたばかりで、友達が出来たと思った矢先に父親からの虐待とそして父親の逮捕により養護施設行だなんて…。たっくんはまだたった10歳なのに。私は何もしてあげることが出来ない。

『ごめんね、お姉ちゃん。でもお姉ちゃんの声聞いていたら元気が出てきたよ。また…電話してもいいかなぁ』

たっくんの寂しげな声が受話器越しから聞こえてくる。

たっくん…っ!

「ね、ねぇ!たっくんっ!そこに…施設の人いる?いるなら電話を代わってもらえる?!」

やっぱり、このままじゃ駄目だっ!私は…たっくんの力になりたいっ!

『うん、ちょっと待ってね。今呼んでくるよ』

たっくんの声が聞こえ、受話器が置かれた音が聞こえた。

そして―。


『お待たせいたしました。職員の遠藤と申します』

女性の声が聞こえてきた。

「あの、すみません。私はたっくん…卓也君の知り合いなのですが、土日は面会に行くことが出来ますかっ?!」

『ええ、それは構いませんが…』

「本当ですか?では早速なのですが、明日…会いに行っても大丈夫でしょうか?出来れば一緒にお出かけをしたいのですが…」

『う~ん…基本的に連れ出しての面会は親御さんや親せきの方以外はお断りしているのですが…施設と卓也君と話し合いをしてみます。それで明日は何時頃お越しになりますか?』

「では、午前10時はどうですか?」

『10時ですね、はい。分かりました。お待ちしております。後は他に何かありますか?』

「いえ、大丈夫です。それではもう一度だけたっくんと電話を代わって頂けますか?」

『はい、お待ちください』

するとすぐにたっくんが電話に出た。

『もしもし、お姉ちゃん?』

「うん、そうだよ。たっくん、明日10時に会いに行くから…待っていてね?」

『本当っ?!ありがとう!』

受話器越しからはたっくんの嬉しそうな声が聞こえてくる。

そして新ためて思った。

やっぱり私はたっくんの力になりたい―と。

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