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第1章 4 拒絶する少年
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「何て酷い怪我…」
私はすぐに持ってきていたスマホをタップするとタクシー会社を検索し、電話を掛けた。
何コール目かで応答があった。
『はい。中央タクシーです』
「すみません、すぐにタクシーの手配をお願いします。住所は…」
タクシー会社にこのアパートの住所を告げて電話を切ると目を閉じて横たわっている少年を見つめた。まだ小学校低学年くらいだろうか…?身体のあちこちには痣があり、ひどい有様だった。
「可哀想に…」
すると少年がパチリと目を開ける。
「あ…お、お姉さん…?」
「何?」
「どうして…この部屋に…いるの…?」
「それはね、この部屋から貴方が暴力を振るわれている音が聞こえてきたからよ。それで誰かが出ていった音が聞こえてきたから、思い切って部屋に入って来たのよ。ごめんね?ノックをしても誰も出てこなかったから…勝手に入ってきちゃった」
「…お父さんが…出て…行ったから…」
「お父さん?出ていったのは君のお父さんなんだね?」
「…うん…」
そう言うと、少年は再び目を閉じた。…可哀想に。やっぱり父親から暴力を受けていたんだ。
「今、タクシーを呼んだからすぐにメディカルセンターに連れて行ってあげるね。今日は日曜日だけど、そこなら診察してくれるから」
すると少年の目に怯えが走る。
「そんな…だ、駄目だよ…病院なんかに行ったら…お、お父さんに…怒られる…お願い…僕を病院には運ばないで…」
少年は震える手で私の袖を掴んできた。
「だ、だって!そんな酷い怪我…駄目だよ!放っておけないじゃない!」
その時、開け放していた扉から車のドアの開閉音が聞こえた。
「もしかしてタクシーが到着したのかも…今、見てくるから待っていてね」
「お、お姉ちゃん…」
少年は私を呼ぶ。
「大丈夫、すぐ戻るから」
それだけ告げると私は玄関の外へ出た―。
****
「大丈夫?苦しい?」
私はタクシーの中で少年に声を掛けた。
「う、うん…大丈夫…」
コクリと頷く少年はそのまま口を閉ざし、タクシーの座席に沈み込むように座ると窓の外に目を向けてしまった。
…結局、私は強引に少年を連れてタクシーに乗せ、今2人でメディカルセンターに向かっていた。少年はずっと嫌がっていたけれども、タクシーに乗せられた段階で諦めたようだった。
再度、少年に話しかけようと思ったけれども怪我の具合も酷かったし、ここは車内。メディカルセンターに着いたら色々尋ねることにしよう。
そして私も窓の外を眺めながら、今度は別の心配を始めていた。
タクシー代の事と、少年の治療代は合わせていくら位になるのだろうか…?
****
やがてタクシーはメディカルセンターに到着した。
「ありがとうございました」
タクシー代3200円を支払い、私は少年を連れてタクシーを降りた。
「ここは…?」
少年は目の前の2階建ての大きな白い建物を見て呟いた。
「ここはね、メディカルセンターっていうの。休日や夜間診療を行っているセンターなんだよ?さ、行こう?」
「…」
けれど、少年は黙ったまま中へ入ろうとしない。
「どうしたの?」
「診察してもらったら…ばれちゃうよ…」
「ばれる?」
「お父さんに…暴力振るわれているって事…そしたらもっと殴られる…」
その言葉に私は胸がグッとなった。なんてことだろう…。少年は完全に父親の支配下に置かれている。かつての自分を見ているようで胸が苦しくなってくる。あの時の私は誰も助けてくれる人がいなかった。自分で何とかするしかなかった。
だけど…この少年には同じ目に遭ってもらいたくない。
「大丈夫よ。お姉ちゃんが…何とかしてあげるから…行こう」
そして私は少年の手を引いてメディカルセンターへと入った―。
私はすぐに持ってきていたスマホをタップするとタクシー会社を検索し、電話を掛けた。
何コール目かで応答があった。
『はい。中央タクシーです』
「すみません、すぐにタクシーの手配をお願いします。住所は…」
タクシー会社にこのアパートの住所を告げて電話を切ると目を閉じて横たわっている少年を見つめた。まだ小学校低学年くらいだろうか…?身体のあちこちには痣があり、ひどい有様だった。
「可哀想に…」
すると少年がパチリと目を開ける。
「あ…お、お姉さん…?」
「何?」
「どうして…この部屋に…いるの…?」
「それはね、この部屋から貴方が暴力を振るわれている音が聞こえてきたからよ。それで誰かが出ていった音が聞こえてきたから、思い切って部屋に入って来たのよ。ごめんね?ノックをしても誰も出てこなかったから…勝手に入ってきちゃった」
「…お父さんが…出て…行ったから…」
「お父さん?出ていったのは君のお父さんなんだね?」
「…うん…」
そう言うと、少年は再び目を閉じた。…可哀想に。やっぱり父親から暴力を受けていたんだ。
「今、タクシーを呼んだからすぐにメディカルセンターに連れて行ってあげるね。今日は日曜日だけど、そこなら診察してくれるから」
すると少年の目に怯えが走る。
「そんな…だ、駄目だよ…病院なんかに行ったら…お、お父さんに…怒られる…お願い…僕を病院には運ばないで…」
少年は震える手で私の袖を掴んできた。
「だ、だって!そんな酷い怪我…駄目だよ!放っておけないじゃない!」
その時、開け放していた扉から車のドアの開閉音が聞こえた。
「もしかしてタクシーが到着したのかも…今、見てくるから待っていてね」
「お、お姉ちゃん…」
少年は私を呼ぶ。
「大丈夫、すぐ戻るから」
それだけ告げると私は玄関の外へ出た―。
****
「大丈夫?苦しい?」
私はタクシーの中で少年に声を掛けた。
「う、うん…大丈夫…」
コクリと頷く少年はそのまま口を閉ざし、タクシーの座席に沈み込むように座ると窓の外に目を向けてしまった。
…結局、私は強引に少年を連れてタクシーに乗せ、今2人でメディカルセンターに向かっていた。少年はずっと嫌がっていたけれども、タクシーに乗せられた段階で諦めたようだった。
再度、少年に話しかけようと思ったけれども怪我の具合も酷かったし、ここは車内。メディカルセンターに着いたら色々尋ねることにしよう。
そして私も窓の外を眺めながら、今度は別の心配を始めていた。
タクシー代の事と、少年の治療代は合わせていくら位になるのだろうか…?
****
やがてタクシーはメディカルセンターに到着した。
「ありがとうございました」
タクシー代3200円を支払い、私は少年を連れてタクシーを降りた。
「ここは…?」
少年は目の前の2階建ての大きな白い建物を見て呟いた。
「ここはね、メディカルセンターっていうの。休日や夜間診療を行っているセンターなんだよ?さ、行こう?」
「…」
けれど、少年は黙ったまま中へ入ろうとしない。
「どうしたの?」
「診察してもらったら…ばれちゃうよ…」
「ばれる?」
「お父さんに…暴力振るわれているって事…そしたらもっと殴られる…」
その言葉に私は胸がグッとなった。なんてことだろう…。少年は完全に父親の支配下に置かれている。かつての自分を見ているようで胸が苦しくなってくる。あの時の私は誰も助けてくれる人がいなかった。自分で何とかするしかなかった。
だけど…この少年には同じ目に遭ってもらいたくない。
「大丈夫よ。お姉ちゃんが…何とかしてあげるから…行こう」
そして私は少年の手を引いてメディカルセンターへと入った―。
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