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6-21 ダミアンからの手紙
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「ダミアン…」
汽車から『フロン』の駅が完全に見えなくなっても、私は暫くデッキから離れる事が出来なかった。
一体、何故ダミアンは駅に駆けつけて来たのだろう?ひょっとすると父がダミアンに私が今日、あの家を出る事を告げたのだろうか?それで慌てて駅に駆けつけて来たのかもしれない。
『フロン』はとても田舎の町。この町にやってくる唯一の路線の終着駅で1日に10本も満たない本数しか汽車は走っていない。だからこの時間に私が乗っていると見越してダミアンはやってきたのかもしれない。
『ダミアンは…お前の事を姉ではなく、1人の女性として愛しているんだよ…』
父の言葉が再び耳に蘇って来る。そして必死に汽車に追いすがろとしているダミアンの姿が目に焼き付いて離れない。
ダミアンのあの私を見る目…。あの目を私は知っている。
だって…私もかつてはレナート様をあの目で見つめていたから…。
だけどダミアンの気持を私は受け入れる事が出来ない。例え血が繋がっていなくたって、私にとっては可愛い弟でしかないから…。
「寒いわ…中に入りましょう…」
ずっとデッキの上に立っていたものだから、身体はすっかり冷え切っていた。かじかんだ手でトランクケースを持つと、デッキの扉を開けて客席へと戻った―。
ガタガタと汽車の揺れる音が客席に響き渡っている。緑色の4人掛けのボックス席に座っている客は私を含めても10人にも満たない。私は窓の外を眺めながらため息をついた。
そこへ貫通扉が開かれ、紺色の制服を着た車掌さんが現れた。
「切符を拝見致します」
言いながら次々と乗客たちの元を回って行く。私も切符を見せる為にバッグから切符を取り出した。
「ありがとうございます」
私の切符を確認した車掌さんは頭を下げると去って行った。
切符も見せたことだし、『セントラルシティ』までは5時間もかかる。汽車に乗った事で安心すると同時に眠くなってきた。少し…寝る事にしよう。
そして切符をしまう為に、バッグを開けた時…。
「あら?何かしら?これは…」
バッグの中に封筒が入っている。どうやらそれは手紙の様だった。
いつの間に手紙が…?
手に取り、何気なく表に返した私は驚きのあまり声を上げそうになった。
『姉さんへ』
封筒の表面に、そう書かれていた。
それは…ダミアンからの手紙だったのだ。
「う、嘘…。ダミアンからの手紙…?」
一体何が書かれているのだろう?
私は震える手で開封すると、手紙を取り出した。手紙は1枚のみで2つ折りになって入れられていた。
私はゴクリと息を飲むと、手紙を広げた。
『姉さんへ
突然こんな手紙を書いて、驚いたよね?
本当は手紙を書こうか書くまいかずっと悩んでいたけれど、やっぱり思い切って書くことにしたよ。
姉さんがこの家に帰って来れた時、本当に嬉しかった。もう二度とこの家には帰って来れないんじゃないかと思っていただけに、仕事から帰って姉さんが家にいるのを見た時は夢でも見ているんじゃないかと思ったよ。
何しろ僕はお金を貯めて姉さんのいる町へ行こうと考えていたんだから。
あのユーグという大公から姉さんを助ける為に。
姉さん、好きだ。
姉としてではなく、たった1人の女性として僕は姉さんを愛している。
もし、大公から逃げる覚悟があるなら…僕と一緒に暮らす意思があるなら、15日の11時の汽車に一緒に乗って2人で逃げよう。その日、駅で待っているから。
来てくれる事を願って待ってるよ。
ダミアン』
手紙はそこで終わっていた―。
汽車から『フロン』の駅が完全に見えなくなっても、私は暫くデッキから離れる事が出来なかった。
一体、何故ダミアンは駅に駆けつけて来たのだろう?ひょっとすると父がダミアンに私が今日、あの家を出る事を告げたのだろうか?それで慌てて駅に駆けつけて来たのかもしれない。
『フロン』はとても田舎の町。この町にやってくる唯一の路線の終着駅で1日に10本も満たない本数しか汽車は走っていない。だからこの時間に私が乗っていると見越してダミアンはやってきたのかもしれない。
『ダミアンは…お前の事を姉ではなく、1人の女性として愛しているんだよ…』
父の言葉が再び耳に蘇って来る。そして必死に汽車に追いすがろとしているダミアンの姿が目に焼き付いて離れない。
ダミアンのあの私を見る目…。あの目を私は知っている。
だって…私もかつてはレナート様をあの目で見つめていたから…。
だけどダミアンの気持を私は受け入れる事が出来ない。例え血が繋がっていなくたって、私にとっては可愛い弟でしかないから…。
「寒いわ…中に入りましょう…」
ずっとデッキの上に立っていたものだから、身体はすっかり冷え切っていた。かじかんだ手でトランクケースを持つと、デッキの扉を開けて客席へと戻った―。
ガタガタと汽車の揺れる音が客席に響き渡っている。緑色の4人掛けのボックス席に座っている客は私を含めても10人にも満たない。私は窓の外を眺めながらため息をついた。
そこへ貫通扉が開かれ、紺色の制服を着た車掌さんが現れた。
「切符を拝見致します」
言いながら次々と乗客たちの元を回って行く。私も切符を見せる為にバッグから切符を取り出した。
「ありがとうございます」
私の切符を確認した車掌さんは頭を下げると去って行った。
切符も見せたことだし、『セントラルシティ』までは5時間もかかる。汽車に乗った事で安心すると同時に眠くなってきた。少し…寝る事にしよう。
そして切符をしまう為に、バッグを開けた時…。
「あら?何かしら?これは…」
バッグの中に封筒が入っている。どうやらそれは手紙の様だった。
いつの間に手紙が…?
手に取り、何気なく表に返した私は驚きのあまり声を上げそうになった。
『姉さんへ』
封筒の表面に、そう書かれていた。
それは…ダミアンからの手紙だったのだ。
「う、嘘…。ダミアンからの手紙…?」
一体何が書かれているのだろう?
私は震える手で開封すると、手紙を取り出した。手紙は1枚のみで2つ折りになって入れられていた。
私はゴクリと息を飲むと、手紙を広げた。
『姉さんへ
突然こんな手紙を書いて、驚いたよね?
本当は手紙を書こうか書くまいかずっと悩んでいたけれど、やっぱり思い切って書くことにしたよ。
姉さんがこの家に帰って来れた時、本当に嬉しかった。もう二度とこの家には帰って来れないんじゃないかと思っていただけに、仕事から帰って姉さんが家にいるのを見た時は夢でも見ているんじゃないかと思ったよ。
何しろ僕はお金を貯めて姉さんのいる町へ行こうと考えていたんだから。
あのユーグという大公から姉さんを助ける為に。
姉さん、好きだ。
姉としてではなく、たった1人の女性として僕は姉さんを愛している。
もし、大公から逃げる覚悟があるなら…僕と一緒に暮らす意思があるなら、15日の11時の汽車に一緒に乗って2人で逃げよう。その日、駅で待っているから。
来てくれる事を願って待ってるよ。
ダミアン』
手紙はそこで終わっていた―。
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