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8-17 始めて口にする味
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ホテルの1Fにある喫茶店に私とイアソン王子は来ていた。2人でボックス席に向かい合わせに座り、一つ離れた席にはイアソン王子の護衛の人達が座っている。
「ほら、ロザリーはお昼ごはんを食べていないんだから何か食べたほうがいい。このホテルはパンケーキが美味しいと人気があるんだ。女の子ならそういうメニューがいいんじゃないのかい?」
そう言ってイアソン王子は私にメニュー表を差し出してきた。
「パンケーキですか…」
メニューを見て私は驚いた。一口にパンケーキと言っても、そこには10種類くらいのメニューが書かれており、値段も一つ1000ダルク以上するものばかりだった。
「あの…イアソン王子…」
すると王子は腕組みしながら言った。
「どうせ又、高すぎるとか言うんだろう?だからお金のことは気にしなくていいと言っているじゃないか?本来であれば、あんな庶民が着る服を買うつもりも無かったし、今度のパーティー用にドレスを作るつもりだったのに…その話もロザリーがメイド姿で参加するなんて言い出したから、ドレスを作る必要も無くなったしね」
「分かりました…ではメニューの一番上にあるパンケーキセットにします」
値段も一番安く、1200ダルクとなっていた。
「ふ~ん、分かったよ。それじゃ俺は紅茶とケーキのセットにしよう」
そしてイアソン王子が手を上げると、すぐにウェイターがやってきた。
「紅茶とケーキセット、それにパンケーキセットを頼む」
「はい、かしこまりました」
ウェイターは恭しく頭を下げると去っていく。そこで私は尋ねた。
「あの、イアソン王子。今年のクリスマスパーティーはどなたを誘われるか決めたのですか?」
「何だ?引き受ける気になったのか?」
身を乗り出してくるイアソン王子。
「いえ、そうではなく…責任を感じているので…」
「ふん、何だ。それで尋ねているだけか?」
「…はい、申し訳ございません…」
「まぁ別に良いけど。端から期待していたわけじゃないから。パートナーか…まぁ何とかなるだろう?俺とパートナーになりたがる令嬢は大勢いるのだから」
「確かにそうかも知れませんね…。それで…」
そこまで話した時…。
「お待たせ致しました」
ウェイターが私とイアソン王子の前に注文の品を運んできた。そしてイアソン王子の前には紅茶とチョコレートケーキ、私の前には大きなお皿には3枚のパンケーキが重ねられ、上に生クリームと刻んだいちごが乗った料理が運ばれて来た。
そのあまりの美しさに思わず目が見開く。
「ごゆっくりどうぞ」
一礼してウェイターが去っていくと、イアソン王子が言った。
「それじゃ、食べようか?」
「は、はい…」
けれど何だか食べるのがもったいない…。
「どうした?食べないのか?」
私の手が止まっているのを見て、イアソン王子が尋ねてきた。
「いえ、食べます。ただ…食べるのが勿体ない気がして…」
「冷めると味が落ちるぞ」
「え?ならすぐに食べます」
慌ててナイフとフォークでカットして口に入れると、私が今まで食べてきていたパンケーキとは全く味も食感も違っていた。まさか生地が口の中でとろけるとは思わなかった。
「美味しい…!」
こんなに美味しいパンケーキは生まれて始めてだった。気づけば、私は夢中になって食べ続け…完食した頃にはイアソン王子が呆れた顔で私をじっと見つめている姿がそこにあった。
「あ、お…お恥ずかしい限りです。あまりにも美味しくて、つい夢中になって…」
「いや、でもやっぱり大人っぽく見えてもロザリーも普通の女の子と変わらないんだな」
イアソン王子が笑ったその時―。
「イアソン王子っ!こちらにいらしたのですねっ!」
聞き覚えのある声が直ぐ側で聞こえた―。
「ほら、ロザリーはお昼ごはんを食べていないんだから何か食べたほうがいい。このホテルはパンケーキが美味しいと人気があるんだ。女の子ならそういうメニューがいいんじゃないのかい?」
そう言ってイアソン王子は私にメニュー表を差し出してきた。
「パンケーキですか…」
メニューを見て私は驚いた。一口にパンケーキと言っても、そこには10種類くらいのメニューが書かれており、値段も一つ1000ダルク以上するものばかりだった。
「あの…イアソン王子…」
すると王子は腕組みしながら言った。
「どうせ又、高すぎるとか言うんだろう?だからお金のことは気にしなくていいと言っているじゃないか?本来であれば、あんな庶民が着る服を買うつもりも無かったし、今度のパーティー用にドレスを作るつもりだったのに…その話もロザリーがメイド姿で参加するなんて言い出したから、ドレスを作る必要も無くなったしね」
「分かりました…ではメニューの一番上にあるパンケーキセットにします」
値段も一番安く、1200ダルクとなっていた。
「ふ~ん、分かったよ。それじゃ俺は紅茶とケーキのセットにしよう」
そしてイアソン王子が手を上げると、すぐにウェイターがやってきた。
「紅茶とケーキセット、それにパンケーキセットを頼む」
「はい、かしこまりました」
ウェイターは恭しく頭を下げると去っていく。そこで私は尋ねた。
「あの、イアソン王子。今年のクリスマスパーティーはどなたを誘われるか決めたのですか?」
「何だ?引き受ける気になったのか?」
身を乗り出してくるイアソン王子。
「いえ、そうではなく…責任を感じているので…」
「ふん、何だ。それで尋ねているだけか?」
「…はい、申し訳ございません…」
「まぁ別に良いけど。端から期待していたわけじゃないから。パートナーか…まぁ何とかなるだろう?俺とパートナーになりたがる令嬢は大勢いるのだから」
「確かにそうかも知れませんね…。それで…」
そこまで話した時…。
「お待たせ致しました」
ウェイターが私とイアソン王子の前に注文の品を運んできた。そしてイアソン王子の前には紅茶とチョコレートケーキ、私の前には大きなお皿には3枚のパンケーキが重ねられ、上に生クリームと刻んだいちごが乗った料理が運ばれて来た。
そのあまりの美しさに思わず目が見開く。
「ごゆっくりどうぞ」
一礼してウェイターが去っていくと、イアソン王子が言った。
「それじゃ、食べようか?」
「は、はい…」
けれど何だか食べるのがもったいない…。
「どうした?食べないのか?」
私の手が止まっているのを見て、イアソン王子が尋ねてきた。
「いえ、食べます。ただ…食べるのが勿体ない気がして…」
「冷めると味が落ちるぞ」
「え?ならすぐに食べます」
慌ててナイフとフォークでカットして口に入れると、私が今まで食べてきていたパンケーキとは全く味も食感も違っていた。まさか生地が口の中でとろけるとは思わなかった。
「美味しい…!」
こんなに美味しいパンケーキは生まれて始めてだった。気づけば、私は夢中になって食べ続け…完食した頃にはイアソン王子が呆れた顔で私をじっと見つめている姿がそこにあった。
「あ、お…お恥ずかしい限りです。あまりにも美味しくて、つい夢中になって…」
「いや、でもやっぱり大人っぽく見えてもロザリーも普通の女の子と変わらないんだな」
イアソン王子が笑ったその時―。
「イアソン王子っ!こちらにいらしたのですねっ!」
聞き覚えのある声が直ぐ側で聞こえた―。
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