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第1話
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ガキィィンッ!!
対戦していた相手の練習用剣を弾き飛ばしたところで、勝負がついた。
「そこまで! 勝者、レオニー・バイロン!」
剣術の先生の声が高らかに響き、2年生の剣術練習試合を見学していた女子生徒たちから歓声が沸き起こる。
「キャーッ!! 素敵! レオニー様の勝利よ!」
「やっぱり流石は騎士の家系ね!」
「剣を振るっている姿も美しいわ!」
そのとき授業終了のチャイムが鳴り響き、剣術の先生が口を開いた。
「では、これにて剣術の授業を……っ」
『レオニー様ーっ!!』
突如として、女子生徒たちが一斉に叫ぶと集団で駆けてくる。
「こ、こら! 君たち待ちなさい! まだ授業は終わっていないぞ!」
しかし先生の静止を聞かない女子生徒たち。あっという間に彼女たちに取り囲まれてしまった。
「レオニー様! どうぞこのタオルを使って下さい!」
金色の髪の女子生徒がタオルを差し出してきた。彼女はクラスメイトのジョエル。確か婚約者もいたはずだ。
「ありがとう」
ニコリと笑顔でタオルを受け取ろうとすると、別の女子生徒が割り込んできた。
「あなたは婚約者がいるでしょう! 引っ込んでいなさいよ! レオニー様、タオルを使うならどうぞ私のを使って下さい。カモミールの香水を、たっぷりふりかけてあるんです!」
するとさらに別の女子生徒が水の入ったピッチャーを手に、割り込んできた。
「レオニー様、 汗をかいたでしょうから私が自ら作ったレモン水で喉を潤しませんか!?」
「あら! 運動の後は甘い物に決まっているでしょう!? クッキーを受け取って下さい!」
女子学生が次から次へと現れ、もみくちゃにされて大変だ。
「わ、分かったから皆、落ち着いて! 全員からありがたく受け取るから!」
何とかその場を宥めると、女子生徒たちは頬を赤らめて再び騒ぎ出す。
「やっぱりレオニー様はお優しいのね」
「誰か1人を特別扱いしないところがいいわ」
「でも、出来れば私を贔屓してくださらない?」
再び騒ぎ出す女子生徒たち。
「アハハハ……」
返答に困り、笑ってごまかすも……内心悪い気はしなかった。
男子生徒たちは、みんな恨めしそうな目をこちらに向けている。皆、僕一人が女子生徒たちから人気があるのを、気に入らないのだろう。
まぁ、それは当然かも知れない。僕に群がってくる女性生徒たちの半分は婚約者がいるのだから。
男子生徒たちの中には、あからさまに激しい敵意をぶつけてきている人もいる。恐らく、この中に自分の婚約者がいるのだろう。
やれやれ……女子生徒たちから人気があるのは、僕のせいじゃないのに。
この分では近いウチにまた、決闘を申し込まれるかもしれないな……。
心のなかで、僕はため息をついた――
****
ここは、セントクロス学園。主に騎士を養成する学園に特化している。
そして僕の家系は代々、王宮に使える名門騎士を排出していたのだった。当然僕も学園を卒業後は、家紋を背負って見習騎士として王宮に務める。
だから家の恥にならないよう、常に厳しい鍛錬に励む日々を過ごしている。
そのおかげで、現在同学年で僕に剣術で適う生徒は誰もいなかった。
剣術だけではない。
名門バイロン伯爵家の名に恥ないよう、僕は勉強も頑張り、品行方正を保っている。だから今のように女子生徒たちから絶大な人気を得ているのだろう。
「レオニー様、クッキー美味しいですか?」
クッキーの差し入れをしてきた女子生徒が頬を赤らめて尋ねてくる。
「うん、美味しいよ。レモン水も美味しいし、タオルも助かる。皆、本当にありがとう」
人々を守る騎士を目指す以上、優しい人間でなくてはいけない。
僕は集まっている女子生徒たちに笑顔を振りまくのだった――
対戦していた相手の練習用剣を弾き飛ばしたところで、勝負がついた。
「そこまで! 勝者、レオニー・バイロン!」
剣術の先生の声が高らかに響き、2年生の剣術練習試合を見学していた女子生徒たちから歓声が沸き起こる。
「キャーッ!! 素敵! レオニー様の勝利よ!」
「やっぱり流石は騎士の家系ね!」
「剣を振るっている姿も美しいわ!」
そのとき授業終了のチャイムが鳴り響き、剣術の先生が口を開いた。
「では、これにて剣術の授業を……っ」
『レオニー様ーっ!!』
突如として、女子生徒たちが一斉に叫ぶと集団で駆けてくる。
「こ、こら! 君たち待ちなさい! まだ授業は終わっていないぞ!」
しかし先生の静止を聞かない女子生徒たち。あっという間に彼女たちに取り囲まれてしまった。
「レオニー様! どうぞこのタオルを使って下さい!」
金色の髪の女子生徒がタオルを差し出してきた。彼女はクラスメイトのジョエル。確か婚約者もいたはずだ。
「ありがとう」
ニコリと笑顔でタオルを受け取ろうとすると、別の女子生徒が割り込んできた。
「あなたは婚約者がいるでしょう! 引っ込んでいなさいよ! レオニー様、タオルを使うならどうぞ私のを使って下さい。カモミールの香水を、たっぷりふりかけてあるんです!」
するとさらに別の女子生徒が水の入ったピッチャーを手に、割り込んできた。
「レオニー様、 汗をかいたでしょうから私が自ら作ったレモン水で喉を潤しませんか!?」
「あら! 運動の後は甘い物に決まっているでしょう!? クッキーを受け取って下さい!」
女子学生が次から次へと現れ、もみくちゃにされて大変だ。
「わ、分かったから皆、落ち着いて! 全員からありがたく受け取るから!」
何とかその場を宥めると、女子生徒たちは頬を赤らめて再び騒ぎ出す。
「やっぱりレオニー様はお優しいのね」
「誰か1人を特別扱いしないところがいいわ」
「でも、出来れば私を贔屓してくださらない?」
再び騒ぎ出す女子生徒たち。
「アハハハ……」
返答に困り、笑ってごまかすも……内心悪い気はしなかった。
男子生徒たちは、みんな恨めしそうな目をこちらに向けている。皆、僕一人が女子生徒たちから人気があるのを、気に入らないのだろう。
まぁ、それは当然かも知れない。僕に群がってくる女性生徒たちの半分は婚約者がいるのだから。
男子生徒たちの中には、あからさまに激しい敵意をぶつけてきている人もいる。恐らく、この中に自分の婚約者がいるのだろう。
やれやれ……女子生徒たちから人気があるのは、僕のせいじゃないのに。
この分では近いウチにまた、決闘を申し込まれるかもしれないな……。
心のなかで、僕はため息をついた――
****
ここは、セントクロス学園。主に騎士を養成する学園に特化している。
そして僕の家系は代々、王宮に使える名門騎士を排出していたのだった。当然僕も学園を卒業後は、家紋を背負って見習騎士として王宮に務める。
だから家の恥にならないよう、常に厳しい鍛錬に励む日々を過ごしている。
そのおかげで、現在同学年で僕に剣術で適う生徒は誰もいなかった。
剣術だけではない。
名門バイロン伯爵家の名に恥ないよう、僕は勉強も頑張り、品行方正を保っている。だから今のように女子生徒たちから絶大な人気を得ているのだろう。
「レオニー様、クッキー美味しいですか?」
クッキーの差し入れをしてきた女子生徒が頬を赤らめて尋ねてくる。
「うん、美味しいよ。レモン水も美味しいし、タオルも助かる。皆、本当にありがとう」
人々を守る騎士を目指す以上、優しい人間でなくてはいけない。
僕は集まっている女子生徒たちに笑顔を振りまくのだった――
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