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67 貴方は誰?
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私が男性を見つめると彼は笑みを浮かべたまま立ち上がり、言った。
「とりあえず外に出ようか?」
「は、はい・・・。」
一体この男性は誰なのだろう・・?聞きたいことは山ほどあったけれどもまずは男性の言う通りこの会場から出た方がよさそうだ
出入口を見ると人が大勢連なってぞろぞろと会場の外へ出いく姿が見えた。
「こんなに人が来ていたのね・・・。」
独り言のようにぽつりと言うと私の言葉が聞こえていたのか、彼が私の耳元に口を寄せると言った。
「それはそうだよ。このコンサートはとても人気があるからね。事前にチケットがなければ入場できなかったよ。前売り券だけで完売してしまったからね。」
「え?」
その言葉に驚いて振り向く。すると彼が言った。
「危ないから会場に出るまでは前を向いていた方がいいよ。」
「は、はい。」
彼に言われて、私は再び前を向いた。そしてゆっくり人の流れに沿って歩きながら先ほどの彼の言葉の意味を考えていた。
・・・一体これはどういう事なのだろう。前売り券だけで完売?それではキャロルは初めから私だけをこのコンサート会場に来るようにしていたのだろうか?そしてこの男性は偶然私の隣に座った・・・?でも、彼は私の名前を知っていた。という事は初めから私と彼がこの会場で出会うように細工されていた・・?でも、一体何の為に?彼とキャロルは知り合いなのだろうか・・・?
悶々とした頭を抱えながら劇場の外へ出ると彼がすぐに私の隣に並んできて声を掛けてきた。
「テア、今日はこの後何か用事でもあるの?」
「いいえ、特にありません。」
その声の掛け方があまりにも自然で、私も普通に答えていた。
「本当?それじゃこの大通りを行った先には噴水のある大きな公園があるんだ。今日は祝日だからそこで大道芸や屋台のお店が沢山出ているから、僕と一緒に行こう。」
そしていきなり手をつないできた。
「え?!キャアッ!」
思わず驚いて手を振りほどいてしまうと、彼は悲し気な顔で私を見た。
「・・もしかして・・嫌だった?」
「え、あ・あの。嫌だというよりは驚いて・・・。」
すると彼はニッコリ笑みを浮かべた。
「それじゃ嫌だというわけじゃないんだね?」
そして再び私の右手を握り締めると言った。
「さぁ、行こう。」
そして公園に向かって歩き出す。
「あ、あの・・・!」
どうして?!私は知らない男性と手をつないで歩いているのだろう?頭の中はすっかり混乱していた。大体私は今まで異性とこんな風に手をつないで歩いたことがない。私とヘンリーは許婚同士だったけれども、そんな関係ではなかったし、男友達はたくさんいたけれどもただの友達だから手なんか当然つないだことは無い。なのにこの男性は初対面なのに、いきなり手をつないでくるのだから。
それにしても・・・手をつなぎながら私の隣を歩く男性を改めて見つめた。ヘンリーよりもずっと高い背。金の巻き毛に青い瞳はキャロルを思わせる。そして大きくて・・暖かい手・・。ヘンリーは出かける時、私の隣を歩いてくれたことは一度も無かった。いつも私の数歩前を歩き・・・私は彼の背中ばかりを寂しい気持ちで見つめていた。なのに・・・。この男性は・・。
それに初めてとは思えない、この安心感は一体何だろう・・・・?
****
「今日は本当にお天気に恵まれて良かったな~・・・。こうやってテアと出かけられるんだから。」
公園に向かって歩きながら彼は私を見下ろし、笑顔で言う。
「は、はい。ところでそろそろ貴方の事を教えて頂けませんか?貴方は誰ですか?どうして私の事を知っているのですか?」
「僕の名前はカルロス・ブレイクだよ。年齢はテアと同じ18歳。」
彼はカルロスと名乗ったけれども、私の記憶に彼の名前は無い。
「あ、あの・・・すみません。やっぱりその名前聞き覚えがないのですけど・・。」
するとカルロスが怪訝そうに眉をひそめながら言う。
「テア、年齢は君と同じなんだから・・・敬語なんか使わないでよ。」
「え、ええ・・・。分かったわ・・。」
どうもキャロルと雰囲気が似ていると、つい断れなくなってしまった。
「それは良かった・・・ほら、公園に着いたよ。」
いつの間にか私たちは公園の入り口に立っていた。目の前に広がる綺麗な公園にはベンチが並べられ、多くの屋台が軒をつらてねている。綺麗に整えられた芝生の奥には大きな池があり、ボート乗り場が遠くの方に見えている。
「行こう、テア。」
彼は笑顔で私に言うと、公園へ足を踏み入れた―。
「とりあえず外に出ようか?」
「は、はい・・・。」
一体この男性は誰なのだろう・・?聞きたいことは山ほどあったけれどもまずは男性の言う通りこの会場から出た方がよさそうだ
出入口を見ると人が大勢連なってぞろぞろと会場の外へ出いく姿が見えた。
「こんなに人が来ていたのね・・・。」
独り言のようにぽつりと言うと私の言葉が聞こえていたのか、彼が私の耳元に口を寄せると言った。
「それはそうだよ。このコンサートはとても人気があるからね。事前にチケットがなければ入場できなかったよ。前売り券だけで完売してしまったからね。」
「え?」
その言葉に驚いて振り向く。すると彼が言った。
「危ないから会場に出るまでは前を向いていた方がいいよ。」
「は、はい。」
彼に言われて、私は再び前を向いた。そしてゆっくり人の流れに沿って歩きながら先ほどの彼の言葉の意味を考えていた。
・・・一体これはどういう事なのだろう。前売り券だけで完売?それではキャロルは初めから私だけをこのコンサート会場に来るようにしていたのだろうか?そしてこの男性は偶然私の隣に座った・・・?でも、彼は私の名前を知っていた。という事は初めから私と彼がこの会場で出会うように細工されていた・・?でも、一体何の為に?彼とキャロルは知り合いなのだろうか・・・?
悶々とした頭を抱えながら劇場の外へ出ると彼がすぐに私の隣に並んできて声を掛けてきた。
「テア、今日はこの後何か用事でもあるの?」
「いいえ、特にありません。」
その声の掛け方があまりにも自然で、私も普通に答えていた。
「本当?それじゃこの大通りを行った先には噴水のある大きな公園があるんだ。今日は祝日だからそこで大道芸や屋台のお店が沢山出ているから、僕と一緒に行こう。」
そしていきなり手をつないできた。
「え?!キャアッ!」
思わず驚いて手を振りほどいてしまうと、彼は悲し気な顔で私を見た。
「・・もしかして・・嫌だった?」
「え、あ・あの。嫌だというよりは驚いて・・・。」
すると彼はニッコリ笑みを浮かべた。
「それじゃ嫌だというわけじゃないんだね?」
そして再び私の右手を握り締めると言った。
「さぁ、行こう。」
そして公園に向かって歩き出す。
「あ、あの・・・!」
どうして?!私は知らない男性と手をつないで歩いているのだろう?頭の中はすっかり混乱していた。大体私は今まで異性とこんな風に手をつないで歩いたことがない。私とヘンリーは許婚同士だったけれども、そんな関係ではなかったし、男友達はたくさんいたけれどもただの友達だから手なんか当然つないだことは無い。なのにこの男性は初対面なのに、いきなり手をつないでくるのだから。
それにしても・・・手をつなぎながら私の隣を歩く男性を改めて見つめた。ヘンリーよりもずっと高い背。金の巻き毛に青い瞳はキャロルを思わせる。そして大きくて・・暖かい手・・。ヘンリーは出かける時、私の隣を歩いてくれたことは一度も無かった。いつも私の数歩前を歩き・・・私は彼の背中ばかりを寂しい気持ちで見つめていた。なのに・・・。この男性は・・。
それに初めてとは思えない、この安心感は一体何だろう・・・・?
****
「今日は本当にお天気に恵まれて良かったな~・・・。こうやってテアと出かけられるんだから。」
公園に向かって歩きながら彼は私を見下ろし、笑顔で言う。
「は、はい。ところでそろそろ貴方の事を教えて頂けませんか?貴方は誰ですか?どうして私の事を知っているのですか?」
「僕の名前はカルロス・ブレイクだよ。年齢はテアと同じ18歳。」
彼はカルロスと名乗ったけれども、私の記憶に彼の名前は無い。
「あ、あの・・・すみません。やっぱりその名前聞き覚えがないのですけど・・。」
するとカルロスが怪訝そうに眉をひそめながら言う。
「テア、年齢は君と同じなんだから・・・敬語なんか使わないでよ。」
「え、ええ・・・。分かったわ・・。」
どうもキャロルと雰囲気が似ていると、つい断れなくなってしまった。
「それは良かった・・・ほら、公園に着いたよ。」
いつの間にか私たちは公園の入り口に立っていた。目の前に広がる綺麗な公園にはベンチが並べられ、多くの屋台が軒をつらてねている。綺麗に整えられた芝生の奥には大きな池があり、ボート乗り場が遠くの方に見えている。
「行こう、テア。」
彼は笑顔で私に言うと、公園へ足を踏み入れた―。
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