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第7話
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――午前10時
2時限目の授業が終わり、中休みになったので私は急いでフリッツのクラスへ向った。
教室を覗くと今回は私の姿に気付いたようで、一瞬いやそ~な表情を浮かべたフリッツがこちらにやって来た。
「ロッテ……また来たんだね」
「ええ。またしても来たわ。フリッツに見せたいものがあってね~」
「な、何なんだよ……その楽しそうな話し方は」
「ほら、これよ」
ポケットから写真を取り出すと、フリッツの前に突き出した。
「ん……? ああっ!! な、何だ! この写真は!」
そこにはフリッツとメラニーが手を繋いで笑顔で見つめ合っている場面が映し出されている。
「こ、こ、こ……」
「あら、いやだ。驚きすぎて、ニワトリにでもなってしまったのかしら?」
「この写真は一体何だよ!!」
写真を素早くポケットに戻すと、私は笑みを浮かべた。
「見れば分かるでしょう? 2人のデート写真よ」
「まさか、ロッテ。俺達の後をつけていたのか!?」
明らか動揺するフリッツ。
「俺達ですか……なるほど、もう2人は一括りに出来るほどの仲になっているということね?」
「う……」
「それにしても、一体これはどういう状況かしら? フリッツ。婚約者というものがありながら、堂々と他の女性とデートをするなんて……これは立派な浮気よ!」
「い、いや、別人かもしれないだろう? もう一度その写真を見せてくれないか?」
写真を取り上げようとするつもりだろうが、そうはさせるものか。
「言っておきますけどね、この写真を取り上げようとしても無駄よ。ネガは私が持っているの。いくらでも現像出来るんですからね」
「そ、そんな……」
フリッツの慌てふためいている様子を見れば、恐らく婚約破棄をするつもりなはいのだろう。単なる遊びだということなのだろうか?
だが、私は2人を許すわけにはいかない。
「とりあえず、メラニーさんには慰謝料を要求するつもりだから彼女に良く伝えておいいてね」
「い、慰謝料だって!?」
「当然じゃない。彼女は婚約者がいる相手に手を出したのよ。しかも男爵令嬢という格下の身分で! 当然慰謝料を支払わせるわ」
「いくら何でも、それはやりすぎだと思わないか?」
フリッツは余程メラニーが大切なのだろうか? 彼女をかばうような言い方が気に食わない。
「言っておきますけど、私の父も大変激怒しているのよ」
「ひっ!」
この言葉に青ざめるフリッツ。
まぁ、それは当然だろう。父は泣く子も黙る軍人貴族として有名なのだから。
「それなりの誠意を見せてもらわなければ、フリッツの両親にも報告させてもらうから。この写真を使ってね」
「そ、それなりの誠意って……?」
「そんなことは自分で考えて頂戴。それじゃ、中休みも終わるから私は教室に戻るわ」
「ええ!? こ、こんな中途半端な状態で!?」
情けない声をあげるフリッツに返事もせずに、私は背を向けて歩き始めた。
舞台は整った。
後は最後の仕上げをするだけだ。
フリッツとの付き合いは長いので、十分私の性格を知り尽くしている。
きっと私の次の行動を見抜いているはずだ。
「フフフ……面白いことになりそうだわ」
私は足取り軽やかに、自分の教室へと戻っていった――
2時限目の授業が終わり、中休みになったので私は急いでフリッツのクラスへ向った。
教室を覗くと今回は私の姿に気付いたようで、一瞬いやそ~な表情を浮かべたフリッツがこちらにやって来た。
「ロッテ……また来たんだね」
「ええ。またしても来たわ。フリッツに見せたいものがあってね~」
「な、何なんだよ……その楽しそうな話し方は」
「ほら、これよ」
ポケットから写真を取り出すと、フリッツの前に突き出した。
「ん……? ああっ!! な、何だ! この写真は!」
そこにはフリッツとメラニーが手を繋いで笑顔で見つめ合っている場面が映し出されている。
「こ、こ、こ……」
「あら、いやだ。驚きすぎて、ニワトリにでもなってしまったのかしら?」
「この写真は一体何だよ!!」
写真を素早くポケットに戻すと、私は笑みを浮かべた。
「見れば分かるでしょう? 2人のデート写真よ」
「まさか、ロッテ。俺達の後をつけていたのか!?」
明らか動揺するフリッツ。
「俺達ですか……なるほど、もう2人は一括りに出来るほどの仲になっているということね?」
「う……」
「それにしても、一体これはどういう状況かしら? フリッツ。婚約者というものがありながら、堂々と他の女性とデートをするなんて……これは立派な浮気よ!」
「い、いや、別人かもしれないだろう? もう一度その写真を見せてくれないか?」
写真を取り上げようとするつもりだろうが、そうはさせるものか。
「言っておきますけどね、この写真を取り上げようとしても無駄よ。ネガは私が持っているの。いくらでも現像出来るんですからね」
「そ、そんな……」
フリッツの慌てふためいている様子を見れば、恐らく婚約破棄をするつもりなはいのだろう。単なる遊びだということなのだろうか?
だが、私は2人を許すわけにはいかない。
「とりあえず、メラニーさんには慰謝料を要求するつもりだから彼女に良く伝えておいいてね」
「い、慰謝料だって!?」
「当然じゃない。彼女は婚約者がいる相手に手を出したのよ。しかも男爵令嬢という格下の身分で! 当然慰謝料を支払わせるわ」
「いくら何でも、それはやりすぎだと思わないか?」
フリッツは余程メラニーが大切なのだろうか? 彼女をかばうような言い方が気に食わない。
「言っておきますけど、私の父も大変激怒しているのよ」
「ひっ!」
この言葉に青ざめるフリッツ。
まぁ、それは当然だろう。父は泣く子も黙る軍人貴族として有名なのだから。
「それなりの誠意を見せてもらわなければ、フリッツの両親にも報告させてもらうから。この写真を使ってね」
「そ、それなりの誠意って……?」
「そんなことは自分で考えて頂戴。それじゃ、中休みも終わるから私は教室に戻るわ」
「ええ!? こ、こんな中途半端な状態で!?」
情けない声をあげるフリッツに返事もせずに、私は背を向けて歩き始めた。
舞台は整った。
後は最後の仕上げをするだけだ。
フリッツとの付き合いは長いので、十分私の性格を知り尽くしている。
きっと私の次の行動を見抜いているはずだ。
「フフフ……面白いことになりそうだわ」
私は足取り軽やかに、自分の教室へと戻っていった――
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