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第1章 16 断れない瞳
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「あの…本当にいいのですか?タクシー代出して頂くなんて…」
私と彼…上条さんはタクシー乗り場でタクシーを待っていた。乗り場はかなり混雑しており、私達の前には10人前後の人だかりが出来ている。
「ああ、気にしなくていいよ。この仕事の依頼主は太っ腹な人でね…かなり余分に調査費用を貰っているのさ」
「大丈夫なのですか?そんな事私に話しても…?」
私の言葉に上条さんは笑った。
「いいんだって。別にこれ位の事は個人情報に値しないからね」
「ありがとうございます…上条さん」
すると彼は驚いた様に目を見開き、私を見た。
「今…俺の名前呼んでくれたの?」
「え?え、ええ…そうですけど?」
「名字で呼んでくれるのもいいけど…出来れば下の名前で呼んでもらいたいな」
上条さんはとんでもないことを言ってきた。
「え?ええっ?!一体何を言い出すんですか?」
「駄目…かな?」
私をじっと見つめるその目は…何故か何処かで見覚えがある。そして、私はこの目で見られると…言う事を聞いてあげたくなってしまい…。
「拓也…さん?」
すると彼はとても嬉しそうな笑顔を向けると私に言った。
「ありがとう。とても嬉しいよ」
その言葉にドキリとし…私はまだ自分が名乗っていないことに気が付いた。
「あ、そう言えば私まだ名前言ってませんでしたね?私は南彩花っていいます」
「南彩花…それじゃ彩花って呼んでいいかな?」
「え…?」
まさか、そんないきなり名前で呼び捨て?そう言えば、よくよく考えてみればこの人は私に敬語すら使わずに話している。
「あの…それは…」
「彩花」
不意に彼は優し気な声で私の名を呼んだ。
「は…い…」
気付けばうっかり返事をしてしまっていた。
「やった!返事してくれた。よし、それじゃ今から彩花って呼ばせて貰うから」
「え?そ、そんな…」
でも笑顔を向ける彼を見ていれば…この人になら呼び捨てで呼ばれても構わないかなと言う気持ちになっている自分がいた―。
****
あの後、私たちの乗るタクシーの順番が回って来た。2人りで乗り込むと、運転手に行き先を告げ、すぐに車は夜の町を走り出した。
「たっくん…。1人で大丈夫かな…」
夜の町を走るタクシーの窓から外を眺め、ポツリとつぶやくと拓也さんが声を掛けて来た。
「…そんなにあの子が心配?」
「勿論、心配です。そんな事…当然じゃないですか」
「…そう、か」
何故か拓也さんの顔が赤くなっているように見えた。
え…?何で…?
「あの…」
不思議に思い、声を掛けようとした時拓也さんが言った。
「今夜アパートに帰ったら…少年をどうするつもり?」
「どうするって…勿論、食事を作ってあげますよ。それにお布団を拝借して私の部屋に泊めようかと思っています」
「そこまでしなくていいよ」
「え?」
「その子のアパートには俺が泊まるから」
「何言ってるんですか?駄目ですよ!」
「え?何で?」
拓也さんが首をかしげて私を見た。
「だって、興信所の人って…見張る相手に姿を見られたらいけないんですよね?」
「あぁ…それは時と場合によるよ。今回の場合はOKさ」
「だけど…万一、たっくんのお父さんが帰宅したらどうするんですか?」
アパートに帰って、見知らぬ男が上がり込んで泊まっているのを見つけようものなら、あの父親は容赦ないだろう。
「大丈夫、父親は絶対に今夜は帰って来ないから。俺にはそれが分るんだ」
拓也さんはきっぱり言った―。
私と彼…上条さんはタクシー乗り場でタクシーを待っていた。乗り場はかなり混雑しており、私達の前には10人前後の人だかりが出来ている。
「ああ、気にしなくていいよ。この仕事の依頼主は太っ腹な人でね…かなり余分に調査費用を貰っているのさ」
「大丈夫なのですか?そんな事私に話しても…?」
私の言葉に上条さんは笑った。
「いいんだって。別にこれ位の事は個人情報に値しないからね」
「ありがとうございます…上条さん」
すると彼は驚いた様に目を見開き、私を見た。
「今…俺の名前呼んでくれたの?」
「え?え、ええ…そうですけど?」
「名字で呼んでくれるのもいいけど…出来れば下の名前で呼んでもらいたいな」
上条さんはとんでもないことを言ってきた。
「え?ええっ?!一体何を言い出すんですか?」
「駄目…かな?」
私をじっと見つめるその目は…何故か何処かで見覚えがある。そして、私はこの目で見られると…言う事を聞いてあげたくなってしまい…。
「拓也…さん?」
すると彼はとても嬉しそうな笑顔を向けると私に言った。
「ありがとう。とても嬉しいよ」
その言葉にドキリとし…私はまだ自分が名乗っていないことに気が付いた。
「あ、そう言えば私まだ名前言ってませんでしたね?私は南彩花っていいます」
「南彩花…それじゃ彩花って呼んでいいかな?」
「え…?」
まさか、そんないきなり名前で呼び捨て?そう言えば、よくよく考えてみればこの人は私に敬語すら使わずに話している。
「あの…それは…」
「彩花」
不意に彼は優し気な声で私の名を呼んだ。
「は…い…」
気付けばうっかり返事をしてしまっていた。
「やった!返事してくれた。よし、それじゃ今から彩花って呼ばせて貰うから」
「え?そ、そんな…」
でも笑顔を向ける彼を見ていれば…この人になら呼び捨てで呼ばれても構わないかなと言う気持ちになっている自分がいた―。
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あの後、私たちの乗るタクシーの順番が回って来た。2人りで乗り込むと、運転手に行き先を告げ、すぐに車は夜の町を走り出した。
「たっくん…。1人で大丈夫かな…」
夜の町を走るタクシーの窓から外を眺め、ポツリとつぶやくと拓也さんが声を掛けて来た。
「…そんなにあの子が心配?」
「勿論、心配です。そんな事…当然じゃないですか」
「…そう、か」
何故か拓也さんの顔が赤くなっているように見えた。
え…?何で…?
「あの…」
不思議に思い、声を掛けようとした時拓也さんが言った。
「今夜アパートに帰ったら…少年をどうするつもり?」
「どうするって…勿論、食事を作ってあげますよ。それにお布団を拝借して私の部屋に泊めようかと思っています」
「そこまでしなくていいよ」
「え?」
「その子のアパートには俺が泊まるから」
「何言ってるんですか?駄目ですよ!」
「え?何で?」
拓也さんが首をかしげて私を見た。
「だって、興信所の人って…見張る相手に姿を見られたらいけないんですよね?」
「あぁ…それは時と場合によるよ。今回の場合はOKさ」
「だけど…万一、たっくんのお父さんが帰宅したらどうするんですか?」
アパートに帰って、見知らぬ男が上がり込んで泊まっているのを見つけようものなら、あの父親は容赦ないだろう。
「大丈夫、父親は絶対に今夜は帰って来ないから。俺にはそれが分るんだ」
拓也さんはきっぱり言った―。
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