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第1章 38 部屋の前で待つ人は
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1人、ファミレスを出た私はアパート目指してトボトボと住宅街を歩いていた。けれど、そのまま何だかアパートに戻る気にはなれなかった。そこで途中目に留まったコンビニに立ち寄った。
何冊か雑誌を手に取るとぱらぱらとめくり、節約術の特集が組まれている雑誌をレジに持っていき、購入すると店を出た。
「拓也さん…1人で私が店を出てしまったこと…怒っているかな?」
あの時は拓也さんの言葉に動揺して店を飛び出してしまったけど…よくよく考えて見れば私は随分と失礼な事をしてしまった。けれど、今更謝るのもためらわれた。
「どうせ…次に会うときは、きっとたっくんの誕生日の時になるんだろうな。あ…でもその時は、私はもう呼ばれないかも…」
そうだ…きっと拓也さんは彼女を連れて会いに行くのかもしれない。そして2人は結婚して、たっくんをいずれ引き取って…。
私の妄想?はどんどん膨らんでいく。
そうだ、たっくんの保護者になるのは別に私じゃなくても構わないんだ。たっくんを可愛がってくれる人が引き取ってくれれば、私はそれで満足だ。
「そうだよね…別に私じゃなくたって…」
ため息をつきながら、私は築35年の安普請アパートに辿り着いた…。
カンカンカンカン…
良く響く鉄骨の外階段を昇り詰めた私は驚いた。何故なら通路の一番…つまり、私の部屋の扉に寄り掛かるようにして、腕組みした拓也さんがこちらを見て立っていたからだ。
「た、拓也さん…」
思わず階段を上りきった場所で立ち止まる。
「何してるんだよ。彩花、こっちへ来いよ」
拓也さんは私を呼ぶ。
「う、うん…」
伏し目がちに拓也さんの元へ歩いていくと、いきなり手を伸ばしてきた。
「鍵」
「え?」
「部屋の鍵…出して。持ってるんだろう?当然」
「あ、ああ…鍵ね…」
ショルダーバッグから鍵を取り出しながら思った。
一体、拓也さんはどういうつもりなのだろう…と。
「はい、鍵…」
「ん」
鍵を差し出すと、拓也さんはカチンと鍵穴に差し込んで回すとアパートの扉を開けた。
「…入って」
「え?あ…は、はい…」
まるでこれではどちらがこのアパートの住人なのか分からない。
靴を脱いで玄関から上がりこみ、壁についていたスイッチを付ける為に拓也さんの方を振り向いた次の瞬間―
「んっ!」
突然、拓也さんが私にキスをしてきた。それはあまりに突然の出来事で、一瞬自分の身に何が起きているのか理解出来なかった。
「んんーっ!」
暴れると、拓也さんはますます唇を強く押し付けてくる。それどころか、拓也さんはキスしたまま私を抱え上げ、安物のパイプベッドの上に運び…そのまま私を押し倒すと、ようやく唇を離した。けれど、相変わらず私は拓也さんの手でベッドに押し付けられている。そして暗がりの部屋の中で私を見おろす彼。
「い、一体…これは何の真似なの…?」
あまりにも突然の出来事と、未だに状況が把握出来ない私の心臓は激しく脈打ち、今にも口から飛び出しそうだった。
「何の真似だって…?それはこっちの台詞だ…」
拓也さんは私の髪にそっと触れると、再び唇を重ねてきた。しかも今度は深く…気を失いそうな甘いキスを…。
「んっんん…」
一瞬、我を失いそうになり…すぐに冷静さを取り戻した。
「い…いや…。や、やめてよ…っ」
必死で抵抗すると、拓也さんが言った。
「やめてだって?本当にそう思っているのか?俺に結婚を申し込んでおいて?あんな…すがるような目を俺に向けておきながら?」
その言葉に羞恥で思わず顔が赤くなる。拓也さんは今にも泣きそうな顔で私に言う。
「今度は…今回ばかりは…距離を開けようと思っていたのに…もう、あんな辛い思いは二度と味わいたくないから…わざと一歩引いていたのに…それなのに…あんな事を言われたら…そんな目で見つめられたら…彩花に対する気持ちが抑えられなくなるじゃないか…」
拓也さんの目に涙が浮かび、私の頬にそっと触れてくる。
私には彼の話している言葉の意味が少しも理解できなかった。けれど…私に対する気持ちは理解出きる。
「好きだ…彩花…」
「!」
拓也さんの顔が再び近づいてくる。
目を閉じると唇が重ねられ、すぐに深いキスへと変わってゆく。
そして…拓也さんは私の洋服に手を掛けた―。
何冊か雑誌を手に取るとぱらぱらとめくり、節約術の特集が組まれている雑誌をレジに持っていき、購入すると店を出た。
「拓也さん…1人で私が店を出てしまったこと…怒っているかな?」
あの時は拓也さんの言葉に動揺して店を飛び出してしまったけど…よくよく考えて見れば私は随分と失礼な事をしてしまった。けれど、今更謝るのもためらわれた。
「どうせ…次に会うときは、きっとたっくんの誕生日の時になるんだろうな。あ…でもその時は、私はもう呼ばれないかも…」
そうだ…きっと拓也さんは彼女を連れて会いに行くのかもしれない。そして2人は結婚して、たっくんをいずれ引き取って…。
私の妄想?はどんどん膨らんでいく。
そうだ、たっくんの保護者になるのは別に私じゃなくても構わないんだ。たっくんを可愛がってくれる人が引き取ってくれれば、私はそれで満足だ。
「そうだよね…別に私じゃなくたって…」
ため息をつきながら、私は築35年の安普請アパートに辿り着いた…。
カンカンカンカン…
良く響く鉄骨の外階段を昇り詰めた私は驚いた。何故なら通路の一番…つまり、私の部屋の扉に寄り掛かるようにして、腕組みした拓也さんがこちらを見て立っていたからだ。
「た、拓也さん…」
思わず階段を上りきった場所で立ち止まる。
「何してるんだよ。彩花、こっちへ来いよ」
拓也さんは私を呼ぶ。
「う、うん…」
伏し目がちに拓也さんの元へ歩いていくと、いきなり手を伸ばしてきた。
「鍵」
「え?」
「部屋の鍵…出して。持ってるんだろう?当然」
「あ、ああ…鍵ね…」
ショルダーバッグから鍵を取り出しながら思った。
一体、拓也さんはどういうつもりなのだろう…と。
「はい、鍵…」
「ん」
鍵を差し出すと、拓也さんはカチンと鍵穴に差し込んで回すとアパートの扉を開けた。
「…入って」
「え?あ…は、はい…」
まるでこれではどちらがこのアパートの住人なのか分からない。
靴を脱いで玄関から上がりこみ、壁についていたスイッチを付ける為に拓也さんの方を振り向いた次の瞬間―
「んっ!」
突然、拓也さんが私にキスをしてきた。それはあまりに突然の出来事で、一瞬自分の身に何が起きているのか理解出来なかった。
「んんーっ!」
暴れると、拓也さんはますます唇を強く押し付けてくる。それどころか、拓也さんはキスしたまま私を抱え上げ、安物のパイプベッドの上に運び…そのまま私を押し倒すと、ようやく唇を離した。けれど、相変わらず私は拓也さんの手でベッドに押し付けられている。そして暗がりの部屋の中で私を見おろす彼。
「い、一体…これは何の真似なの…?」
あまりにも突然の出来事と、未だに状況が把握出来ない私の心臓は激しく脈打ち、今にも口から飛び出しそうだった。
「何の真似だって…?それはこっちの台詞だ…」
拓也さんは私の髪にそっと触れると、再び唇を重ねてきた。しかも今度は深く…気を失いそうな甘いキスを…。
「んっんん…」
一瞬、我を失いそうになり…すぐに冷静さを取り戻した。
「い…いや…。や、やめてよ…っ」
必死で抵抗すると、拓也さんが言った。
「やめてだって?本当にそう思っているのか?俺に結婚を申し込んでおいて?あんな…すがるような目を俺に向けておきながら?」
その言葉に羞恥で思わず顔が赤くなる。拓也さんは今にも泣きそうな顔で私に言う。
「今度は…今回ばかりは…距離を開けようと思っていたのに…もう、あんな辛い思いは二度と味わいたくないから…わざと一歩引いていたのに…それなのに…あんな事を言われたら…そんな目で見つめられたら…彩花に対する気持ちが抑えられなくなるじゃないか…」
拓也さんの目に涙が浮かび、私の頬にそっと触れてくる。
私には彼の話している言葉の意味が少しも理解できなかった。けれど…私に対する気持ちは理解出きる。
「好きだ…彩花…」
「!」
拓也さんの顔が再び近づいてくる。
目を閉じると唇が重ねられ、すぐに深いキスへと変わってゆく。
そして…拓也さんは私の洋服に手を掛けた―。
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