195 / 221
10-22 病室の私達
しおりを挟む
レナート様が運ばれたのは救急医療室の隣にある特別個室だった。
広い部屋に大きなベッド。
応接室にシャワールームまで完備していた。
レナート様は麻酔で眠らされた状態で看護婦さん達にベッドの上に寝かされた。
一方、意識を失っているフランシスカ様はルペルト様が抱き上げてソファに寝かせあげた。
「患者さんは今は麻酔で眠っていますが、後2時間ほどで麻酔が切れます。その時は痛みで苦しむと思います。その際はまた処置しますので、2時間以内にはお帰り下さい」
私とルペルト様に担当看護婦さんが声を掛けてきた。
「はい、分かりました」
「ありがとうございます」
私とルペルト様は交互に挨拶をすると、看護婦さんは部屋を出ていった。
パタン…
扉が閉じられると、ベッドの上に青ざめた顔で横たわるレナート様にそっと近寄った。
「レナート様…」
左目を包帯でぐるぐる巻にされたレナート様はピクリとも動かずに眠っている。
「レナート様は…相手が刃物をを持っていても…フランシスカ様を助ける為に1人で助けようとしたのですね。…それ程フランシスカ様のことを…大切に思っていたということですね…?」
私は眠っているレナート様に語りかけた。
「ロザリー…」
私のつぶやきが聞こえたのか、背後からルペルト様が声を掛けてきたその時―。
ガチャッ!
扉が開けられ、息を切らせたイアソン王子が病室に入ってきた。
「イアソン王子」
「王子」
私とルペルト様は同時に声を上げた。
「レナートの家に電報を打ってきた。それでレナートの様子は?」
「麻酔で後2時間は目が覚めないそうですが、もし覚めた場合は痛み止めの処置をするそうなので、2時間以内には帰るように言われました」
ルペルト様が答えた。
「そうか…。ところでフランシスカの様子はどうだ?」
「フランシスカ様はまだ気を失ったままです…」
私は項垂れた。
「そうか…余程レナートのことがショックだったんだな…」
イアソン王子はレナート様のベッドに近づくと、顔を覗き込んだ。
「…ところでこれからどうしますか?」
ルペルト様がイアソン王子に声を掛けた。
「…俺たちは身内でも何でもないからな…長居をするわけにはいかないだろう。…帰るしかないな…」
イアソン王子は腕組みをした。
「フランシスカ様はどうしますか?まだ意識が戻りませんけど…?」
私はフランシスカ様のことが気がかりだった。
「…フランシスカはレナートの婚約者だからな。…このまま病室に置いておいても大丈夫だろう」
フランシスカ様はレナート様の婚約者…。
「確かに…そうですよね」
フランシスカ様の気持ちはどうあれ、まだ2人は婚約中なのだから。
「よし、それじゃ…俺たちは帰ろう」
「「はい」」
イアソン王子の言葉に私とルペルト様は返事をした―。
広い部屋に大きなベッド。
応接室にシャワールームまで完備していた。
レナート様は麻酔で眠らされた状態で看護婦さん達にベッドの上に寝かされた。
一方、意識を失っているフランシスカ様はルペルト様が抱き上げてソファに寝かせあげた。
「患者さんは今は麻酔で眠っていますが、後2時間ほどで麻酔が切れます。その時は痛みで苦しむと思います。その際はまた処置しますので、2時間以内にはお帰り下さい」
私とルペルト様に担当看護婦さんが声を掛けてきた。
「はい、分かりました」
「ありがとうございます」
私とルペルト様は交互に挨拶をすると、看護婦さんは部屋を出ていった。
パタン…
扉が閉じられると、ベッドの上に青ざめた顔で横たわるレナート様にそっと近寄った。
「レナート様…」
左目を包帯でぐるぐる巻にされたレナート様はピクリとも動かずに眠っている。
「レナート様は…相手が刃物をを持っていても…フランシスカ様を助ける為に1人で助けようとしたのですね。…それ程フランシスカ様のことを…大切に思っていたということですね…?」
私は眠っているレナート様に語りかけた。
「ロザリー…」
私のつぶやきが聞こえたのか、背後からルペルト様が声を掛けてきたその時―。
ガチャッ!
扉が開けられ、息を切らせたイアソン王子が病室に入ってきた。
「イアソン王子」
「王子」
私とルペルト様は同時に声を上げた。
「レナートの家に電報を打ってきた。それでレナートの様子は?」
「麻酔で後2時間は目が覚めないそうですが、もし覚めた場合は痛み止めの処置をするそうなので、2時間以内には帰るように言われました」
ルペルト様が答えた。
「そうか…。ところでフランシスカの様子はどうだ?」
「フランシスカ様はまだ気を失ったままです…」
私は項垂れた。
「そうか…余程レナートのことがショックだったんだな…」
イアソン王子はレナート様のベッドに近づくと、顔を覗き込んだ。
「…ところでこれからどうしますか?」
ルペルト様がイアソン王子に声を掛けた。
「…俺たちは身内でも何でもないからな…長居をするわけにはいかないだろう。…帰るしかないな…」
イアソン王子は腕組みをした。
「フランシスカ様はどうしますか?まだ意識が戻りませんけど…?」
私はフランシスカ様のことが気がかりだった。
「…フランシスカはレナートの婚約者だからな。…このまま病室に置いておいても大丈夫だろう」
フランシスカ様はレナート様の婚約者…。
「確かに…そうですよね」
フランシスカ様の気持ちはどうあれ、まだ2人は婚約中なのだから。
「よし、それじゃ…俺たちは帰ろう」
「「はい」」
イアソン王子の言葉に私とルペルト様は返事をした―。
0
お気に入りに追加
413
あなたにおすすめの小説
七年間の婚約は今日で終わりを迎えます
hana
恋愛
公爵令嬢エミリアが十歳の時、第三王子であるロイとの婚約が決まった。しかし婚約者としての生活に、エミリアは不満を覚える毎日を過ごしていた。そんな折、エミリアは夜会にて王子から婚約破棄を宣言される。
今日は私の結婚式
豆狸
恋愛
ベッドの上には、幼いころからの婚約者だったレーナと同じ色の髪をした女性の腐り爛れた死体があった。
彼女が着ているドレスも、二日前僕とレーナの父が結婚を拒むレーナを屋根裏部屋へ放り込んだときに着ていたものと同じである。
今さら、私に構わないでください
ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。
彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。
愛し合う二人の前では私は悪役。
幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。
しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……?
タイトル変更しました。
【完結】嗤われた王女は婚約破棄を言い渡す
干野ワニ
恋愛
「ニクラス・アールベック侯爵令息。貴方との婚約は、本日をもって破棄します」
応接室で婚約者と向かい合いながら、わたくしは、そう静かに告げました。
もう無理をしてまで、愛を囁いてくれる必要などないのです。
わたくしは、貴方の本音を知ってしまったのですから――。
「婚約を破棄したい」と私に何度も言うのなら、皆にも知ってもらいましょう
天宮有
恋愛
「お前との婚約を破棄したい」それが伯爵令嬢ルナの婚約者モグルド王子の口癖だ。
侯爵令嬢ヒリスが好きなモグルドは、ルナを蔑み暴言を吐いていた。
その暴言によって、モグルドはルナとの婚約を破棄することとなる。
ヒリスを新しい婚約者にした後にモグルドはルナの力を知るも、全てが遅かった。
裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……
希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。
幼馴染に婚約者を奪われたのだ。
レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。
「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」
「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」
誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。
けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。
レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。
心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。
強く気高く冷酷に。
裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。
☆完結しました。ありがとうございました!☆
(ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在))
(ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9))
(ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在))
(ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる