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9−6 初めてのスケッチ
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午後4時―
イアソン王子とのクリスマスパーティーの打ち合わせが終わり、ようやく私は解放された。
パタン…。
部屋に戻り、扉を閉めるとため息をついた。
「ふぅ…疲れたわ…」
やはりイアソン王子と連日毎日顔を合わせていると精神的に疲れてしまう。何しろこの国の王太子様なのだから気を遣わずにはいられない。
「私を貴賓客として扱ってくれるのは恐縮だわ。…できれば放っておいてもらいたいくらいなのに…」
万一、私が毎日イアソン王子と会っているという事実をレナート様とフランシスカ様に知られてしまっては大変だ。冬期休暇が終わる前には、イアソン王子にお願いして私がこの国にずっと滞在していたことと、お世話になったことは絶対に誰にも公表しないようにお願いしておかなければ…。
そして私は港で出会った少年の事を思い出し、ショルダーバッグからもらった風景画を取り出し、じっくり眺めた。
「フフフ…本当に素敵な絵…そうだわ、明日はこの絵のサイズに合う額縁を買いに行きましょう。折角の美しい絵なのだから」
寮に戻ったら、この絵は机の上に飾っておこう…。
そして思った。
もう一度だけ、彼に会えないだろうかと…。もし会えたら絵の描き方を教えてもらいたい―と…。
****
翌日、ルームサービスでいつものように朝食を食べた私は昨日購入した画材道具を少し大きめのトーバッグに入れた。
今日は私も風景画の練習をしてみようかと思ったからだ。行先はもちろん決めていた。
昨日と同じイーストビーチ近くにある港に行く予定だ。あの少年と会うことは多分無いだろうけれども、彼が絵を描く様子は見ていたから真似して描いてみれば絵心の無い私でも、多少はそれなりに絵を仕上げることが出来るのではないだろうかと思ったからだ。
「さて、それじゃ行きましょう」
昨日よりは温かい服装に着替えると、私は部屋を後にした―。
****
昨日と同様、辻馬車を拾って港へ向かった。
「フフ…今日も良いお天気ね」
港にやってくると、海の匂いを思い切り胸に吸い込み…昨日と同じ場所に向かった。
「やっぱり来ていないわね…」
あえて昨日と同じ時間を狙って港に来ては見たの、やはりそこにはあの時の彼の姿はは無かった。
「まぁ…初めから会えるなんて期待していなかったものね…」
そして私はベンチに座ると早速スケッチブックと色鉛筆をトートバッグから取り出すと、新しいページ開いて、昨日の見よう見まねで絵を描き始めた。
シャッシャッ
真っ白い紙に海の色や空の色を重ねて塗っていく。…それはとても楽しい作業だった。気付けば私は一心不乱に絵を描き続け…気づけば太陽は頭の真上まで登っていた。
「…あ!いけない…!」
ふと、私は我に返った。
気付けばスケッチブックを半分も使い切っていしまっていたのだ。
「いやだ、私ったら…大切に使おうと思っていたのに、半分近くページを使ってしまったなんて…」
もう、今日はここまでにして、帰ろう。…昨日の彼に会うことも出来なかったし。
私はスケッチブックをしまうと、港を後にした。
少年に会えなかったことを残念に思いながら。
けれど、私と彼はその後思いもしない形で再会することになる―。
イアソン王子とのクリスマスパーティーの打ち合わせが終わり、ようやく私は解放された。
パタン…。
部屋に戻り、扉を閉めるとため息をついた。
「ふぅ…疲れたわ…」
やはりイアソン王子と連日毎日顔を合わせていると精神的に疲れてしまう。何しろこの国の王太子様なのだから気を遣わずにはいられない。
「私を貴賓客として扱ってくれるのは恐縮だわ。…できれば放っておいてもらいたいくらいなのに…」
万一、私が毎日イアソン王子と会っているという事実をレナート様とフランシスカ様に知られてしまっては大変だ。冬期休暇が終わる前には、イアソン王子にお願いして私がこの国にずっと滞在していたことと、お世話になったことは絶対に誰にも公表しないようにお願いしておかなければ…。
そして私は港で出会った少年の事を思い出し、ショルダーバッグからもらった風景画を取り出し、じっくり眺めた。
「フフフ…本当に素敵な絵…そうだわ、明日はこの絵のサイズに合う額縁を買いに行きましょう。折角の美しい絵なのだから」
寮に戻ったら、この絵は机の上に飾っておこう…。
そして思った。
もう一度だけ、彼に会えないだろうかと…。もし会えたら絵の描き方を教えてもらいたい―と…。
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翌日、ルームサービスでいつものように朝食を食べた私は昨日購入した画材道具を少し大きめのトーバッグに入れた。
今日は私も風景画の練習をしてみようかと思ったからだ。行先はもちろん決めていた。
昨日と同じイーストビーチ近くにある港に行く予定だ。あの少年と会うことは多分無いだろうけれども、彼が絵を描く様子は見ていたから真似して描いてみれば絵心の無い私でも、多少はそれなりに絵を仕上げることが出来るのではないだろうかと思ったからだ。
「さて、それじゃ行きましょう」
昨日よりは温かい服装に着替えると、私は部屋を後にした―。
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昨日と同様、辻馬車を拾って港へ向かった。
「フフ…今日も良いお天気ね」
港にやってくると、海の匂いを思い切り胸に吸い込み…昨日と同じ場所に向かった。
「やっぱり来ていないわね…」
あえて昨日と同じ時間を狙って港に来ては見たの、やはりそこにはあの時の彼の姿はは無かった。
「まぁ…初めから会えるなんて期待していなかったものね…」
そして私はベンチに座ると早速スケッチブックと色鉛筆をトートバッグから取り出すと、新しいページ開いて、昨日の見よう見まねで絵を描き始めた。
シャッシャッ
真っ白い紙に海の色や空の色を重ねて塗っていく。…それはとても楽しい作業だった。気付けば私は一心不乱に絵を描き続け…気づけば太陽は頭の真上まで登っていた。
「…あ!いけない…!」
ふと、私は我に返った。
気付けばスケッチブックを半分も使い切っていしまっていたのだ。
「いやだ、私ったら…大切に使おうと思っていたのに、半分近くページを使ってしまったなんて…」
もう、今日はここまでにして、帰ろう。…昨日の彼に会うことも出来なかったし。
私はスケッチブックをしまうと、港を後にした。
少年に会えなかったことを残念に思いながら。
けれど、私と彼はその後思いもしない形で再会することになる―。
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