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2-7 家族への手紙
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今は誰もいない静まり返った寮が見えて来た。
「え…?」
そこで私は足を止めた。学生寮の中庭には幾つかベンチが置かれている。そのうちの一つに誰か男の人が座っていたのだ。
誰だろう?
徐々に近付き…驚いた。何とそこに座っていたのは他でもない、レナート様だったのだ。
「レナート様っ!」
大きな声で呼びかけると、レナート様がこちらを向いて立ち上がった。
「一体どうされたのですか?」
速足でレナート様の元へ向かうと、頭に手をやりながらレナート様が言った。
「いや…あんな別れ方をしてしまったから気になってしまって。だけど、ロザリーが何所へ行ったのかも分らないから、ここで待っていればその内会えるだろうと思って待っていたんだよ」
そして笑みを浮かべて私を見た。
「…!」
その言葉に思わず頬が赤くなりそうになり、咄嗟に俯くと言った。
「で、ですが…そんな事を言っても私がいつ帰るか分らないのに、待ってらしたのですか?」
「待ったって言っても左程待ってはいないよ。だってすぐに戻って来たじゃないか。何かあったのかい?」
その言葉は何所か私を心配しているように聞こえた。
「いえ、何もありません。用事を思い出し、帰ってきたのです」
「用事…?」
首を傾げるレナート様に私は言った。
「実は家族に手紙を書こうと思って」
「そうなのか。手紙を書くつもりだったんだね?だけど郵便局の場所は知っているのかい?」
「あ…」
そうだった、私は郵便局の場所を知らなかった。
「僕が教えてあげるよ。手紙を書いたら一緒に出しに行こう。どのくらいで書きあげられそうかな?」
「そ、そうですね…1時間位なら…」
「1時間か…」
レナート様は腕時計を見ると呟いた。
「今は10時半だから…それじゃ11時半にこのベンチで待ってるよ。それじゃまた後でね」
「え?あ、あの」
レナート様は私が言葉を発する前に、走り去ってしまった。
「レナート様…」
本当に、何て親切な方なのだろう。…どうしてフランシスカ様はあんなに素敵な婚約者の方がいるのに…イアソン王子と…。
私の脳裏に先程、楽し気に店から出て来たフランシスカ様とイアソン王子の姿がよぎる。
「…レナート様をお待たせしたらいけないものね。すぐに手紙を書きましょう」
私は自室へ向かった―。
****
シンと静まり返った部屋の中で、私は実家に手紙をしたためていた。学園でお友達が出来た事、勉強を頑張っている事…そして、フレディに着なくなった服を送って貰いたい事…。
「こんな事を書いたら…私がお金に困っていると思って心配かけてしまうかしら…」
だけど、私は絶対にあの方のお金はあてにしたくなかった。恐らくあの方との賭けは既に結果が出ているのかもしれないけれど、卒業までにこれ以上余計な借りを作りたくは無かったから…。
「ふぅ…書けたわ」
書きたい事がありすぎて、気付けば便箋が2枚に渡っていた。書き終えた便箋をまとめ、あらかじめ住所を記入して置いた封筒に二つ折りして入れると糊付けした。部屋の壁掛け時計をみると時刻はそろそろ11時半になろうとしている。
「もうこんな時間…。大変、早く行かなくちゃレナート様をお待たせしてしまうわ」
手紙をポシェットに入れると、私は急いで自室を後にした―。
「え…?」
そこで私は足を止めた。学生寮の中庭には幾つかベンチが置かれている。そのうちの一つに誰か男の人が座っていたのだ。
誰だろう?
徐々に近付き…驚いた。何とそこに座っていたのは他でもない、レナート様だったのだ。
「レナート様っ!」
大きな声で呼びかけると、レナート様がこちらを向いて立ち上がった。
「一体どうされたのですか?」
速足でレナート様の元へ向かうと、頭に手をやりながらレナート様が言った。
「いや…あんな別れ方をしてしまったから気になってしまって。だけど、ロザリーが何所へ行ったのかも分らないから、ここで待っていればその内会えるだろうと思って待っていたんだよ」
そして笑みを浮かべて私を見た。
「…!」
その言葉に思わず頬が赤くなりそうになり、咄嗟に俯くと言った。
「で、ですが…そんな事を言っても私がいつ帰るか分らないのに、待ってらしたのですか?」
「待ったって言っても左程待ってはいないよ。だってすぐに戻って来たじゃないか。何かあったのかい?」
その言葉は何所か私を心配しているように聞こえた。
「いえ、何もありません。用事を思い出し、帰ってきたのです」
「用事…?」
首を傾げるレナート様に私は言った。
「実は家族に手紙を書こうと思って」
「そうなのか。手紙を書くつもりだったんだね?だけど郵便局の場所は知っているのかい?」
「あ…」
そうだった、私は郵便局の場所を知らなかった。
「僕が教えてあげるよ。手紙を書いたら一緒に出しに行こう。どのくらいで書きあげられそうかな?」
「そ、そうですね…1時間位なら…」
「1時間か…」
レナート様は腕時計を見ると呟いた。
「今は10時半だから…それじゃ11時半にこのベンチで待ってるよ。それじゃまた後でね」
「え?あ、あの」
レナート様は私が言葉を発する前に、走り去ってしまった。
「レナート様…」
本当に、何て親切な方なのだろう。…どうしてフランシスカ様はあんなに素敵な婚約者の方がいるのに…イアソン王子と…。
私の脳裏に先程、楽し気に店から出て来たフランシスカ様とイアソン王子の姿がよぎる。
「…レナート様をお待たせしたらいけないものね。すぐに手紙を書きましょう」
私は自室へ向かった―。
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シンと静まり返った部屋の中で、私は実家に手紙をしたためていた。学園でお友達が出来た事、勉強を頑張っている事…そして、フレディに着なくなった服を送って貰いたい事…。
「こんな事を書いたら…私がお金に困っていると思って心配かけてしまうかしら…」
だけど、私は絶対にあの方のお金はあてにしたくなかった。恐らくあの方との賭けは既に結果が出ているのかもしれないけれど、卒業までにこれ以上余計な借りを作りたくは無かったから…。
「ふぅ…書けたわ」
書きたい事がありすぎて、気付けば便箋が2枚に渡っていた。書き終えた便箋をまとめ、あらかじめ住所を記入して置いた封筒に二つ折りして入れると糊付けした。部屋の壁掛け時計をみると時刻はそろそろ11時半になろうとしている。
「もうこんな時間…。大変、早く行かなくちゃレナート様をお待たせしてしまうわ」
手紙をポシェットに入れると、私は急いで自室を後にした―。
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