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9-18 声を掛けてきた人は
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朝食後、私は小切手を持ってホテルの前から辻馬車を拾った。目的は貴族令嬢達が利用するブティックへ行き、洋服を買う為だった。
「一体どれくらいお金がかかるかしら…」
小切手を持っているのだからお金の心配をする必要は無かったが、それでもこの小切手の出どころはユーグ様。
正直に言うと…使いたくは無かった。もし使え本当にユーグ様に負けを認めてしまうような気がしたからだ。
「駄目ね…自分をしっかり持たないと…」
馬車に窓から外を眺めながら、私はため息をついた―。
****
私は貴族ご用達のブティックに来ていた。
「このお洋服などはいかがですか?最近流行に敏感なお嬢様たちの間では人気のデザインなのですよ?」
女性店員さんが鏡に映る私に尋ねてくる。
「ええ。そうですね。とても素敵な服だと思います」
ダークグリーンのサテン地の足首まで長さのあるロングワンピースドレス。襟元とわ裾部分には白いサテン地がふんだんに使用されている。ボリュームのあるスカート部分はレースが縫い付けられ、お姫様のドレスのようだった。
これならイアソン王子の食事会に招かれても大丈夫かもしれない…。
「では、これを頂けますか?」
貴族の服のことについて、全く知らない私は店員さんの進めるままに買うことに決めた。
その後、靴とついでにバッグも選んでもらい、店を出た頃にはすでに時計は午後2時を回っていた。
「…大変。もうこんな時間だわ。急いで帰らないと」
私は商品が入った大きな紙バッグを抱えると、辻馬車乗り場を目指して歩き出した。
「ふぅ…重いわ…」
紙バッグの中にはワンピースと靴にカバンが入っている。これだけ入っていれば相当な重さになる。
これが私と貴族令嬢たちの差なのかもしれない。普通の令嬢達ならお付きの人達がついていて、その人たちが荷物を代わりに持ってくれるのだろう。けれど私にはそのような人たちはいない。そこが平民の私と一般的な令嬢達との差であろう。
その証拠に町を歩く身なりの良い人たちは1人で大きな荷物を抱えて街中を歩く私を興味深げに見つめている。
「…こんなことなら辻馬車にお店の前で待っていてもらえば良かったわ…」
けれど後悔してももう遅い。私は重い荷物を抱えながらフラフラと辻馬車乗り場を目指して歩いていると…。
「あれ?ひょっとして君は…ロザリー?」
何処かで聞き覚えのある声がすぐそばで聞こえた。
「え…?」
慌てて顔を上げて驚いた。
「やっぱり…ロザリーだね?大きな荷物を抱えて歩く人がいるから誰かと思って見ていれば…どこかで見覚えがある人だなって思ったんだよ」
相手は笑みを浮かべて私を見る。
「あ…貴方は…!」
その人は…私がもう一度会いたいと思っていたルペルト様だった―。
「一体どれくらいお金がかかるかしら…」
小切手を持っているのだからお金の心配をする必要は無かったが、それでもこの小切手の出どころはユーグ様。
正直に言うと…使いたくは無かった。もし使え本当にユーグ様に負けを認めてしまうような気がしたからだ。
「駄目ね…自分をしっかり持たないと…」
馬車に窓から外を眺めながら、私はため息をついた―。
****
私は貴族ご用達のブティックに来ていた。
「このお洋服などはいかがですか?最近流行に敏感なお嬢様たちの間では人気のデザインなのですよ?」
女性店員さんが鏡に映る私に尋ねてくる。
「ええ。そうですね。とても素敵な服だと思います」
ダークグリーンのサテン地の足首まで長さのあるロングワンピースドレス。襟元とわ裾部分には白いサテン地がふんだんに使用されている。ボリュームのあるスカート部分はレースが縫い付けられ、お姫様のドレスのようだった。
これならイアソン王子の食事会に招かれても大丈夫かもしれない…。
「では、これを頂けますか?」
貴族の服のことについて、全く知らない私は店員さんの進めるままに買うことに決めた。
その後、靴とついでにバッグも選んでもらい、店を出た頃にはすでに時計は午後2時を回っていた。
「…大変。もうこんな時間だわ。急いで帰らないと」
私は商品が入った大きな紙バッグを抱えると、辻馬車乗り場を目指して歩き出した。
「ふぅ…重いわ…」
紙バッグの中にはワンピースと靴にカバンが入っている。これだけ入っていれば相当な重さになる。
これが私と貴族令嬢たちの差なのかもしれない。普通の令嬢達ならお付きの人達がついていて、その人たちが荷物を代わりに持ってくれるのだろう。けれど私にはそのような人たちはいない。そこが平民の私と一般的な令嬢達との差であろう。
その証拠に町を歩く身なりの良い人たちは1人で大きな荷物を抱えて街中を歩く私を興味深げに見つめている。
「…こんなことなら辻馬車にお店の前で待っていてもらえば良かったわ…」
けれど後悔してももう遅い。私は重い荷物を抱えながらフラフラと辻馬車乗り場を目指して歩いていると…。
「あれ?ひょっとして君は…ロザリー?」
何処かで聞き覚えのある声がすぐそばで聞こえた。
「え…?」
慌てて顔を上げて驚いた。
「やっぱり…ロザリーだね?大きな荷物を抱えて歩く人がいるから誰かと思って見ていれば…どこかで見覚えがある人だなって思ったんだよ」
相手は笑みを浮かべて私を見る。
「あ…貴方は…!」
その人は…私がもう一度会いたいと思っていたルペルト様だった―。
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