上 下
14 / 221

2-2 下級貴族たちの嫌がらせ

しおりを挟む
 翌朝9時―

寮母さんと一緒に食事をした私は部屋に戻って1人で本を読んでいたけれども何故か集中出来なかった。窓の外にふと目をやると、空は雲一つない青空が見える。

「どうせ本を読んでも頭に入ってこないし…町に行ってみようかしら?」

たいして自由にお金を使える訳じゃないけれど…ウィンドウショッピングしたり、公園のような場所を探してみるのも良いかもしれない。

「それじゃ、出かけましょう」

そこで私は自分の持っている洋服の中で、一番まともそうな服を選ぶと着替える事にした。モスグリーンのワンピース。私のお気に入りのワンピース。
ショルダーバッグにお財布を入れると、早速寮を後にして…私はトラブルに巻き込まれてしまった―。


****

 学生寮を出て、正門へ向かうとすぐに私は同じクラスの下級貴族の5人の女子生徒達と運悪く遭遇してしまった。彼女たちは全員が男爵家と子爵家の出身で、アニータ達の話によると、あまり裕福な家系では無いらしい。彼女たちから私が入学早々イアソン王子に声を掛けられたことに対して反感を持たれているのは知っていた。

「あら?誰かと思えばロザリー・ダナンじゃないの?」

この5人の中でリーダー的存在の青い髪を肩口で切りそろえた少女が声を掛けて来た。

「あ…お早うございます…、ステラ様。そして皆様…」

ペコリと頭を下げるも、すでに私の心臓はドキドキしていた。きっと…彼女たちはこのまま黙って私を見逃してはくれないだろう。

「ふ~ん…平民の女生徒は全員この学園寮から逃げ出したと思っていたけど…1人残っているなんてねェ…」

軽蔑した目で私を見つめて来る黒髪の女生徒。そんな…この人達は平民の女子生徒たちは皆学生寮から逃げ出したと思っていたなんて…。

「それにしても珍しいわね。平民の女子生徒が寮に残っているなんてさ。ひょっとして…あんたは里帰りも出来ない程貧しい平民なんじゃないの?」

ショートヘアでどこかボーイッシュな女子生徒の言葉にドキリとする。

「あ、さては…その顔…図星ね!どうりで来ている服も貧乏臭いと思ったわ」

「ええ、そうね。臭くてたまらないからちょと洗濯でもしましょうか?ついてきなさいよっ!」

ステラ様の言葉に当然歯向かえるはずも無く…私は彼女たちに取り囲まれるように噴水のある中庭へと連れて行かれた―。

****

バシャーンッ!!

「キャアッ!」

噴水の傍まで連れて行かれた途端…私は彼女達から背中を押されて噴水の中に落とされてしまった。

「ゴホッ!ゴホッ!」

慌てて噴水から出て、両手を地面に着くような姿勢で激しく咳き込んでいると頭上で彼女たちの笑い声が聞こえてくる。

「アハハハッ!いい気味ねっ!」
「ええ、そうよ!私達のイアソン様に図々しい態度を取ったからよ」
「これで少しは貧乏臭い匂いもとれたのじゃないかしら?」

苦しくてゴホゴホと咳き込んでいると、不意に彼女彼女達を強い口調で責める声がこちらへ向かって近づいて来た。

「君達っ!よってたかって何してるんだっ!」

え…?あの声は―?

しおりを挟む
感想 96

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

うたた寝している間に運命が変わりました。

gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。

婚約解消は君の方から

みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。 しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。 私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、 嫌がらせをやめるよう呼び出したのに…… どうしてこうなったんだろう? 2020.2.17より、カレンの話を始めました。 小説家になろうさんにも掲載しています。

山猿の皇妃

夏菜しの
恋愛
 ライヘンベルガー王国の第三王女レティーツィアは、成人する十六歳の誕生日と共に、隣国イスターツ帝国へ和平条約の品として贈られた。  祖国に聞こえてくるイスターツ帝国の噂は、〝山猿〟と言った悪いモノばかり。それでもレティーツィアは自らに課せられた役目だからと山を越えて隣国へ向かった。  嫁いできたレティーツィアを見た皇帝にして夫のヘクトールは、子供に興味は無いと一蹴する。これはライヘンベルガー王国とイスターツ帝国の成人とみなす年の違いの問題だから、レティーツィアにはどうすることも出来ない。  子供だと言われてヘクトールに相手にされないレティーツィアは、妻の責務を果たしていないと言われて次第に冷遇されていく。  一方、レティーツィアには祖国から、将来的に帝国を傀儡とする策が授けられていた。そのためには皇帝ヘクトールの子を産む必要があるのだが……  それが出来たらこんな待遇になってないわ! と彼女は憤慨する。  帝国で居場所をなくし、祖国にも帰ることも出来ない。  行き場を失ったレティーツィアの孤独な戦いが静かに始まる。 ※恋愛成分は低め、内容はややダークです

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

公爵子息に気に入られて貴族令嬢になったけど姑の嫌がらせで婚約破棄されました。傷心の私を癒してくれるのは幼馴染だけです

エルトリア
恋愛
「アルフレッド・リヒテンブルグと、リーリエ・バンクシーとの婚約は、只今をもって破棄致します」 塗装看板屋バンクシー・ペイントサービスを営むリーリエは、人命救助をきっかけに出会った公爵子息アルフレッドから求婚される。 平民と貴族という身分差に戸惑いながらも、アルフレッドに惹かれていくリーリエ。 だが、それを快く思わない公爵夫人は、リーリエに対して冷酷な態度を取る。さらには、許嫁を名乗る娘が現れて――。 お披露目を兼ねた舞踏会で、婚約破棄を言い渡されたリーリエが、失意から再び立ち上がる物語。 著者:藤本透 原案:エルトリア

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

ヒロインに騙されて婚約者を手放しました

結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
地味で冴えない脇役はヒーローに恋しちゃだめですか? どこにでもいるような地味で冴えない私の唯一の長所は明るい性格。一方許嫁は学園一人気のある、ちょっぴり無口な彼でした。そんなある日、彼が学園一人気のあるヒロインに告白している姿を偶然目にしてしまい、捨てられるのが惨めだった私は先に彼に婚約破棄を申し出て、彼の前から去ることを決意しました。だけど、それはヒロインによる策略で・・・?明るさだけが取り柄の私と無口で不器用な彼との恋の行方はどうなるの?

処理中です...