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64 夢の中の少年
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「あら。テア・・・お風呂から上がったのね?」
電話を切った母が笑みを浮かべて私を見る。
「え、ええ・・。あ、あの・・・今の電話・・ヘンリーからだったんじゃ・・・?」
すると母はにべもなく言った。
「いいのよ、貴女がわざわざ対応するほどの男ではないわ。」
「ええ、そうよ。テア。それじゃ、2人でお部屋に行って沢山お話しましょうよ。ほら、おばさまからこんな素敵なワイン頂いちゃったんだから。」
キャロルは嬉しそうにワインを見せてきた。
「フフフ・・・2人の為にこのワインを用意しておいたのよ。それじゃ2人ともおやすみなさい。私もお風呂に入ってくることにするから。」
「はーい。おやすみなさい。それじゃ、行きましょう?テア。」
「え、ええ・・・。」
私は先ほどのキャロルと母の話がどうにも気になっていたが、彼女の無邪気な笑顔を見ていれば、もうどうでもいい気持になってきたので、2人で仲良く私の部屋へと向かった―。
****
2人でワインを飲みながら色々な話をした。毎年子供の頃から夏休みにキャロルの家に遊びに行って過ごした楽しかった日々・・そして大学での話・・・。徐々に私たちは深酒になり・・話はいつの間にか恋の話になっていた。
ワインで頭が朦朧となりながら私はキャロルに尋ねた。
「ねえ~・・キャロル。貴女はそれだけ美人なのだから・・好きな人はいないの?」
するとキャロルが答えた。
「私にはね・・・ずっと昔から好きな人がいるんだけど・・・その人には昔から好きな人がいて・・・絶対私の事は振り向いてはくれないのよ。でもその人の好きな相手がまともな人だったら良かったのに・・とんでもない人間だったのよ。」
「え・・?そうなの・・?」
知らなかった・・・キャロルがそんな辛い恋をしているなんて・・。
「でもね、最近その好きな人はようやく相手がろくな人間ではない事に気が付いて・・別れを決意してくれたのよ。」
「それは良かったわね!チャンスじゃない!告白すればいいのに・・え?」
すると何故かキャロルは私の頬にするりと右手を添えるとグイッと顔を近づけてきた。
「何?キャロル。」
「ねえ・・・テア?私の顔・・どう思う?」
「キャロルの顔?そうね・・・とても美人だと思うわ。」
「美人・・・。」
何故か少し落胆した声で言うキャロル。何故だろう・・美人という言葉は好きではないのだろうか?
「あ、でも・・キャロルの顔は好きよ?とても。」
すると、途端にキャロルがパアッと笑顔を見せた。
「本当?!嬉しいっ!」
そして大げさなくらいに喜ぶと、ごろりとベッドに横になった。
「ふ~・・・何だかワイン飲みすぎちゃったかしら・・。眠くなってきちゃったわ・・。」
キャロルは目を閉じた。
「そうね、それじゃ寝ましょうか?」
するとキャロルが言った。
「ねえ、テア・・・今夜は貴女と一緒のベッドで寝てもいいかしら?」
「ええ、いいわよ。私・・寝相はいいから。じゃあ、一緒に寝ましょう。」
そして私は部屋の明かりを消して回り・・ベッドサイドの明かりを灯した頃には・・キャロルは目を閉じていた。
「おやすみなさい、キャロル・・・。」
そして私も眠っているキャロルの隣に潜り込み・・・ワインのせいか、すぐに眠りについた―。
眠りに落ちる寸前にある言葉を聞きながら・・・。
****
私は夢を見ていた。まだ随分昔・・・小さな子供の頃の夢を―。
< 待ってよ~〇〇〇〇~!>
私は誰かを追いかけていた。
< アハハハ・・・早くおいでよ、テア。 >
まぶしい太陽の下、振り向いたのは金の髪の巻き毛の男の子。白い半そでのシャツに青い半ズボンを履いた男の子は麦わら帽子に虫取り網を持って振り向く。
その時・・・
< キャアッ! >
石につまづいて転びそうになった。
< 危ない、テアッ! >
男の子がとっさに抱きとめてくれた。
< ありがとう・・。 >
すると男の子は言う。
< テアはちょっとドジなところがあるから・・僕がずっとそばにいて・・守ってあげるよ。将来・・僕のお嫁さんにしてあげるね? >
< 本当? 〇〇〇〇?>
<うん。本当。待ってて、テア。大人になったら必ず迎えに行くからね・・。 >
< 約束ね? 〇〇〇〇・・。 >
< うん。2人だけの約束だよ・・・。 >
そして私と男の子は指切りをした・・・。
男の子の顔は・・・最後まで思い出すことは出来なかった―。
電話を切った母が笑みを浮かべて私を見る。
「え、ええ・・。あ、あの・・・今の電話・・ヘンリーからだったんじゃ・・・?」
すると母はにべもなく言った。
「いいのよ、貴女がわざわざ対応するほどの男ではないわ。」
「ええ、そうよ。テア。それじゃ、2人でお部屋に行って沢山お話しましょうよ。ほら、おばさまからこんな素敵なワイン頂いちゃったんだから。」
キャロルは嬉しそうにワインを見せてきた。
「フフフ・・・2人の為にこのワインを用意しておいたのよ。それじゃ2人ともおやすみなさい。私もお風呂に入ってくることにするから。」
「はーい。おやすみなさい。それじゃ、行きましょう?テア。」
「え、ええ・・・。」
私は先ほどのキャロルと母の話がどうにも気になっていたが、彼女の無邪気な笑顔を見ていれば、もうどうでもいい気持になってきたので、2人で仲良く私の部屋へと向かった―。
****
2人でワインを飲みながら色々な話をした。毎年子供の頃から夏休みにキャロルの家に遊びに行って過ごした楽しかった日々・・そして大学での話・・・。徐々に私たちは深酒になり・・話はいつの間にか恋の話になっていた。
ワインで頭が朦朧となりながら私はキャロルに尋ねた。
「ねえ~・・キャロル。貴女はそれだけ美人なのだから・・好きな人はいないの?」
するとキャロルが答えた。
「私にはね・・・ずっと昔から好きな人がいるんだけど・・・その人には昔から好きな人がいて・・・絶対私の事は振り向いてはくれないのよ。でもその人の好きな相手がまともな人だったら良かったのに・・とんでもない人間だったのよ。」
「え・・?そうなの・・?」
知らなかった・・・キャロルがそんな辛い恋をしているなんて・・。
「でもね、最近その好きな人はようやく相手がろくな人間ではない事に気が付いて・・別れを決意してくれたのよ。」
「それは良かったわね!チャンスじゃない!告白すればいいのに・・え?」
すると何故かキャロルは私の頬にするりと右手を添えるとグイッと顔を近づけてきた。
「何?キャロル。」
「ねえ・・・テア?私の顔・・どう思う?」
「キャロルの顔?そうね・・・とても美人だと思うわ。」
「美人・・・。」
何故か少し落胆した声で言うキャロル。何故だろう・・美人という言葉は好きではないのだろうか?
「あ、でも・・キャロルの顔は好きよ?とても。」
すると、途端にキャロルがパアッと笑顔を見せた。
「本当?!嬉しいっ!」
そして大げさなくらいに喜ぶと、ごろりとベッドに横になった。
「ふ~・・・何だかワイン飲みすぎちゃったかしら・・。眠くなってきちゃったわ・・。」
キャロルは目を閉じた。
「そうね、それじゃ寝ましょうか?」
するとキャロルが言った。
「ねえ、テア・・・今夜は貴女と一緒のベッドで寝てもいいかしら?」
「ええ、いいわよ。私・・寝相はいいから。じゃあ、一緒に寝ましょう。」
そして私は部屋の明かりを消して回り・・ベッドサイドの明かりを灯した頃には・・キャロルは目を閉じていた。
「おやすみなさい、キャロル・・・。」
そして私も眠っているキャロルの隣に潜り込み・・・ワインのせいか、すぐに眠りについた―。
眠りに落ちる寸前にある言葉を聞きながら・・・。
****
私は夢を見ていた。まだ随分昔・・・小さな子供の頃の夢を―。
< 待ってよ~〇〇〇〇~!>
私は誰かを追いかけていた。
< アハハハ・・・早くおいでよ、テア。 >
まぶしい太陽の下、振り向いたのは金の髪の巻き毛の男の子。白い半そでのシャツに青い半ズボンを履いた男の子は麦わら帽子に虫取り網を持って振り向く。
その時・・・
< キャアッ! >
石につまづいて転びそうになった。
< 危ない、テアッ! >
男の子がとっさに抱きとめてくれた。
< ありがとう・・。 >
すると男の子は言う。
< テアはちょっとドジなところがあるから・・僕がずっとそばにいて・・守ってあげるよ。将来・・僕のお嫁さんにしてあげるね? >
< 本当? 〇〇〇〇?>
<うん。本当。待ってて、テア。大人になったら必ず迎えに行くからね・・。 >
< 約束ね? 〇〇〇〇・・。 >
< うん。2人だけの約束だよ・・・。 >
そして私と男の子は指切りをした・・・。
男の子の顔は・・・最後まで思い出すことは出来なかった―。
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