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2-4 身分の差
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「え…?町を案内…」
私は耳を疑った。
「うん、そうだよ。どうせ今日は暇だからね。それじゃ行こうか?」
レナート様が私の返事を待たずに歩き出す。まるで夢のようなお誘いだけども…。
「だ、駄目ですっ!」
私は大声で言った。
「え?どうしたの?」
予想外に大きな声を上げてしまったのかもしれない。レナート様は驚いた顔で私を見た。
「何が駄目だって言うんだい?あ…ひょっとして僕と一緒に出掛けるのは…嫌だったかな…?」
レナート様が申し訳なさ気に頭に手をやる。
「い、いえ。レナート様からのお誘いはとても嬉しいのですが…ただ、レナート様には婚約者がいらっしゃるではありませんか。もし私と一緒にお出かけされている姿をあの方が見られたら…何と思われるか…」
するとレナート様は悲しげな顔つきを見せた。
「ああ…。フレデリカの事を言っているんだね?それなら何も気にする事は無いよ。彼女は今日はレナート王子と一緒に町に出かけてしまったんだ」
「え…?」
「だから…暇になってしまったんだよ」
「す、すみません…!そんな事とは知らずに私は…!」
慌てて頭を下げるとレナート様は笑いながら言った。
「そんな事、ロザリーは気にすること無いよ。何も今日に限った事じゃないから」
「そ、そんな…」
今日に限った事ではないなんて…。私だったら…。でもその先を口にする事は出来ない。何故なら私とレナート様の間には…どうしようもない身分の差があるから。
「これで分かっただろう?さて、それじゃ一緒に町に行こう。女の子が好きそうな店を知ってるから連れて行ってあげるよ」
笑顔で言うレナート様に私は首を振った。
「いいえ…それでもやっぱり駄目です。一緒には出かけられません」
「そうか…ごめん。迷惑だったかな…。それじゃ…1人で行ってくるといいよ」
寂しげに言うレナート様。ひょっとすると私の言葉使いのせいで勘違いさせてしまったのかもしれない。
「いいえ。迷惑なんて…とんでもありません!お誘い…すごく嬉しかったです。で、でも…私と一緒にいるとレナート様の評判が…落ちてしまいます。むしろ迷惑を掛けてしまうのは私の方です」
「え…?それは一体どういう意味だい?」
首を傾げるレナート様に言った。
「私は…平民の学生です。ですが、レナート様は貴族…しかも公爵さまですよね?私なんかのような身分の低い者と一緒にいればレナート様に対する周囲の評価が下がってしまいます。ましてやフレデリカ様と言う、あんなにも素敵な婚約者がいらっしゃる方が…私と一緒にいたことが見られでもしたら…問題になってしまいます」
それに、私は…たとえ町に出かけても何も買い物をすることが出来ない。私が本当は貧しい平民であるということは…誰にも知られてはいけないのだから…。そして私が抱えているあの秘密も…。
「ロザリー…そこまで考えていたのかい?」
「…はい。こうして今、一緒にいるだけでも…きっと誰かに見られているでしょう」
「それじゃ、1人で町に行くつもり?」
「はい」
小さく頷く。
「困ったな…」
レナート様が呟く。
「え?」
「僕は今日1日暇で…誰かに町へ出掛けるのに付き合って貰いたかったんだけどな…」
そして私をチラリと見る。確かに…私だって、本当は…レナート様と一緒に出かけたい…。そうだ…あの方法なら一緒に出かけられるかも知れない…!
私は肩から下げたポシェットをギュッと握りしめた―。
私は耳を疑った。
「うん、そうだよ。どうせ今日は暇だからね。それじゃ行こうか?」
レナート様が私の返事を待たずに歩き出す。まるで夢のようなお誘いだけども…。
「だ、駄目ですっ!」
私は大声で言った。
「え?どうしたの?」
予想外に大きな声を上げてしまったのかもしれない。レナート様は驚いた顔で私を見た。
「何が駄目だって言うんだい?あ…ひょっとして僕と一緒に出掛けるのは…嫌だったかな…?」
レナート様が申し訳なさ気に頭に手をやる。
「い、いえ。レナート様からのお誘いはとても嬉しいのですが…ただ、レナート様には婚約者がいらっしゃるではありませんか。もし私と一緒にお出かけされている姿をあの方が見られたら…何と思われるか…」
するとレナート様は悲しげな顔つきを見せた。
「ああ…。フレデリカの事を言っているんだね?それなら何も気にする事は無いよ。彼女は今日はレナート王子と一緒に町に出かけてしまったんだ」
「え…?」
「だから…暇になってしまったんだよ」
「す、すみません…!そんな事とは知らずに私は…!」
慌てて頭を下げるとレナート様は笑いながら言った。
「そんな事、ロザリーは気にすること無いよ。何も今日に限った事じゃないから」
「そ、そんな…」
今日に限った事ではないなんて…。私だったら…。でもその先を口にする事は出来ない。何故なら私とレナート様の間には…どうしようもない身分の差があるから。
「これで分かっただろう?さて、それじゃ一緒に町に行こう。女の子が好きそうな店を知ってるから連れて行ってあげるよ」
笑顔で言うレナート様に私は首を振った。
「いいえ…それでもやっぱり駄目です。一緒には出かけられません」
「そうか…ごめん。迷惑だったかな…。それじゃ…1人で行ってくるといいよ」
寂しげに言うレナート様。ひょっとすると私の言葉使いのせいで勘違いさせてしまったのかもしれない。
「いいえ。迷惑なんて…とんでもありません!お誘い…すごく嬉しかったです。で、でも…私と一緒にいるとレナート様の評判が…落ちてしまいます。むしろ迷惑を掛けてしまうのは私の方です」
「え…?それは一体どういう意味だい?」
首を傾げるレナート様に言った。
「私は…平民の学生です。ですが、レナート様は貴族…しかも公爵さまですよね?私なんかのような身分の低い者と一緒にいればレナート様に対する周囲の評価が下がってしまいます。ましてやフレデリカ様と言う、あんなにも素敵な婚約者がいらっしゃる方が…私と一緒にいたことが見られでもしたら…問題になってしまいます」
それに、私は…たとえ町に出かけても何も買い物をすることが出来ない。私が本当は貧しい平民であるということは…誰にも知られてはいけないのだから…。そして私が抱えているあの秘密も…。
「ロザリー…そこまで考えていたのかい?」
「…はい。こうして今、一緒にいるだけでも…きっと誰かに見られているでしょう」
「それじゃ、1人で町に行くつもり?」
「はい」
小さく頷く。
「困ったな…」
レナート様が呟く。
「え?」
「僕は今日1日暇で…誰かに町へ出掛けるのに付き合って貰いたかったんだけどな…」
そして私をチラリと見る。確かに…私だって、本当は…レナート様と一緒に出かけたい…。そうだ…あの方法なら一緒に出かけられるかも知れない…!
私は肩から下げたポシェットをギュッと握りしめた―。
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