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8-20 イアソン王子の本性

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 ようやくイアソン王子から解放され、1人になれた。

階段を上り、自室に辿り着いたところで私は安堵のため息をついた。

「ふぅ…」

室内にはイアソン王子が買ってくれた服がベッドの上に山積みに乗せられている。

「まずは…衣類の整理をしなくちゃ…」

そして早速衣類をハンガーに通してクローゼットの中に吊るして改めて購入した服を眺めた。

「庶民の為の洋品店で購入したのに…私が今まで持っていた服に比べると、ずっと立派だわ…」

イアソン王子がここまで私に良くしてくれるのは、学園卒業後にはユーグ様に嫁ぐからだろう。大公妃という立場になる私に恩を売っておけば、何かと有益だからとイアソン王子は何度も私に言ってきたからだ。

「イアソン王子は…本当に計算高い方なのね…」

そしてそんなイアソン王子の事をフランシスカ様は好いていらっしゃる。レナート様という婚約者がいらっしゃるのに。

「今頃…フランシスカ様とレナート様はどうされているのかしら…?」

2人で一緒に休暇を過ごされているのだろうか?
入学当時の私だったら2人の事をあれこれ考え、1人で勝手に心を傷つけていたかもしれない。何故ならレナート様は私の初恋の相手だったから。

けれども私の恋心は砕け散ってしまった。
フランシスカ様が好きなイアソン王子と私が親しくしているという誤解によって、私はレナート様から責められ、心を深く傷つけられてしまった。
だから今はもう…レナート様の事はとっくに諦めたし、関わりを絶とうと考えている。尤もフランシスカ様と良好な関係を築いてもらいたいと願っている気持ちは今も変わらない。

だってレナート様は本当にフランシスカ様の事を本当に一途に思っているから。
フランシスカ様はイアソン王子に思いを寄せられているけれども、ここ数日イアソン王子と行動を共にするようになり…思った。

イアソン王子は得体が知れない方だと思った。一見、人当たりがよさそうに見えるけれども、本質はそうではない。イアソン王子は相手の都合等は一切考えず、自分の損得で動くような方だという事が。

だから私もイアソン王子とは距離を開けたいし、フランシスカ様に忠告したい。

『悪いことは言いません。イアソン王子に深く関わればきっと心を傷付けられるので、離れた方が良いですよ』

と―。

尤も私がそのような事を言える立場ではないし、そのような事をフランシスカ様に告げようものなら、きっとまたレナート様から不評を買ってますます嫌われてしまうだろう。

「冬期休み中に、フランシスカ様とレナート様の関係が改善されればいいのに…」

ポツリと呟き、大きな窓に近づくとホテルから遠くに見える美しい海を眺めた。

そろそろ時刻は夕方になるのだろうか?太陽がオレンジ色に染まりかけている。

「明日…お城からメイド服が届いたら、気分転換に海に行ってみようかしら…」

大きな海を見れば、自分の心も少し晴れるかもしれない。


そして私は、そこである出会いをする事になる―。







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