上 下
26 / 221

2-14 男装してお出かけ

しおりを挟む
 部屋に戻ると早速、袋の中から買ってきた古着を取り出して今から着替える服以外は全てクローゼットにしまった。

「この服で現れたら、レナート様は驚くかしら…」

ベッドの上に置いた服を見て呟いた。だけど、今から2人で一緒に出かけるには一番適した服の様に思える。

「さて、着替えましょう」

私は早速古着に手を伸ばした―。



****

 着替えを終えて寮母室の前を通りかかった時、寮母さんが驚いたように声を掛けてきた。

「え?え?ま、まさか…ロザリーさんですか?!」

「はい、そうです」

寮母さんは扉を開けて部屋から出てくると、私の事を頭の天辺から足の爪先までジロジロと見ると言った。

「一体そのような姿をしてどうしたのですか?髪の毛を隠してしまえば誰なのか分かりませんよ」

「はい、このリュックの中には帽子も入っています。寮母さんを驚かせないように今は帽子をかぶらないで出てきたんです」

私の言葉に寮母さんは驚いたように目を見開いた。

「ロザリーさん…何故そんな格好をしてお出かけしようとしているのですか?」

「はい。ある方と一緒に出かけるからです」

私は笑みを浮かべて答えた―。



****

外へ出てみると約束の場所にレナート様は待っていた。

「お待たせ致しました、レナート様」

背後から声を掛けるとレナート様は振り向き…私を見て目を見開いた。

「え…?ロザリー…?ど、どうしたんだい?その格好は。まるで男の子みたいだよ?」

レナート様が驚くのも無理はない。私が着ている服は平民の少年たちが着ている服装をしていたからだ。シャツにベスト、ズボン姿は髪の毛を隠してしまえば本当に男の子にしか見えない。

「レナート様と一緒にお出かけするには誰かに見られても怪しまれないと思うんです」

そして私はみつあみにした髪の毛を持っていた帽子の中に隠した。

「どうですか?何処から見ても男の子に見えますよね?」

レナート様を見上げて尋ねた。

「う、うん…確かにそう見えるけど…」

「良かったです。では参りましょうか?」

「うん…行こうか?」

そして私とレナート様は並んで歩き出した―。


****

「あの…差し支えなければどうしてそんな男の子が着る服を買ったのかな?」

レナート様が尋ねてきた。

「あ、あの…それは…これからアルバイトを探そうと思っていたからです」

「アルバイト?」

「はい。そうです」

この学園では別にアルバイトについて罰則は設けられていない。現に下級貴族で貧しい学生の中にはアルバイトをしている人達もいる。

「でもアルバイトってあまり女子の募集が無いんです。だから男の子の格好で応募すれば採用されやすいかと思って。それに私、生まれ育った村でも男の子の姿で家業を手伝っていたんですよ?」

「そうだったのか…」

レナート様の目に同情が宿る。

「ええ、だから気にしないで下さい。それにこの格好だと誰にも気兼ねなく歩けますし…あ、でも…」

私はチラリとレナート様を見た。
高位貴族らしく、上品な仕立ての服…高級そうな革靴。とても釣り合いが取れるとは思えなかった。

「どうしたんだい?」

レナート様が声を掛けてきた。

「いえ…よくよく見てみると、私とレナート様は一緒に歩くと釣り合いが取れませんよね?申し訳ございません。恥をかかせていますよね?」

「そんな事無いよ。ロザリーとこうして並んで歩いて一緒に買い物に行けるなんて嬉しいよ」

レナート様は笑って言った―。



しおりを挟む
感想 96

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

うたた寝している間に運命が変わりました。

gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。

婚約解消は君の方から

みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。 しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。 私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、 嫌がらせをやめるよう呼び出したのに…… どうしてこうなったんだろう? 2020.2.17より、カレンの話を始めました。 小説家になろうさんにも掲載しています。

山猿の皇妃

夏菜しの
恋愛
 ライヘンベルガー王国の第三王女レティーツィアは、成人する十六歳の誕生日と共に、隣国イスターツ帝国へ和平条約の品として贈られた。  祖国に聞こえてくるイスターツ帝国の噂は、〝山猿〟と言った悪いモノばかり。それでもレティーツィアは自らに課せられた役目だからと山を越えて隣国へ向かった。  嫁いできたレティーツィアを見た皇帝にして夫のヘクトールは、子供に興味は無いと一蹴する。これはライヘンベルガー王国とイスターツ帝国の成人とみなす年の違いの問題だから、レティーツィアにはどうすることも出来ない。  子供だと言われてヘクトールに相手にされないレティーツィアは、妻の責務を果たしていないと言われて次第に冷遇されていく。  一方、レティーツィアには祖国から、将来的に帝国を傀儡とする策が授けられていた。そのためには皇帝ヘクトールの子を産む必要があるのだが……  それが出来たらこんな待遇になってないわ! と彼女は憤慨する。  帝国で居場所をなくし、祖国にも帰ることも出来ない。  行き場を失ったレティーツィアの孤独な戦いが静かに始まる。 ※恋愛成分は低め、内容はややダークです

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

公爵子息に気に入られて貴族令嬢になったけど姑の嫌がらせで婚約破棄されました。傷心の私を癒してくれるのは幼馴染だけです

エルトリア
恋愛
「アルフレッド・リヒテンブルグと、リーリエ・バンクシーとの婚約は、只今をもって破棄致します」 塗装看板屋バンクシー・ペイントサービスを営むリーリエは、人命救助をきっかけに出会った公爵子息アルフレッドから求婚される。 平民と貴族という身分差に戸惑いながらも、アルフレッドに惹かれていくリーリエ。 だが、それを快く思わない公爵夫人は、リーリエに対して冷酷な態度を取る。さらには、許嫁を名乗る娘が現れて――。 お披露目を兼ねた舞踏会で、婚約破棄を言い渡されたリーリエが、失意から再び立ち上がる物語。 著者:藤本透 原案:エルトリア

ヒロインに騙されて婚約者を手放しました

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
地味で冴えない脇役はヒーローに恋しちゃだめですか? どこにでもいるような地味で冴えない私の唯一の長所は明るい性格。一方許嫁は学園一人気のある、ちょっぴり無口な彼でした。そんなある日、彼が学園一人気のあるヒロインに告白している姿を偶然目にしてしまい、捨てられるのが惨めだった私は先に彼に婚約破棄を申し出て、彼の前から去ることを決意しました。だけど、それはヒロインによる策略で・・・?明るさだけが取り柄の私と無口で不器用な彼との恋の行方はどうなるの?

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

処理中です...