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75 今までの種明かし その3 ことの経緯
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キャロルと2人で部屋に入ると、彼女は言った。
「ねえ。お天気で気持ちがいいからテラスでお話ししない?」
「ええ、そうね。私もそれがいいと思うわ。」
そして私たちは2人でテラスに出て、ガーテンテーブルを前に向かい合わせに座った。
「そうねぇ・・・まずはどこから話をすればいいかしら・・・。」
キャロルは少し考え込みながら言った。
「出来れば最初からがいいわ。」
「そうよね?やっぱりテアがヘンリーと許婚関係になってしまったところからがいいわよね?」
「ええ、そうね。」
私は頷く。
「テアがあのヘンリーと許婚になってしまった話を手紙で知った時・・最初は応援していたのよ?でもヘンリーの話をテアから手紙で聞かされる度に・・何て嫌な男なんだろうって思うようになったのよ。テアは・・・おじさまやおばさまにはあまりヘンリーの話はしなかったでしょう?」
「え、ええ・・・確かにそうね?何だか恋愛の話って・・親には相談しずらくて・・。」
そうだ、もう私は初めから間違えていたのだ。初めて会った時、ヘンリーがハンサムだったからまだ幼かった私は一目ぼれをしてしまったのだった。だから彼にどんな理不尽な目に遭わされても・・これは2人の問題だからと両親には報告してこなかったのだ。本来なら親同士が決めた話なのだから報告するべきだったのに・・・。
私の考えていることが分かったのか、キャロルは肩をすくめながら言う。
「テアもおじさまも本当に人がいいわよね・・。でも、私はテアのそういう人がいいところが大好きなんだけど?」
言いながらキャロルは風になびく私の長い髪の毛を手に取ると、目を閉じてすーっと匂いを嗅ぐと笑みを浮かべた。
「フフフ・・テアの髪って・・いい香り。」
「ありがとう、キャロル。でも貴女の髪もとても素敵な香りよ?」
「本当?テア。フフ・・・嬉しいわ。」
キャロルは私の手に柔らかい指を絡ませると言った。
「キャロル。それで・・話の続きを教えてくれる?」
「ええ、いいわ。それでテアから手紙を貰う度・・だんだん心配になってしまったの。今までテアは片頭痛の持病なんか無かったのに、頻繁に片頭痛が起きてるって話も聞かされたし・・それに一番気になったのは・・テアがヘンリーに貢がされていたことよ。」
キャロルはギュッと私の手を握り締めると言った。
「み、貢ぐ・・・?」
「ええ、そうよ。どこかへ出かけるとき・・いつもお金を払っていたのはテアだったでしょう?辻馬車の代金だって・・食事代だって、何もかも・・ヘンリーがお金を払ったことはあったかしら?」
「そう言えば・・無かったわ。ヘンリーがいつも言ってたから。『誘った方が全額支払うのは当然だ。』って。私は一度もヘンリーから誘いを受けたことが無かったから・・。」
「そうなのよ!それが・・・ヘンリーの汚い手口だったのよ!だから私はまず最初にお母さんに相談したわ。そしたらお母さんがおばさまに話をしたのよ。そしてそこからおばさまが私に相談を持ち掛けてきたのよ。それでおばさまはおじさまに報告して、許嫁の関係を終わらせて欲しいって頼んだところ・・・おじさまが白状したのよ。実はお酒の席でテアとヘンリーを許婚に決めたわけではなく・・ヘンリーの父親の経営するカジノで莫大な借金を作ってしまって・・返済できなかったのね。それで代わりにテア、貴女をヘンリーの許嫁にすることで話をまとめてしまったんだって。」
その話・・改めて聞くとかなりショックだ。
「そうだったの・・お父さんがまさかカジノで・・ううん、それ以前にまさか子爵家でありながら・・・ヘンリーの家がカジノを経営していたなんて・・・。」
私はうつむくと、キャロルが言った。
「それで、おばさまは怒って・・おじさまを別の領地に追いやったのね。そこで必死に働いて借金を返せるようになるまで帰ってくるなと言って・・。」
「それにしても・・キャロルってすごく話を詳しく知っているのね?私は何も知らなったのに。」
思わず感心してしまった。
「ええ。この話は全てお母さんから聞かされたからよ?お母さんとおば様・・ほとんど毎日電話で話をしているし。おばさまはどうしてもテアには話せなかったのね・・。おじさまがカジノへ通っていた事、借金で自分の娘をヘンリーに差し出したこと・・。そのうえ、テアはヘンリーに虐げられている。だけど借金を返せなくて差し出しているから、相手に文句も言えない・・・・おばさまは相当ジレンマに陥っていたみたいよ?だから・・私から申し入れたの。テアを助ける手助けをさせて欲しいって。」
キャロルは私の瞳をじっと見つめた―。
「ねえ。お天気で気持ちがいいからテラスでお話ししない?」
「ええ、そうね。私もそれがいいと思うわ。」
そして私たちは2人でテラスに出て、ガーテンテーブルを前に向かい合わせに座った。
「そうねぇ・・・まずはどこから話をすればいいかしら・・・。」
キャロルは少し考え込みながら言った。
「出来れば最初からがいいわ。」
「そうよね?やっぱりテアがヘンリーと許婚関係になってしまったところからがいいわよね?」
「ええ、そうね。」
私は頷く。
「テアがあのヘンリーと許婚になってしまった話を手紙で知った時・・最初は応援していたのよ?でもヘンリーの話をテアから手紙で聞かされる度に・・何て嫌な男なんだろうって思うようになったのよ。テアは・・・おじさまやおばさまにはあまりヘンリーの話はしなかったでしょう?」
「え、ええ・・・確かにそうね?何だか恋愛の話って・・親には相談しずらくて・・。」
そうだ、もう私は初めから間違えていたのだ。初めて会った時、ヘンリーがハンサムだったからまだ幼かった私は一目ぼれをしてしまったのだった。だから彼にどんな理不尽な目に遭わされても・・これは2人の問題だからと両親には報告してこなかったのだ。本来なら親同士が決めた話なのだから報告するべきだったのに・・・。
私の考えていることが分かったのか、キャロルは肩をすくめながら言う。
「テアもおじさまも本当に人がいいわよね・・。でも、私はテアのそういう人がいいところが大好きなんだけど?」
言いながらキャロルは風になびく私の長い髪の毛を手に取ると、目を閉じてすーっと匂いを嗅ぐと笑みを浮かべた。
「フフフ・・テアの髪って・・いい香り。」
「ありがとう、キャロル。でも貴女の髪もとても素敵な香りよ?」
「本当?テア。フフ・・・嬉しいわ。」
キャロルは私の手に柔らかい指を絡ませると言った。
「キャロル。それで・・話の続きを教えてくれる?」
「ええ、いいわ。それでテアから手紙を貰う度・・だんだん心配になってしまったの。今までテアは片頭痛の持病なんか無かったのに、頻繁に片頭痛が起きてるって話も聞かされたし・・それに一番気になったのは・・テアがヘンリーに貢がされていたことよ。」
キャロルはギュッと私の手を握り締めると言った。
「み、貢ぐ・・・?」
「ええ、そうよ。どこかへ出かけるとき・・いつもお金を払っていたのはテアだったでしょう?辻馬車の代金だって・・食事代だって、何もかも・・ヘンリーがお金を払ったことはあったかしら?」
「そう言えば・・無かったわ。ヘンリーがいつも言ってたから。『誘った方が全額支払うのは当然だ。』って。私は一度もヘンリーから誘いを受けたことが無かったから・・。」
「そうなのよ!それが・・・ヘンリーの汚い手口だったのよ!だから私はまず最初にお母さんに相談したわ。そしたらお母さんがおばさまに話をしたのよ。そしてそこからおばさまが私に相談を持ち掛けてきたのよ。それでおばさまはおじさまに報告して、許嫁の関係を終わらせて欲しいって頼んだところ・・・おじさまが白状したのよ。実はお酒の席でテアとヘンリーを許婚に決めたわけではなく・・ヘンリーの父親の経営するカジノで莫大な借金を作ってしまって・・返済できなかったのね。それで代わりにテア、貴女をヘンリーの許嫁にすることで話をまとめてしまったんだって。」
その話・・改めて聞くとかなりショックだ。
「そうだったの・・お父さんがまさかカジノで・・ううん、それ以前にまさか子爵家でありながら・・・ヘンリーの家がカジノを経営していたなんて・・・。」
私はうつむくと、キャロルが言った。
「それで、おばさまは怒って・・おじさまを別の領地に追いやったのね。そこで必死に働いて借金を返せるようになるまで帰ってくるなと言って・・。」
「それにしても・・キャロルってすごく話を詳しく知っているのね?私は何も知らなったのに。」
思わず感心してしまった。
「ええ。この話は全てお母さんから聞かされたからよ?お母さんとおば様・・ほとんど毎日電話で話をしているし。おばさまはどうしてもテアには話せなかったのね・・。おじさまがカジノへ通っていた事、借金で自分の娘をヘンリーに差し出したこと・・。そのうえ、テアはヘンリーに虐げられている。だけど借金を返せなくて差し出しているから、相手に文句も言えない・・・・おばさまは相当ジレンマに陥っていたみたいよ?だから・・私から申し入れたの。テアを助ける手助けをさせて欲しいって。」
キャロルは私の瞳をじっと見つめた―。
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