73 / 77
73 今までの種明かし その1 ヘンリーの成敗
しおりを挟む
「お待ちなさいっ!!」
扉を大きく開いて、部屋の中に入ってきたのは他でもない母だった。右手には何か束になった書類のようなものを持っている。
「お母さんっ?!」
「ゲッ!マ、マダム・・ッ!」
「テアを離しなさいよっ!この薄汚いサギ野郎のドラ息子がっ!」
続いて部屋に現れたのは私の大切な親友キャロルだった。おおよそ貴族令嬢とは思えぬ口調でヘンリーをののしる姿はたくましかった。
「キャロルッ!」
私は涙目でキャロルの名を呼んだ。
「キャ、キャロル・・ッ!」
ヘンリーは明らかに狼狽した様子で私の肩から手を外した。
「テアッ!こっちよ!」
キャロルが手を伸ばした。
「キャロルッ!」
私は必至でキャロルの元へ走った。
「ま、待て!行くなよっ!テアッ!」
ヘンリーが追いかけてこようとしたところに母が叫んだ。
「その薄汚い手で勝手に娘に触るんじゃないっ!」
キャロルの胸に飛び込み、母を振り向いた。するとあろうことか、母はいつの間にか両手にダーツを持って構えていた。
え?ダーツ?!
そして―
ヒュッ!
ヒュッ!
眼にも止まらぬ早業でヘンリーめがけてダーツを投げる!
ダーツの弓はヘンリーの髪の毛と頬スレスレを通り越して後方の壁に、トスッ!トスッ!と突き刺さった。
えええっ?!う、嘘でしょうっ?!
「ヒエエエエエッ!!」
ヘンリーは自分が危うくダーツの的にされかけたことで情けないくらいの悲鳴を上げてその場にへたり込んでしまった。
「さすが、おばさま。毎年ダーツの大会で優勝しているだけの腕前だわ。」
キャロルはパチパチと手を叩いて喜んでいる。
「え・・?キャロル・・・お母さんがダーツをやる事・・知っていたの・・?」
娘の私すら知らなかったのに?!
「ええ、勿論よ。私の母とテアのお母さんは子供の頃からの親友で、互いにダーツのライバル同士だったのだから。ただ、テアのお母さんは嫁ぎ先からおしとやかにするように言われていたから・・テアにも内緒にしていたのね。毎年夏休みに実家に遊びに来ていたのもダーツの練習が目的だったのよ?」
「そ・・・そうだった・・・の・・・?」
なんてことだろう。母の特技をこんな形で知る事になるとは思わなかった。一方、母はヘンリーをネチネチ問い詰めていた。
「ヘンリー。良くも娘に酷い事をしてくれたわね?ようやく作戦通りにテアがお前に興味を無くしてくれたと思えば、今度は何を血迷ったかテアに近づいてくるなんてね?」
「え・・・?作戦通り・・・?」
これも一体何の事やらさっぱりだった。するとキャロルが私の手を握り締めてくると言った。
「ごめんね・・・テア。貴女に内緒にしてた事があるのだけど・・今から正直に話すわ・・・。でも、私を嫌わないでくれる?」
キャロルは申し訳なさそうな目で私を見つめてきた。だから私は言う。
「私がキャロルを嫌うはずないでしょう?だって貴女は私にとって大切な人だもの。」
「本当!嬉しいっ!大好きよ、テアッ!」
キャロルは私に思いきり抱きついてきた。
「私も・・・キャロルが大好きよ。」
そっとキャロルの背中をなでると、ヘンリーの情けない声が聞こえてきた。
「う、嘘だろう・・?テア・・お、お前・・そっちの趣味だったのか・・?」
するとキャロルが私を抱きしめたまま言った。
「うるさいわね!人を好きになるのに性別なんか関係ないんだからね!最も・・本気で人を好きになったことのないヘンリーには分からないでしょうけど?」
「な、なんだよっ!そ、そういうキャロルだって・・俺とデートしてるときまんざらでもなかっただろう?!」
「バッカね~!まだ分からないの?!演技よ!え・ん・ぎ!テアからあんたを引きはがすためのねっ!言っておくけど私はあんたなんかミジンコ程にも興味を持っていないんだからっ!」
「ミ・・・ミジンコ・・そ、そんなぁ・・・。」
がっくりするヘンリーに母の容赦ない言葉が降り注ぐ。
「お前のようなクズ男に大切な一人娘を渡すわけにいかないからね・・私がキャロルに頼んだのよ。テアがお前に興味を無くすように協力してほしいって。」
「え・・?そう・・だったの・・・?」
ようやく今までの謎が少しずつ解け始めた―。
扉を大きく開いて、部屋の中に入ってきたのは他でもない母だった。右手には何か束になった書類のようなものを持っている。
「お母さんっ?!」
「ゲッ!マ、マダム・・ッ!」
「テアを離しなさいよっ!この薄汚いサギ野郎のドラ息子がっ!」
続いて部屋に現れたのは私の大切な親友キャロルだった。おおよそ貴族令嬢とは思えぬ口調でヘンリーをののしる姿はたくましかった。
「キャロルッ!」
私は涙目でキャロルの名を呼んだ。
「キャ、キャロル・・ッ!」
ヘンリーは明らかに狼狽した様子で私の肩から手を外した。
「テアッ!こっちよ!」
キャロルが手を伸ばした。
「キャロルッ!」
私は必至でキャロルの元へ走った。
「ま、待て!行くなよっ!テアッ!」
ヘンリーが追いかけてこようとしたところに母が叫んだ。
「その薄汚い手で勝手に娘に触るんじゃないっ!」
キャロルの胸に飛び込み、母を振り向いた。するとあろうことか、母はいつの間にか両手にダーツを持って構えていた。
え?ダーツ?!
そして―
ヒュッ!
ヒュッ!
眼にも止まらぬ早業でヘンリーめがけてダーツを投げる!
ダーツの弓はヘンリーの髪の毛と頬スレスレを通り越して後方の壁に、トスッ!トスッ!と突き刺さった。
えええっ?!う、嘘でしょうっ?!
「ヒエエエエエッ!!」
ヘンリーは自分が危うくダーツの的にされかけたことで情けないくらいの悲鳴を上げてその場にへたり込んでしまった。
「さすが、おばさま。毎年ダーツの大会で優勝しているだけの腕前だわ。」
キャロルはパチパチと手を叩いて喜んでいる。
「え・・?キャロル・・・お母さんがダーツをやる事・・知っていたの・・?」
娘の私すら知らなかったのに?!
「ええ、勿論よ。私の母とテアのお母さんは子供の頃からの親友で、互いにダーツのライバル同士だったのだから。ただ、テアのお母さんは嫁ぎ先からおしとやかにするように言われていたから・・テアにも内緒にしていたのね。毎年夏休みに実家に遊びに来ていたのもダーツの練習が目的だったのよ?」
「そ・・・そうだった・・・の・・・?」
なんてことだろう。母の特技をこんな形で知る事になるとは思わなかった。一方、母はヘンリーをネチネチ問い詰めていた。
「ヘンリー。良くも娘に酷い事をしてくれたわね?ようやく作戦通りにテアがお前に興味を無くしてくれたと思えば、今度は何を血迷ったかテアに近づいてくるなんてね?」
「え・・・?作戦通り・・・?」
これも一体何の事やらさっぱりだった。するとキャロルが私の手を握り締めてくると言った。
「ごめんね・・・テア。貴女に内緒にしてた事があるのだけど・・今から正直に話すわ・・・。でも、私を嫌わないでくれる?」
キャロルは申し訳なさそうな目で私を見つめてきた。だから私は言う。
「私がキャロルを嫌うはずないでしょう?だって貴女は私にとって大切な人だもの。」
「本当!嬉しいっ!大好きよ、テアッ!」
キャロルは私に思いきり抱きついてきた。
「私も・・・キャロルが大好きよ。」
そっとキャロルの背中をなでると、ヘンリーの情けない声が聞こえてきた。
「う、嘘だろう・・?テア・・お、お前・・そっちの趣味だったのか・・?」
するとキャロルが私を抱きしめたまま言った。
「うるさいわね!人を好きになるのに性別なんか関係ないんだからね!最も・・本気で人を好きになったことのないヘンリーには分からないでしょうけど?」
「な、なんだよっ!そ、そういうキャロルだって・・俺とデートしてるときまんざらでもなかっただろう?!」
「バッカね~!まだ分からないの?!演技よ!え・ん・ぎ!テアからあんたを引きはがすためのねっ!言っておくけど私はあんたなんかミジンコ程にも興味を持っていないんだからっ!」
「ミ・・・ミジンコ・・そ、そんなぁ・・・。」
がっくりするヘンリーに母の容赦ない言葉が降り注ぐ。
「お前のようなクズ男に大切な一人娘を渡すわけにいかないからね・・私がキャロルに頼んだのよ。テアがお前に興味を無くすように協力してほしいって。」
「え・・?そう・・だったの・・・?」
ようやく今までの謎が少しずつ解け始めた―。
53
お気に入りに追加
3,571
あなたにおすすめの小説
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
不遇な王妃は国王の愛を望まない
ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 そうは言いつつも間違ってランキング入りしてしまった感が否めないのも確かです💦 それでも目に留めてくれた読者様には感謝致します✨
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。
※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷
【完結】愛され公爵令嬢は穏やかに微笑む
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
恋愛
「シモーニ公爵令嬢、ジェラルディーナ! 私はお前との婚約を破棄する。この宣言は覆らぬと思え!!」
婚約者である王太子殿下ヴァレンテ様からの突然の拒絶に、立ち尽くすしかありませんでした。王妃になるべく育てられた私の、存在価値を否定するお言葉です。あまりの衝撃に意識を手放した私は、もう生きる意味も分からくなっていました。
婚約破棄されたシモーニ公爵令嬢ジェラルディーナ、彼女のその後の人生は思わぬ方向へ転がり続ける。優しい彼女の功績に助けられた人々による、恩返しが始まった。まるで童話のように、受け身の公爵令嬢は次々と幸運を手にしていく。
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2022/10/01 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、二次選考通過
2022/07/29 FUNGUILD、Webtoon原作シナリオ大賞、一次選考通過
2022/02/15 小説家になろう 異世界恋愛(日間)71位
2022/02/12 完結
2021/11/30 小説家になろう 異世界恋愛(日間)26位
2021/11/29 アルファポリス HOT2位
2021/12/03 カクヨム 恋愛(週間)6位
愛されない花嫁は初夜を一人で過ごす
リオール
恋愛
「俺はお前を妻と思わないし愛する事もない」
夫となったバジルはそう言って部屋を出て行った。妻となったアルビナは、初夜を一人で過ごすこととなる。
後に夫から聞かされた衝撃の事実。
アルビナは夫への復讐に、静かに心を燃やすのだった。
※シリアスです。
※ざまあが行き過ぎ・過剰だといったご意見を頂戴しております。年齢制限は設定しておりませんが、お読みになる場合は自己責任でお願い致します。
あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。
ふまさ
恋愛
楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。
でも。
愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。
私の愛した婚約者は死にました〜過去は捨てましたので自由に生きます〜
みおな
恋愛
大好きだった人。
一目惚れだった。だから、あの人が婚約者になって、本当に嬉しかった。
なのに、私の友人と愛を交わしていたなんて。
もう誰も信じられない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる