181 / 221
10-8 断れない立場
しおりを挟む
「それじゃ、明日9時に貴女の住む寮に行くから出口で待っていてね?」
フランシスカ様は笑みを浮かべている。
「はい…分かりました…」
本当は、「嫌です。お断りします」と言いたかった。けれども私とフランシスカ様では身分が違う。
同じ学生ではあるけれど、私とフランシスカ様とでは身分が違う。彼女は侯爵令嬢であり、私はただの平民なのだから。
断れるはずなど無かった。
「よし、話は成立したな。それじゃ…レナートも帰ったことだし…。フランシスカ、お茶でも飲みに行こうか?」
イアソン王子がフランシスカ様に声を掛ける。
「はい、いいですね。あ、そうだわ。ロザリー、貴女もどう?私達と一緒にお茶を飲みに行かない?」
フランシスカ様が私を見た。
「いいえ、せっかくのお誘いですが…私はまだここで写生をしていきたいので遠慮させて頂きます。申し訳ございません」
頭を下げて謝罪した。
「あら?そうなの?なら仕方ないわね…」
フランシス様が残念そうにため息を付いた。
「まぁ、ロザリーがああ言ってるのだから仕方ないだろう?それでは行こうか?」
「ええ、イアソン王子。ロザリー。それでは又明日ね」
「はい、フランシスカ様」
そして2人は仲よさ気に歩き去っていった―。
「ふぅ…」
1人になるとため息をついた。良かった…。やっと1人になることが出来た。
3人で一緒にお茶を飲むなんて…考えただけで胃に穴が開きそうだ。
「それにしても困ったわ…」
ベンチに座ると、思わず頭を抱えてしまった。
イアソン王子の提案で、私は明日フランシスカ様をレナート様から守る?為に一緒に過すことにされてしまったけれども、はっきり言ってそんなことをしても無意味だろう。
レナート様が私を気にして、フランシスカ様に接近するのをやめるとは到底思えない。
逆に私の存在が邪魔だと言われて追い払われてしまう気がする。
考えるだけで胃が痛くなってしまう。
「でもフランシスカ様だって明日になれば私がどれだけ無力な存在か分かるはず…。そうすればきっともう二度と無理なことは言ってこないわよね…」
そうだ、明日になればフランシスカ様もレナート様もきっと理解してくれるだろう。
頼む人選を間違えたということに。
「もう悩んでいても仕方ないわよね…」
ため息をつくと、ベンチから立ち上がった。もう今の私はとてもではないが、写生を楽しめる気分にはなれなかったからだ。
「今夜と明日の朝の食事を買って…寮に戻りましょう」
そして私は重い足取りで公園を後にした。
明日が来なければいいのに…と願いながら―。
フランシスカ様は笑みを浮かべている。
「はい…分かりました…」
本当は、「嫌です。お断りします」と言いたかった。けれども私とフランシスカ様では身分が違う。
同じ学生ではあるけれど、私とフランシスカ様とでは身分が違う。彼女は侯爵令嬢であり、私はただの平民なのだから。
断れるはずなど無かった。
「よし、話は成立したな。それじゃ…レナートも帰ったことだし…。フランシスカ、お茶でも飲みに行こうか?」
イアソン王子がフランシスカ様に声を掛ける。
「はい、いいですね。あ、そうだわ。ロザリー、貴女もどう?私達と一緒にお茶を飲みに行かない?」
フランシスカ様が私を見た。
「いいえ、せっかくのお誘いですが…私はまだここで写生をしていきたいので遠慮させて頂きます。申し訳ございません」
頭を下げて謝罪した。
「あら?そうなの?なら仕方ないわね…」
フランシス様が残念そうにため息を付いた。
「まぁ、ロザリーがああ言ってるのだから仕方ないだろう?それでは行こうか?」
「ええ、イアソン王子。ロザリー。それでは又明日ね」
「はい、フランシスカ様」
そして2人は仲よさ気に歩き去っていった―。
「ふぅ…」
1人になるとため息をついた。良かった…。やっと1人になることが出来た。
3人で一緒にお茶を飲むなんて…考えただけで胃に穴が開きそうだ。
「それにしても困ったわ…」
ベンチに座ると、思わず頭を抱えてしまった。
イアソン王子の提案で、私は明日フランシスカ様をレナート様から守る?為に一緒に過すことにされてしまったけれども、はっきり言ってそんなことをしても無意味だろう。
レナート様が私を気にして、フランシスカ様に接近するのをやめるとは到底思えない。
逆に私の存在が邪魔だと言われて追い払われてしまう気がする。
考えるだけで胃が痛くなってしまう。
「でもフランシスカ様だって明日になれば私がどれだけ無力な存在か分かるはず…。そうすればきっともう二度と無理なことは言ってこないわよね…」
そうだ、明日になればフランシスカ様もレナート様もきっと理解してくれるだろう。
頼む人選を間違えたということに。
「もう悩んでいても仕方ないわよね…」
ため息をつくと、ベンチから立ち上がった。もう今の私はとてもではないが、写生を楽しめる気分にはなれなかったからだ。
「今夜と明日の朝の食事を買って…寮に戻りましょう」
そして私は重い足取りで公園を後にした。
明日が来なければいいのに…と願いながら―。
1
お気に入りに追加
415
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
うたた寝している間に運命が変わりました。
gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。
婚約解消は君の方から
みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。
しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。
私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、
嫌がらせをやめるよう呼び出したのに……
どうしてこうなったんだろう?
2020.2.17より、カレンの話を始めました。
小説家になろうさんにも掲載しています。
山猿の皇妃
夏菜しの
恋愛
ライヘンベルガー王国の第三王女レティーツィアは、成人する十六歳の誕生日と共に、隣国イスターツ帝国へ和平条約の品として贈られた。
祖国に聞こえてくるイスターツ帝国の噂は、〝山猿〟と言った悪いモノばかり。それでもレティーツィアは自らに課せられた役目だからと山を越えて隣国へ向かった。
嫁いできたレティーツィアを見た皇帝にして夫のヘクトールは、子供に興味は無いと一蹴する。これはライヘンベルガー王国とイスターツ帝国の成人とみなす年の違いの問題だから、レティーツィアにはどうすることも出来ない。
子供だと言われてヘクトールに相手にされないレティーツィアは、妻の責務を果たしていないと言われて次第に冷遇されていく。
一方、レティーツィアには祖国から、将来的に帝国を傀儡とする策が授けられていた。そのためには皇帝ヘクトールの子を産む必要があるのだが……
それが出来たらこんな待遇になってないわ! と彼女は憤慨する。
帝国で居場所をなくし、祖国にも帰ることも出来ない。
行き場を失ったレティーツィアの孤独な戦いが静かに始まる。
※恋愛成分は低め、内容はややダークです
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
公爵子息に気に入られて貴族令嬢になったけど姑の嫌がらせで婚約破棄されました。傷心の私を癒してくれるのは幼馴染だけです
エルトリア
恋愛
「アルフレッド・リヒテンブルグと、リーリエ・バンクシーとの婚約は、只今をもって破棄致します」
塗装看板屋バンクシー・ペイントサービスを営むリーリエは、人命救助をきっかけに出会った公爵子息アルフレッドから求婚される。
平民と貴族という身分差に戸惑いながらも、アルフレッドに惹かれていくリーリエ。
だが、それを快く思わない公爵夫人は、リーリエに対して冷酷な態度を取る。さらには、許嫁を名乗る娘が現れて――。
お披露目を兼ねた舞踏会で、婚約破棄を言い渡されたリーリエが、失意から再び立ち上がる物語。
著者:藤本透
原案:エルトリア
ヒロインに騙されて婚約者を手放しました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
地味で冴えない脇役はヒーローに恋しちゃだめですか?
どこにでもいるような地味で冴えない私の唯一の長所は明るい性格。一方許嫁は学園一人気のある、ちょっぴり無口な彼でした。そんなある日、彼が学園一人気のあるヒロインに告白している姿を偶然目にしてしまい、捨てられるのが惨めだった私は先に彼に婚約破棄を申し出て、彼の前から去ることを決意しました。だけど、それはヒロインによる策略で・・・?明るさだけが取り柄の私と無口で不器用な彼との恋の行方はどうなるの?
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる