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第6話

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――翌日

私はフリッツの浮気証拠写真をカバンに入れて登校した。

「フッフッフッ……あの2人、どう料理してあげようかしら」

結局昨日は1日部屋に閉じこもり、どんな方法が一番フリッツとメラニーを懲らしめるのか妙案が思い浮かばなかった。
おかげで、本日は少々寝不足気味だった。

「ふわぁ~……眠いわ……」

欠伸を噛み殺し、校舎に向って歩いていたその時。

「おはよう、ロッテ」

背後から声をかけられ、肩をポンと叩かれた。

「ひゃあ!」

驚いて思わず変な声が出てしまう。

「あ! ごめんなさい、驚かせてしまったかしら!」

声をかけてきたのはアリシア様で、申し訳無さそうに謝ってきた。

「いえ! そんなことありません。ただ今日は少々眠気があって、それで少し驚いてしまっただけですから」

「あら? 寝不足なの? 何かあったの?」

並んで歩きながらアリシア様が心配そうな表情を浮かべる。

「い、いえ。特に何もありませんけど」

本当はフリッツのことで色々頭を悩ますことがあるけれども、それを今アリシア様の前で言うわけにはいかない。
何しろ話をするには時間が足りなさすぎる。

「そうだわ、生徒会室にとっておきのコーヒーがあるの。昼休みに飲みにいらっしゃいよ。きっと眠気も覚めるわ」

ナイスな提案をしてくるアリシア様。

「本当ですか!? 行きます! 生徒会室にお邪魔させていただきます!」

「フフフ、待ってるわね。それじゃ、私はこっちの校舎だから。また後でね」

「はい、お昼休みにまたお会いしましょう!」

私は元気良く手を振ると、自分の教室へ向った。
偶然アリシア様に会えて良かった。そのおかげで、フリッツをどう料理してやろうか妙案が浮かんだのだから。


 私は自分の教室へ行く前に、まず最初にメラニーの教室を訪ねた。
幸い? なことにメラニーは私と同学年で同じ校舎。授業開始までは後10分ある。それだけあれば用件を伝えるには十分だろう。


 メラニーのいる教室を覗いていると、顔見知りの女子生徒が私に気付いてい声をかけたきた。

「あら? ロッテさんじゃない。うちのクラスに何か用?」

「ええ。ちょっとメラニーさんを捜しているのよ」

「あ、メラニーさんならほら。窓際の席に座っているわよ」

その言葉に窓際に視線を移すと、2人の男子生徒たちと笑顔で会話している姿があった。

「何? 一体どういうこと?」

フリッツだけでは飽き足らず、他の男子生徒にもちょっかいだしているのだろうか?
すると私の呟きが聞こえたのだろう。

「彼女は転校してまだ3ヶ月程だし……あまり女子生徒の間では評判が良くないのよ。男子生徒の間では、あんな感じだけど」

「そうなの、なら彼女は悪女決定ね。教えてくれてありがとう」

「え? 悪女?」

戸惑う彼女に礼を述べると、私はズカズカと教室の中に入っていった。
すると私の気配に気付いたのか、2人の男子生徒とメラニーが顔をこちらに向ける。

「メラニーさん。少しお話がしたいのだけど、良いかしら?」

「え? あなたはどなた?」

キョトンとした顔で私を見上げるメラニー。
なるほど、転校生と言うだけのことはある。私のことを知らないというわけだ。

「君はBクラスのブライスじゃないか」
「俺達のクラスに何の用だよ」

けれど私は外野を無視し、メラニーに話しかける。

「あなたは私のことを知らないようだけど、私はあなたをよーく知っているわよ?」

そして、おもむろにカバンの中から1枚の写真を取り出して突きつけた。
写真に映るのは、メラニーとフリッツが同じボートに乗っている写真だった。

「「「あ!!!」」」

3人が同時に声をあげる。

「この人は3年のメンゲル先輩じゃないか?」
「メラニー、先輩とデートしたのか?」

一方のメラニーは顔を真っ赤にさせて私を責めてきた。

「こ、この写真どうしたの! まさか隠し撮りでもしたの!?」

「ええ、そうよ。メラニーさん。あなたはフリッツに婚約者がいることを知っているのかしら?」

私は写真をカバンに戻した。

「え……? こ、婚約者……?」

メラニーの顔が青ざめる。
まぁ、確かにフリッツに婚約者がいることを知っているのは極僅かだ。何しろ当事者があまり学内で知れ渡るのを良く思っていないので公言していないからなのだが。それが裏目に出てしまったのだろう。

「いくら知らなかったと言われても婚約者がいる男性とデートなんて、世間はどう思うかしら?」

「そ、それ……は……」

ガタガタ震えるメラニー。彼女は爵位の低い男爵令嬢、身の程は知っているはずだ。

「お、おい。行こうぜ」
「ああ、そうだな……」

メラニーの傍にいた男子生徒がコソコソとその場から立ち去る。恐らく巻き込まれたくは無かったのだろう。

「それじゃ、私も行くわ」

メラニーに背を向けると、背後から焦った声で呼び止められる。

「ええ!? ちょ、ちょっと! こんな中途半端な話で行ってしまうの!? 結論も出ないうちに!?」

「ええ。だって後5分で授業が始まってしまうもの。遅刻したくはないものね」

振り返り、それだけ告げると颯爽と教室を出て行った。

フッフッフッ……。

せいぜい、今日1日悩んで怯えるがいいわ。
よし、この調子で次の中休みはフリッツを直撃してやろう。

教室へ向かいながら、私は1人ほくそ笑んだ――
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