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2-3 町への誘い
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ずぶ濡れになりながら顔を上げると、こちらに駆け寄って来るのはレナート様だった。
「あ…!レ、レナート様…っ!」
声を震わせてステラ様がレナート様を見つめている。他の女子学生達も誰もが青ざめた顔で立っていた。
「君、大丈夫だったかい?」
レナート様は真っ先に私に駆け寄ってくると、うずくまっている私の傍にしゃがみ込んで声を掛けて来た。
「は、はい…」
レナート様を見ると、彼はようやく私が誰なの気が付いたようだった。
「え…?ひょっとすると君は…ロザリー?!」
「はい…ロ、ロザリーです…」
顔に張り付いた髪をのけながら私はレナート様を見た。
「大丈夫かい?こんなにずぶ濡れになって…!」
レナート様はガタガタ震える私に上着を脱いで掛けてくれようとしたので慌てて止めた。
「だ、駄目です。それではレナート様のお召し物が濡れてしまいます…」
「だけど…」
「私なら大丈夫です…。前を見ないで歩いていたら、噴水に気付かずに落ちてしまったんです」
「「「「「!」」」」」
私の言葉にステラ様達が息を飲むのが分った。…苦しい言い訳なのは分り切っていた。けれど…レナート様がステラ様達に注意する事によって、再び逆恨みされるのは嫌だったのだ。
「そんな、噴水に気付かなかったなんて…」
尚もレナート様は声を掛けて来るけれども私はきっぱり言った。
「いいえ、本当に気づかなかったのです」
そして私はずぶ濡れのまま立ち上がると、こちらを凝視しているステラ様達に頭を下げた。
「お騒がせして申し訳ございませんでした。どうぞ皆様、行って下さい」
「い、行きましょう…」
するとステラ様が他の4人の令嬢達に声を掛けた。
「そ、そうね」
「そ…それでは失礼致します…」
令嬢達はレナート様の厳しい視線に耐えかねてか、まるで逃げるようにその場から走り去ってしまった。
「ロザリー…君は…」
ステラたちが走り去って行ったあと、レナート様が悲し気な瞳で私を見つめる。
「レナート様、お騒がせして申し訳ございませんでした…私、部屋に戻ります…」
頭を下げて背を向けてトボトボと歩いていると、不意に背後から声を掛けられた。
「ロザリーッ!」
「はい?」
振り返るとレナート様は言った。
「1時間後…」
「え?」
「1時間後、学園の正門前で待ってるからっ!」
それだけ言うと、レナート様は駆けだした。
「え?あ、あのっ!」
しかし、声を掛ける間もなくレナート様は走り去ってしまった。
「今のは一体…?」
その時、風が吹いて私の濡れた身体を冷やしていく。
「さ、寒い…っ!早く着がえに行かないと!」
そして私は濡れた身体のまま、寮へと速足で向かった―。
****
シャワーを浴び直し、髪を乾かして着替えを済ませると急いでレナート様の待ち合わせの場所へと向かった。正門が見えてくると、そこには既に門の前に佇むレナート様の姿があった。
「レナート様!」
小走りでレナート様の元へ到着すると、息を整えた。
「え?大丈夫だったかい?まさか走って来るとは思わなかったよ」
レナート様が心配そうに声を掛けてくる。
「は、はい…お、お待たせしては…い、いけないと…思っ…て…」
ハアハアしているとレナート様が謝ってきた。
「ごめん…焦らせてしまったね」
「え?そ、そんな…とんでもないです。私が…勝手に走って…きた…だけですから…」
ようやく呼吸が整ってきた。そんな私をレナート様はじっと見つめている。
「それで、レナート様。私にどの様な御用でしょうか?」
「うん。聞きたい事があるのだけど…ひょっとしてロザリーは町に出掛けようと思っていたんじゃないかな?」
「え?ええ…そうですが…。寮には私1人しかおらず、ただ部屋にいても退屈だったので、町に行ってみようかと思ったのです」
…尤も私には買い物をする余裕等ないけれども。
「やっぱり、そうだったのか。ロザリー、僕が町を案内してあげるよ」
レナート様は笑顔で私に言った―。
「あ…!レ、レナート様…っ!」
声を震わせてステラ様がレナート様を見つめている。他の女子学生達も誰もが青ざめた顔で立っていた。
「君、大丈夫だったかい?」
レナート様は真っ先に私に駆け寄ってくると、うずくまっている私の傍にしゃがみ込んで声を掛けて来た。
「は、はい…」
レナート様を見ると、彼はようやく私が誰なの気が付いたようだった。
「え…?ひょっとすると君は…ロザリー?!」
「はい…ロ、ロザリーです…」
顔に張り付いた髪をのけながら私はレナート様を見た。
「大丈夫かい?こんなにずぶ濡れになって…!」
レナート様はガタガタ震える私に上着を脱いで掛けてくれようとしたので慌てて止めた。
「だ、駄目です。それではレナート様のお召し物が濡れてしまいます…」
「だけど…」
「私なら大丈夫です…。前を見ないで歩いていたら、噴水に気付かずに落ちてしまったんです」
「「「「「!」」」」」
私の言葉にステラ様達が息を飲むのが分った。…苦しい言い訳なのは分り切っていた。けれど…レナート様がステラ様達に注意する事によって、再び逆恨みされるのは嫌だったのだ。
「そんな、噴水に気付かなかったなんて…」
尚もレナート様は声を掛けて来るけれども私はきっぱり言った。
「いいえ、本当に気づかなかったのです」
そして私はずぶ濡れのまま立ち上がると、こちらを凝視しているステラ様達に頭を下げた。
「お騒がせして申し訳ございませんでした。どうぞ皆様、行って下さい」
「い、行きましょう…」
するとステラ様が他の4人の令嬢達に声を掛けた。
「そ、そうね」
「そ…それでは失礼致します…」
令嬢達はレナート様の厳しい視線に耐えかねてか、まるで逃げるようにその場から走り去ってしまった。
「ロザリー…君は…」
ステラたちが走り去って行ったあと、レナート様が悲し気な瞳で私を見つめる。
「レナート様、お騒がせして申し訳ございませんでした…私、部屋に戻ります…」
頭を下げて背を向けてトボトボと歩いていると、不意に背後から声を掛けられた。
「ロザリーッ!」
「はい?」
振り返るとレナート様は言った。
「1時間後…」
「え?」
「1時間後、学園の正門前で待ってるからっ!」
それだけ言うと、レナート様は駆けだした。
「え?あ、あのっ!」
しかし、声を掛ける間もなくレナート様は走り去ってしまった。
「今のは一体…?」
その時、風が吹いて私の濡れた身体を冷やしていく。
「さ、寒い…っ!早く着がえに行かないと!」
そして私は濡れた身体のまま、寮へと速足で向かった―。
****
シャワーを浴び直し、髪を乾かして着替えを済ませると急いでレナート様の待ち合わせの場所へと向かった。正門が見えてくると、そこには既に門の前に佇むレナート様の姿があった。
「レナート様!」
小走りでレナート様の元へ到着すると、息を整えた。
「え?大丈夫だったかい?まさか走って来るとは思わなかったよ」
レナート様が心配そうに声を掛けてくる。
「は、はい…お、お待たせしては…い、いけないと…思っ…て…」
ハアハアしているとレナート様が謝ってきた。
「ごめん…焦らせてしまったね」
「え?そ、そんな…とんでもないです。私が…勝手に走って…きた…だけですから…」
ようやく呼吸が整ってきた。そんな私をレナート様はじっと見つめている。
「それで、レナート様。私にどの様な御用でしょうか?」
「うん。聞きたい事があるのだけど…ひょっとしてロザリーは町に出掛けようと思っていたんじゃないかな?」
「え?ええ…そうですが…。寮には私1人しかおらず、ただ部屋にいても退屈だったので、町に行ってみようかと思ったのです」
…尤も私には買い物をする余裕等ないけれども。
「やっぱり、そうだったのか。ロザリー、僕が町を案内してあげるよ」
レナート様は笑顔で私に言った―。
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