許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました

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63 母とキャロルの密談

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 その日の夜・・・私とキャロル、母の3人で楽しいディナーの時間を過ごした。そしてキャロルがお風呂に入りに行っている間に私はリビングでヘンリーとの今日の出来事を母に報告した。


「そう、それじゃヘンリーには自分の意志は伝えたのね?」

私たちの前には大理石のテーブルがあり、その上にはフルーツの乗った皿が置かれている。

「ええ。でもヘンリーは・・許婚は解消しないと言ってきたのよ。私の事は好きでも何でもないのに・・・余程大学で孤立するのが嫌なのだと思ったわ。かといって自分から積極的に友達を作れるタイプでもないし・・。ヘンリーにもう少し社交性があれば私も彼から解放されるのだろうけど・・・。」

思わずため息をついてしまった。すると母が皿の上からブルーベリーをつまみ、口にいれて飲み込むと言った。

「安心なさい、テア。もうすぐヘンリーは嫌でも貴女と許婚の解消をせざるを得なくなるから。とりあえず・・・お父さんからの報告を待ちましょう。」

まただ。また母は私の分からないことを話す。

「ねえ、お母さん。その話なんだけど・・。」

その時・・・

コンコン

ノックの音がして扉がカチャリと開かれた。

「ああ~いいお湯だったわ。」

キャロルは長く美しい金の髪をバスタオルで拭きながら部屋の中へと入ってきた。彼女のナイトドレスはとても可愛らしいデザインドレスだった。

「まあ、キャロル。素敵なナイトドレスね。」

私の言葉にキャロルはほほを染めると言った。

「そう?このお屋敷にお泊りできるのが嬉しくて、新しいのを買ったのよ。ね、後でパジャマパーティーしましょうよ。」

キャロルが嬉しそうに手を握り締めてきた。

「ええ、そうね。それじゃ私もお風呂に行ってくるわ。」

「そうね。行ってらっしゃい。」

「行ってらっしゃい。」

母とキャロルが交互に言った―。



****

約40分後―

「ふぅ~・・・いいお湯だった・・。」

ナイトドレスに着替えた私はリビングへ向かう為に長い廊下を歩いていた。そしてリビングルームの扉の前に立ってノックをしようとしたとき、キャロルと母の会話が聞こえてきた。

「・・・そう、それじゃ彼も・・協力してくれているのね?」

「ええ。もちろんです。おばさま。・・他ならぬテアの為ですもの・・・。」

え?協力・・・私の為・・?彼・・?一体何の事だろう?

「それで・・マイルズ家には何も気づかれていないのでしょうね?」

マイルズ家・・ヘンリーの事だ・・。

「ええ、ばれたら逃亡されてしまうかもしないので、その辺は注意していると報告を受けています。」

キャロルのいつになく真剣な声が聞こえてくる。それにしても・・・ばれたら逃亡?報告?ますます私はわけが分からなくなってしまった。一体私の知らないところで何が行われているというのだろう・・。だんだん不安な気持ちになっているとキャロルの声が聞こえてきた。

「おばさま、私はテアが大好きだから・・・絶対に幸せになってもらいたいの。だから・・今回テアが自分からヘンリーを捨てる気持ちになってくれて・・本当にうれしかったんです。これでテアをようやく・・。」

え?私を・・何?思わず扉に耳を押し付けた時・・・。

ジリリリリリ・・・!

リビングの電話が突然なりだした。

「!」

緊張しきっていた私は危うく悲鳴が漏れそうになり、慌てて口を押えた。


「はい、もしもし?」

母が電話に応対する声が聞こえる。

「まぁ、ヘンリー?」

え?ヘンリー?!

思わず私は扉を開けてリビングの中へ入ってしまった。

「あら、お風呂から上がったのね?テア。」

キャロルが屈託のない笑顔で私を見る。

「え、ええ・・・。」

そしてチラリと母の様子を見た。母は右手を腰に当て、電話に出ている。

「は?テアを電話に出して欲しい?何を図々しい事を言っているのかしら?・・え?生卵をぶつけられた・・・・謝罪の言葉?!ふざけないで頂戴っ!それ以上ガタガタ言うなら今度こそ本物のダーツの的にしてやるわよっ?!」

え?!本物のダーツの的っ?!思わずその光景を頭に浮かべてしまった。

そして驚く私の目の前で母はがちゃんと電話を切った―。


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