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第1章 13 苛立つ父親と暴力
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小さなキッチンで食器の洗い物をしながら隣の部屋でテーブルに向かって一生懸命ノートに日記を書いているたっくんをチラリと見た。
たっくんはひょっとすると頭の良い少年なのかもしれない。私なんて筆無精だから日記なんて三日坊主で終わっていたけれども、たっくんはもう大学ノートに半分近く書き続けている。
…一体何を書いているんだろう?
「よし、片付け終わりっと」
キュッキュッと蛇口を閉めてエプロンを外し、壁のフックに掛けると時計を見た。時間は午後8時半になろうとしていた。
その時―
ガチャッ
隣の部屋で扉が開く音が聞こえた。たっくんにもその音が聞こえたのだろう。ビクリと肩を動かす姿が見えた。
「たっくん…お父さん、帰ってきたみたいだよ?」
「う、うん…」
たっくんの顔色が良くない。
…本当はたっくんを父親に託すのは気が引けた。だけど、このまま私がたっくんを勝手に預かるわけにはいかなかった。
「たっくん、お姉ちゃんも一緒に行くから…。お父さんの所に帰ろう?」
「うん…」
たっくんはノートを閉じると立ち上がった。…可哀想に、たっくんの身体は震えている。
「…行こう?おいで」
私はたっくんの小さな左手を握りしめた―。
ピンポーン
たっくんを連れてインターホンを鳴らした。すると部屋の奥からドスドスと足音が近づき、ガチャリと扉が開かれた
「あ?また…あんたか?」
「こんばんは。お隣の南です。たっくんを私がお預かりしていたので連れてきました」
無精ひげを生やした、たっくんのお父さんは鬱陶し気に私を見た後に次にたっくんに視線を移した。
「卓也!お前…今まで隣の部屋にいたのか?!一体何やってんだっ!」
するとあろう事か、彼はたっくんを怒鳴りつけて来た。
「ご、ごめんなさい…」
たっくんは今にも消え入りそうな声で謝った。だけど…これではこれはあまりにも理不尽だ。我慢出来ず、私はたっくんの前に立つと父親と対峙した。
「待って下さい!何故たっくんを叱るのですか?たっくんは夜7時過ぎまで部屋の中に入れずにアパートの階段下に座っていたのですよ?仕事から帰った私がたっくんを見かけて、私の部屋に連れて行ったんです!」
「何だよ?あんたは…」
彼は煩げに私を見て、次にたっくんを怒鳴りつけた。
「卓也!お前…鍵は?この部屋の鍵はどうしたっ?!」
「か、鍵…僕、もらっていないよ…?」
震えながら答えるたっくん。
「あ?そうだったか…?」
彼は少し考え込む素振りをし…、次にポンと手を叩いた。
「あ~そうだった。この部屋に越してからまだお前に鍵渡していなかったかもな」
「…」
黙って俯くたっくん。
何て父親だろう?鍵を手渡してもいない事に気付かずにたっくんを追い出し、挙句に謝りもしないなんて…。
「…謝って下さい」
気付けば口を開いていた。
「あ?何だって?」
「ですから、たっくんに謝って下さい。鍵も渡さずに部屋から追い出してしまったことに」
「何だよ?あんたは…こいつはな、俺の子供なんだ。親は子供に謝る必要は無いんだよ」
「何を言っているのですか?過ちがあれば、親も子も関係ありません。たっくんに謝って下さい」
「お、お姉ちゃん…もう、いいから…」
たっくんがオロオロした様子で私に言う。
「うるせーなーっ!あんたは他人なんだから一々我が家の家庭の方針に口出しするんじゃねぇっ!来い!卓也!」
彼は乱暴にたっくんの左手を掴むと部屋の中に入れてしまった。
バンッ!
目の前で扉が思いきり閉じられると同時に父親の怒鳴り声が聞こえて来た。
「卓也っ!貴様…よくも俺に恥をかかせてくれたな!」
バンッ!!
怒鳴り声と同時に叩かれる音が聞こえた。
「たっくんっ?!」
どうしよう…私のせいでたっくんが…!
「ちょっと!何してるんですかっ?!」
たまらずドアをドンドン叩くと、怒鳴り声が聞こえて来た。
「うるせぇっ!卓也がこんな目に遭うのは…お前のせいだからなっ!」
「やめて…お姉ちゃんは悪く…」
バシッ!!
さらに彼を叩く音が聞こえた。
「やめて下さいっ!!勝手な事をしたのは謝りますから…たっくんに乱暴しないでください!」
すると、扉が再び開かれた。そこには髪が乱れ、目が血走った父親が立っている。
「ああ、そうだ…分ればいいんだよ。分れば。今後俺の教育方針に口出しすんじゃねえぞっ!」
バンッ!
そして扉は再び乱暴に閉ざされた。
「…」
私はなすすべも無く、部屋に戻るしかなかった。
ごめんなさい、たっくん…。
心の中で、たっくんに詫びを入れながら―。
たっくんはひょっとすると頭の良い少年なのかもしれない。私なんて筆無精だから日記なんて三日坊主で終わっていたけれども、たっくんはもう大学ノートに半分近く書き続けている。
…一体何を書いているんだろう?
「よし、片付け終わりっと」
キュッキュッと蛇口を閉めてエプロンを外し、壁のフックに掛けると時計を見た。時間は午後8時半になろうとしていた。
その時―
ガチャッ
隣の部屋で扉が開く音が聞こえた。たっくんにもその音が聞こえたのだろう。ビクリと肩を動かす姿が見えた。
「たっくん…お父さん、帰ってきたみたいだよ?」
「う、うん…」
たっくんの顔色が良くない。
…本当はたっくんを父親に託すのは気が引けた。だけど、このまま私がたっくんを勝手に預かるわけにはいかなかった。
「たっくん、お姉ちゃんも一緒に行くから…。お父さんの所に帰ろう?」
「うん…」
たっくんはノートを閉じると立ち上がった。…可哀想に、たっくんの身体は震えている。
「…行こう?おいで」
私はたっくんの小さな左手を握りしめた―。
ピンポーン
たっくんを連れてインターホンを鳴らした。すると部屋の奥からドスドスと足音が近づき、ガチャリと扉が開かれた
「あ?また…あんたか?」
「こんばんは。お隣の南です。たっくんを私がお預かりしていたので連れてきました」
無精ひげを生やした、たっくんのお父さんは鬱陶し気に私を見た後に次にたっくんに視線を移した。
「卓也!お前…今まで隣の部屋にいたのか?!一体何やってんだっ!」
するとあろう事か、彼はたっくんを怒鳴りつけて来た。
「ご、ごめんなさい…」
たっくんは今にも消え入りそうな声で謝った。だけど…これではこれはあまりにも理不尽だ。我慢出来ず、私はたっくんの前に立つと父親と対峙した。
「待って下さい!何故たっくんを叱るのですか?たっくんは夜7時過ぎまで部屋の中に入れずにアパートの階段下に座っていたのですよ?仕事から帰った私がたっくんを見かけて、私の部屋に連れて行ったんです!」
「何だよ?あんたは…」
彼は煩げに私を見て、次にたっくんを怒鳴りつけた。
「卓也!お前…鍵は?この部屋の鍵はどうしたっ?!」
「か、鍵…僕、もらっていないよ…?」
震えながら答えるたっくん。
「あ?そうだったか…?」
彼は少し考え込む素振りをし…、次にポンと手を叩いた。
「あ~そうだった。この部屋に越してからまだお前に鍵渡していなかったかもな」
「…」
黙って俯くたっくん。
何て父親だろう?鍵を手渡してもいない事に気付かずにたっくんを追い出し、挙句に謝りもしないなんて…。
「…謝って下さい」
気付けば口を開いていた。
「あ?何だって?」
「ですから、たっくんに謝って下さい。鍵も渡さずに部屋から追い出してしまったことに」
「何だよ?あんたは…こいつはな、俺の子供なんだ。親は子供に謝る必要は無いんだよ」
「何を言っているのですか?過ちがあれば、親も子も関係ありません。たっくんに謝って下さい」
「お、お姉ちゃん…もう、いいから…」
たっくんがオロオロした様子で私に言う。
「うるせーなーっ!あんたは他人なんだから一々我が家の家庭の方針に口出しするんじゃねぇっ!来い!卓也!」
彼は乱暴にたっくんの左手を掴むと部屋の中に入れてしまった。
バンッ!
目の前で扉が思いきり閉じられると同時に父親の怒鳴り声が聞こえて来た。
「卓也っ!貴様…よくも俺に恥をかかせてくれたな!」
バンッ!!
怒鳴り声と同時に叩かれる音が聞こえた。
「たっくんっ?!」
どうしよう…私のせいでたっくんが…!
「ちょっと!何してるんですかっ?!」
たまらずドアをドンドン叩くと、怒鳴り声が聞こえて来た。
「うるせぇっ!卓也がこんな目に遭うのは…お前のせいだからなっ!」
「やめて…お姉ちゃんは悪く…」
バシッ!!
さらに彼を叩く音が聞こえた。
「やめて下さいっ!!勝手な事をしたのは謝りますから…たっくんに乱暴しないでください!」
すると、扉が再び開かれた。そこには髪が乱れ、目が血走った父親が立っている。
「ああ、そうだ…分ればいいんだよ。分れば。今後俺の教育方針に口出しすんじゃねえぞっ!」
バンッ!
そして扉は再び乱暴に閉ざされた。
「…」
私はなすすべも無く、部屋に戻るしかなかった。
ごめんなさい、たっくん…。
心の中で、たっくんに詫びを入れながら―。
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