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11-4 馬車の中で
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午後7時―
寮母さんと一緒に食堂で夕食を頂いた後、誰もいない部屋で私は1人、図書室から借りてきた本を読んでいた。
カチコチカチコチ…
とても静かな夜だった。
時計の針だけがこの静寂の中に響いている。
その時―。
コンコン
突然窓を何かが叩く音が聞こえてきた。
「まさか…イアソン王子っ?!」
私の勘では何となくイアソン王子が訪ねてくるような気がしていた。
急いで窓の側に駆け寄った。
カーテンを開けるとやはりそこに立っていたのは防寒コートに身を包んだイアソン王子だった。
「イアソン王子、お待ちしておりました」
私は窓の扉を開けた。
「え…?そうか、俺のことをお前は待っていてくれたのか?」
何故かイアソン王子は嬉しそうにしている。
「はい、それで…いらして頂いたのはレナート様の件ですよね?」
「ああ、そうだ。それで…門限の9時まではまだ時間がある。外は寒いから何処か店に入って話をしないか?実は門の外に馬車を待たせてあって、ルペルトも一緒なんだ」
「え?ルペルト様も?」
ルペルト様の事を思うだけで、どうしても…頬がゆるんでしまう。
「ああ、そうだ。…嬉しいだろう?」
イアソン王子は妙に思わせぶりな口調だった。
「あ…そ、それは…」
そうだ、ルペルト様は婚約者がいる方なんだ。そんな人に横恋慕するなんて…私は最低だ。
「…冗談だ、気にするな。外で待っているから暖かい格好で出てきた方が良い」
「分かりました」
「それじゃ又後で」
イアソン王子はそれだけ言うと、すぐに去って行った。
「私も準備しなくちゃ」
私はフックに掛けて置い防寒コートに手を伸ばした―。
****
「すみません、お待たせ致しました」
コートを着て、ショルダーバッグを肩から下げた私はイアソン王子の元へ駆けつけた。
「よし、来たか。なら早速馬車に乗ろう」
「はい」
馬車の前には月明かりを背に、ルペルト様が立って待っていた。
まるで王子様のような出で立ちに思わず顔が赤らみ…。
「こんばんは。ロザリー。それじゃ馬車に乗ろうか?」
ルペルト様が手を差し出してきた。
「あ、ありがとうございます」
ルペルト様のエスコートで馬車に乗り込むと、すぐにイアソン王子が乗り込できた。
「出してくれ」
イアソン王子が御者に声をかけると、馬車はすぐに音を立てて走り出した。
「学園の直ぐ側に喫茶店があるんだ。そこで話をしよう」
イアソン王子が真っ先に口を開いた。
「はい、分かりました」
「ええ、いいですよ」
私とルペルト様が同時に返事をする。
「それにしてもロザリーは帰省しなかったんだね?帰らなくても良かったの?」
何も事情を知らないルペルト様が尋ねてきた。
「ええ…実家は…少々遠いので」
当たり障りのない返事で誤魔化す。
「まぁ、平民学生たちは皆帰省しただろうが…貴族学生たちは殆ど帰省していないな」
「そうなんですか?」
イアソン王子の言葉に驚いた。
「うん、今回の事件…貴族同士で起こったからね…中々皆思う所があって…帰りにくいのかも知れないね」
ルペルト様の言葉に、今回の事件がどれほどに貴族間の中で衝撃的な事件だったのか…改めて感じずにはいられなかった―。
寮母さんと一緒に食堂で夕食を頂いた後、誰もいない部屋で私は1人、図書室から借りてきた本を読んでいた。
カチコチカチコチ…
とても静かな夜だった。
時計の針だけがこの静寂の中に響いている。
その時―。
コンコン
突然窓を何かが叩く音が聞こえてきた。
「まさか…イアソン王子っ?!」
私の勘では何となくイアソン王子が訪ねてくるような気がしていた。
急いで窓の側に駆け寄った。
カーテンを開けるとやはりそこに立っていたのは防寒コートに身を包んだイアソン王子だった。
「イアソン王子、お待ちしておりました」
私は窓の扉を開けた。
「え…?そうか、俺のことをお前は待っていてくれたのか?」
何故かイアソン王子は嬉しそうにしている。
「はい、それで…いらして頂いたのはレナート様の件ですよね?」
「ああ、そうだ。それで…門限の9時まではまだ時間がある。外は寒いから何処か店に入って話をしないか?実は門の外に馬車を待たせてあって、ルペルトも一緒なんだ」
「え?ルペルト様も?」
ルペルト様の事を思うだけで、どうしても…頬がゆるんでしまう。
「ああ、そうだ。…嬉しいだろう?」
イアソン王子は妙に思わせぶりな口調だった。
「あ…そ、それは…」
そうだ、ルペルト様は婚約者がいる方なんだ。そんな人に横恋慕するなんて…私は最低だ。
「…冗談だ、気にするな。外で待っているから暖かい格好で出てきた方が良い」
「分かりました」
「それじゃ又後で」
イアソン王子はそれだけ言うと、すぐに去って行った。
「私も準備しなくちゃ」
私はフックに掛けて置い防寒コートに手を伸ばした―。
****
「すみません、お待たせ致しました」
コートを着て、ショルダーバッグを肩から下げた私はイアソン王子の元へ駆けつけた。
「よし、来たか。なら早速馬車に乗ろう」
「はい」
馬車の前には月明かりを背に、ルペルト様が立って待っていた。
まるで王子様のような出で立ちに思わず顔が赤らみ…。
「こんばんは。ロザリー。それじゃ馬車に乗ろうか?」
ルペルト様が手を差し出してきた。
「あ、ありがとうございます」
ルペルト様のエスコートで馬車に乗り込むと、すぐにイアソン王子が乗り込できた。
「出してくれ」
イアソン王子が御者に声をかけると、馬車はすぐに音を立てて走り出した。
「学園の直ぐ側に喫茶店があるんだ。そこで話をしよう」
イアソン王子が真っ先に口を開いた。
「はい、分かりました」
「ええ、いいですよ」
私とルペルト様が同時に返事をする。
「それにしてもロザリーは帰省しなかったんだね?帰らなくても良かったの?」
何も事情を知らないルペルト様が尋ねてきた。
「ええ…実家は…少々遠いので」
当たり障りのない返事で誤魔化す。
「まぁ、平民学生たちは皆帰省しただろうが…貴族学生たちは殆ど帰省していないな」
「そうなんですか?」
イアソン王子の言葉に驚いた。
「うん、今回の事件…貴族同士で起こったからね…中々皆思う所があって…帰りにくいのかも知れないね」
ルペルト様の言葉に、今回の事件がどれほどに貴族間の中で衝撃的な事件だったのか…改めて感じずにはいられなかった―。
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