81 / 221
5-10 何でもお見通し
しおりを挟む
「え?いきなり何を突然そのような事を…」
レナート様の言葉にユーグ様は眉を険しくした。
「私はね、ロザリーの事は何でも分かるのだよ?彼女は君を見た途端、顔色が変わった。目には怯えの色も見える。それは君がロザリーを怖い目に遭わせた証拠だ。一体何をしたのだね?」
「いいえ、僕は何もしていませんよ?」
レナート様は真顔で言う。その表情を見て私は気付いた。レナート様は何も自覚されていないのだと言うことが。フランシスカ様の為に私に言った心無い言葉は…言って当然の事だと思っているのだ。そこには悪意も何も無いのだと言うことが―。
「どうやら…君は少々常軌を逸しているようだな?少し話し合いをする必要がありそうだ」
「…いいですよ。僕も丁度話をしたかったので」
レナート様…?一体ユーグ様と何の話を…するつもりですか?
不安な気持ちがこみ上げてくる。けれど私には何も口出しする権利がない。
ユーグ様は険しい顔でレナート様を見ていたが、ノーラさんに命じた。
「ノーラ。ロザリーを花屋まで送り届けてくれ。花の代金は上乗せしておくように。私はこの少年と少し話があるのでな」
「はい、かしこまりました。では参りましょう。ロザリー様」
「え?は、はい…。ありがとうございます。ユーグ様」
「では、ロザリー。またな」
ユーグ様が笑みを浮かべて私を見る。
「…」
そんな私をレナート様は冷たい目で見ていた事に気づきながら―。
****
乗り心地の良い馬車に向かい合わせで私とノーラさんは乗って座っていた。何だか自分が場違いな所にいる気がしてく落ち使い気分になってくる。
「どうかなさいましたか?ロザリー様」
向かい側に座っているノーラさんが声を掛けてきた。
「い、いえ。何でもありません」
落ち着きの無い様子の私にノーラさんはクスリと笑った。
「本当にロザリー様は愛らしい方ですね」
「え?」
突然の言葉に驚いた。
「それにおしとやかで気品もあります」
「そ、そんな…気品なんて私にはありません。教育だって…まともに受けるのはこの学園が初めてなのですから」
「そうなると、生まれ持った血筋というものでしょうか?やはり流石はあの方の血を受け継がれている方ですね。だからこそユーグ様は…」
「…」
私は黙ってその話を聞いていた。そう…だからユーグ様は私を見初めて、求めたのだから…。
「ところで、あの方はロザリー様の御学友とお話されていましたが…ひょっとすると恋人ですか?」
ノーラさんの言葉に驚いた。
「い、いえ!まさか…あの方は公爵家の方で…とても高貴な血筋の方です。とても私が近付けるような方ではありません。それにあの方には…美しい婚約者がいらっしゃるのですから」
「そうですか…でも、ロザリー様。学園生活はまだ始まったばかりで3年の猶予が残されています。賭けは…まだ始まったばかりですよ?」
そして、ノーラさんは意味深な笑みを浮かべた―。
レナート様の言葉にユーグ様は眉を険しくした。
「私はね、ロザリーの事は何でも分かるのだよ?彼女は君を見た途端、顔色が変わった。目には怯えの色も見える。それは君がロザリーを怖い目に遭わせた証拠だ。一体何をしたのだね?」
「いいえ、僕は何もしていませんよ?」
レナート様は真顔で言う。その表情を見て私は気付いた。レナート様は何も自覚されていないのだと言うことが。フランシスカ様の為に私に言った心無い言葉は…言って当然の事だと思っているのだ。そこには悪意も何も無いのだと言うことが―。
「どうやら…君は少々常軌を逸しているようだな?少し話し合いをする必要がありそうだ」
「…いいですよ。僕も丁度話をしたかったので」
レナート様…?一体ユーグ様と何の話を…するつもりですか?
不安な気持ちがこみ上げてくる。けれど私には何も口出しする権利がない。
ユーグ様は険しい顔でレナート様を見ていたが、ノーラさんに命じた。
「ノーラ。ロザリーを花屋まで送り届けてくれ。花の代金は上乗せしておくように。私はこの少年と少し話があるのでな」
「はい、かしこまりました。では参りましょう。ロザリー様」
「え?は、はい…。ありがとうございます。ユーグ様」
「では、ロザリー。またな」
ユーグ様が笑みを浮かべて私を見る。
「…」
そんな私をレナート様は冷たい目で見ていた事に気づきながら―。
****
乗り心地の良い馬車に向かい合わせで私とノーラさんは乗って座っていた。何だか自分が場違いな所にいる気がしてく落ち使い気分になってくる。
「どうかなさいましたか?ロザリー様」
向かい側に座っているノーラさんが声を掛けてきた。
「い、いえ。何でもありません」
落ち着きの無い様子の私にノーラさんはクスリと笑った。
「本当にロザリー様は愛らしい方ですね」
「え?」
突然の言葉に驚いた。
「それにおしとやかで気品もあります」
「そ、そんな…気品なんて私にはありません。教育だって…まともに受けるのはこの学園が初めてなのですから」
「そうなると、生まれ持った血筋というものでしょうか?やはり流石はあの方の血を受け継がれている方ですね。だからこそユーグ様は…」
「…」
私は黙ってその話を聞いていた。そう…だからユーグ様は私を見初めて、求めたのだから…。
「ところで、あの方はロザリー様の御学友とお話されていましたが…ひょっとすると恋人ですか?」
ノーラさんの言葉に驚いた。
「い、いえ!まさか…あの方は公爵家の方で…とても高貴な血筋の方です。とても私が近付けるような方ではありません。それにあの方には…美しい婚約者がいらっしゃるのですから」
「そうですか…でも、ロザリー様。学園生活はまだ始まったばかりで3年の猶予が残されています。賭けは…まだ始まったばかりですよ?」
そして、ノーラさんは意味深な笑みを浮かべた―。
0
お気に入りに追加
415
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
うたた寝している間に運命が変わりました。
gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。
婚約解消は君の方から
みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。
しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。
私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、
嫌がらせをやめるよう呼び出したのに……
どうしてこうなったんだろう?
2020.2.17より、カレンの話を始めました。
小説家になろうさんにも掲載しています。
山猿の皇妃
夏菜しの
恋愛
ライヘンベルガー王国の第三王女レティーツィアは、成人する十六歳の誕生日と共に、隣国イスターツ帝国へ和平条約の品として贈られた。
祖国に聞こえてくるイスターツ帝国の噂は、〝山猿〟と言った悪いモノばかり。それでもレティーツィアは自らに課せられた役目だからと山を越えて隣国へ向かった。
嫁いできたレティーツィアを見た皇帝にして夫のヘクトールは、子供に興味は無いと一蹴する。これはライヘンベルガー王国とイスターツ帝国の成人とみなす年の違いの問題だから、レティーツィアにはどうすることも出来ない。
子供だと言われてヘクトールに相手にされないレティーツィアは、妻の責務を果たしていないと言われて次第に冷遇されていく。
一方、レティーツィアには祖国から、将来的に帝国を傀儡とする策が授けられていた。そのためには皇帝ヘクトールの子を産む必要があるのだが……
それが出来たらこんな待遇になってないわ! と彼女は憤慨する。
帝国で居場所をなくし、祖国にも帰ることも出来ない。
行き場を失ったレティーツィアの孤独な戦いが静かに始まる。
※恋愛成分は低め、内容はややダークです
政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~
つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。
政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。
他サイトにも公開中。
公爵子息に気に入られて貴族令嬢になったけど姑の嫌がらせで婚約破棄されました。傷心の私を癒してくれるのは幼馴染だけです
エルトリア
恋愛
「アルフレッド・リヒテンブルグと、リーリエ・バンクシーとの婚約は、只今をもって破棄致します」
塗装看板屋バンクシー・ペイントサービスを営むリーリエは、人命救助をきっかけに出会った公爵子息アルフレッドから求婚される。
平民と貴族という身分差に戸惑いながらも、アルフレッドに惹かれていくリーリエ。
だが、それを快く思わない公爵夫人は、リーリエに対して冷酷な態度を取る。さらには、許嫁を名乗る娘が現れて――。
お披露目を兼ねた舞踏会で、婚約破棄を言い渡されたリーリエが、失意から再び立ち上がる物語。
著者:藤本透
原案:エルトリア
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
ヒロインに騙されて婚約者を手放しました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
地味で冴えない脇役はヒーローに恋しちゃだめですか?
どこにでもいるような地味で冴えない私の唯一の長所は明るい性格。一方許嫁は学園一人気のある、ちょっぴり無口な彼でした。そんなある日、彼が学園一人気のあるヒロインに告白している姿を偶然目にしてしまい、捨てられるのが惨めだった私は先に彼に婚約破棄を申し出て、彼の前から去ることを決意しました。だけど、それはヒロインによる策略で・・・?明るさだけが取り柄の私と無口で不器用な彼との恋の行方はどうなるの?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる