61 / 77
61 生卵命中!
しおりを挟む
ヘンリーの顔が怒りか、羞恥の為か・・・顔が真っ赤になっている。
「ヘンリー・・・。こんな言い方しては傷つけるかもしれないけれど・・・今の貴方の性格を直さない限りは・・多分恋人は出来ないと思うわ。」
いくら顔が良くたって、性格が最悪なら大抵の女性は敬遠するだろう。すると何を勘違いしたか・・・ヘンリーはにやりと笑うと言った。
「は?何だ・・その言い方は。そうか、分かったぞ・・・?テア、お前俺に恋人が出来て欲しくないからそんな言い方をするんだろう?別にいいぞ?お前がこの俺に恋人を作らないで欲しいって頼めば大学を卒業するまでは恋人を作らないでおいてやろう。そのかわり・・俺の事をちゃんと尊重しろよ?」
どこをどう解釈すればそういう話になるのだろう。これ以上話してもらちが明かないと思った。
「もう・・いいわ。ヘンリー。貴方との許嫁の関係はこれで終わり。そして・・後はもう二度と私やキャロルに付きまとわないで。・・迷惑だから。」
「!!」
私の言葉にヘンリーは肩をビクリとさせてうつむいた。
「それじゃあね・・・ヘンリー。」
それだけ伝えると、私はヘンリーに背を向けた。本当はもっと彼に言っておきたい言葉はあったけれども・・・仮にも一度は好きになった相手なのだ。これ以上何か言うのはもうやめよう。そう思って・・歩き始めると、ヘンリーが叫んだ。
「テアッ!悪かった・・・今までの事は謝罪するから・・・俺を捨てないでくれよっ!」
ヘンリーの言葉にギョッとした私は思わず振り向くともの凄い形相でこちらに向かって歩いてきている姿が目に入った。
「テアッ!危ないっ!逃げてっ!」
その時、私の知り合いの女子学生が叫んだ。彼女は他に3人の女子学生と一緒だったが、全員私とは顔見知りだった。どうやらずっと私とヘンリーのやり取りをはらはらしながら見ていたようだった。
「うるさいっ!俺とテアの話に口出しするなっ!」
ヘンリーがその女子学生を怒鳴りつけ、今度は彼女たちの方へ向かって睨みつけながら歩いていく。
「キャアアッ!来ないでっ!」
「いやっ!ヘンリーが来たわっ!」
彼女たちは恐怖の為か、身動きできずに震えている。
駄目だ!ヘンリーを止めなければっ!私は生卵を取り出すと、すっかり頭に血が上っているヘンリーめがけて投げつけた。
「エイッ!」
ペシャッ!
見事に生卵はヘンリーの頭にぶつかり、割れて中身が飛び出し、べっとりヘンリーの頭についてしまった。
「あ、痛っ!」
そして怒りのまなざしで私を振り返った。
「テアッ!何するんだよっ!・・・ん?」
ヘンリーは頭を押さえた瞬間、異変に気付いたようだった。
「き、気色悪い・・・。な・・・何だ・・これは・・・?」
頭を押さえた手を外したヘンリーはぬるぬるした液体を見て・・。
「ぐわっ!く、臭いっ!」
激しく顔をそらせた。・・そこで私は思い出した。そういえば・・・ヘンリーは昔から生卵の匂いが苦手だった。まさかそのことを母が覚えていたなんて・・。
「テアッ!い、いったいこれは何だよっ!」
「生卵よ。」
「え・・?」
ヘンリーの顔がみるみる青ざめる。そしてそれを見守る大勢のギャラリーたち。
「うわあああっ!た、卵の匂いがぁっ!!」
余程ヘンリーは卵の匂いを取りたかったのか背後にあった噴水に頭から飛び込んでしまった。
ドボーンッ!!
派手な水音とともに、周囲で沸き起こる笑い声・・。そして私に声を掛けてきた女子学生が駆け寄ってきた。
「あ、ありがとう・・・テア・・・。おかげで助かったわ・・。」
「いいえ、お礼を言うのは私のほうよ。貴女が声を掛けてくれなければ・・・今頃どうなっていた事か・・・。」
そしてチラリとヘンリーに視線を移せば、彼は噴水から吹きでる水で必死に頭を洗っていた。・・・きっとあの分では学園長に呼び出されるだろう。
「テア・・・やっぱりヘンリーとは別れるべきよ。」
「ええ、そうね・・。」
私は彼女に同調するのだった―。
「ヘンリー・・・。こんな言い方しては傷つけるかもしれないけれど・・・今の貴方の性格を直さない限りは・・多分恋人は出来ないと思うわ。」
いくら顔が良くたって、性格が最悪なら大抵の女性は敬遠するだろう。すると何を勘違いしたか・・・ヘンリーはにやりと笑うと言った。
「は?何だ・・その言い方は。そうか、分かったぞ・・・?テア、お前俺に恋人が出来て欲しくないからそんな言い方をするんだろう?別にいいぞ?お前がこの俺に恋人を作らないで欲しいって頼めば大学を卒業するまでは恋人を作らないでおいてやろう。そのかわり・・俺の事をちゃんと尊重しろよ?」
どこをどう解釈すればそういう話になるのだろう。これ以上話してもらちが明かないと思った。
「もう・・いいわ。ヘンリー。貴方との許嫁の関係はこれで終わり。そして・・後はもう二度と私やキャロルに付きまとわないで。・・迷惑だから。」
「!!」
私の言葉にヘンリーは肩をビクリとさせてうつむいた。
「それじゃあね・・・ヘンリー。」
それだけ伝えると、私はヘンリーに背を向けた。本当はもっと彼に言っておきたい言葉はあったけれども・・・仮にも一度は好きになった相手なのだ。これ以上何か言うのはもうやめよう。そう思って・・歩き始めると、ヘンリーが叫んだ。
「テアッ!悪かった・・・今までの事は謝罪するから・・・俺を捨てないでくれよっ!」
ヘンリーの言葉にギョッとした私は思わず振り向くともの凄い形相でこちらに向かって歩いてきている姿が目に入った。
「テアッ!危ないっ!逃げてっ!」
その時、私の知り合いの女子学生が叫んだ。彼女は他に3人の女子学生と一緒だったが、全員私とは顔見知りだった。どうやらずっと私とヘンリーのやり取りをはらはらしながら見ていたようだった。
「うるさいっ!俺とテアの話に口出しするなっ!」
ヘンリーがその女子学生を怒鳴りつけ、今度は彼女たちの方へ向かって睨みつけながら歩いていく。
「キャアアッ!来ないでっ!」
「いやっ!ヘンリーが来たわっ!」
彼女たちは恐怖の為か、身動きできずに震えている。
駄目だ!ヘンリーを止めなければっ!私は生卵を取り出すと、すっかり頭に血が上っているヘンリーめがけて投げつけた。
「エイッ!」
ペシャッ!
見事に生卵はヘンリーの頭にぶつかり、割れて中身が飛び出し、べっとりヘンリーの頭についてしまった。
「あ、痛っ!」
そして怒りのまなざしで私を振り返った。
「テアッ!何するんだよっ!・・・ん?」
ヘンリーは頭を押さえた瞬間、異変に気付いたようだった。
「き、気色悪い・・・。な・・・何だ・・これは・・・?」
頭を押さえた手を外したヘンリーはぬるぬるした液体を見て・・。
「ぐわっ!く、臭いっ!」
激しく顔をそらせた。・・そこで私は思い出した。そういえば・・・ヘンリーは昔から生卵の匂いが苦手だった。まさかそのことを母が覚えていたなんて・・。
「テアッ!い、いったいこれは何だよっ!」
「生卵よ。」
「え・・?」
ヘンリーの顔がみるみる青ざめる。そしてそれを見守る大勢のギャラリーたち。
「うわあああっ!た、卵の匂いがぁっ!!」
余程ヘンリーは卵の匂いを取りたかったのか背後にあった噴水に頭から飛び込んでしまった。
ドボーンッ!!
派手な水音とともに、周囲で沸き起こる笑い声・・。そして私に声を掛けてきた女子学生が駆け寄ってきた。
「あ、ありがとう・・・テア・・・。おかげで助かったわ・・。」
「いいえ、お礼を言うのは私のほうよ。貴女が声を掛けてくれなければ・・・今頃どうなっていた事か・・・。」
そしてチラリとヘンリーに視線を移せば、彼は噴水から吹きでる水で必死に頭を洗っていた。・・・きっとあの分では学園長に呼び出されるだろう。
「テア・・・やっぱりヘンリーとは別れるべきよ。」
「ええ、そうね・・。」
私は彼女に同調するのだった―。
39
お気に入りに追加
3,549
あなたにおすすめの小説
「わかれよう」そうおっしゃったのはあなたの方だったのに。
友坂 悠
恋愛
侯爵夫人のマリエルは、夫のジュリウスから一年後の離縁を提案される。
あと一年白い結婚を続ければ、世間体を気にせず離婚できるから、と。
ジュリウスにとっては亡き父が進めた政略結婚、侯爵位を継いだ今、それを解消したいと思っていたのだった。
「君にだってきっと本当に好きな人が現れるさ。私は元々こうした政略婚は嫌いだったんだ。父に逆らうことができず君を娶ってしまったことは本当に後悔している。だからさ、一年後には離婚をして、第二の人生をちゃんと歩んでいくべきだと思うんだよ。お互いにね」
「わかりました……」
「私は君を解放してあげたいんだ。君が幸せになるために」
そうおっしゃるジュリウスに、逆らうこともできず受け入れるマリエルだったけれど……。
勘違い、すれ違いな夫婦の恋。
前半はヒロイン、中盤はヒーロー視点でお贈りします。
四万字ほどの中編。お楽しみいただけたらうれしいです。
【取り下げ予定】お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。
ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの?
……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。
彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ?
婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。
お幸せに、婚約者様。
私も私で、幸せになりますので。
記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話
甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。
王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。
その時、王子の元に一通の手紙が届いた。
そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。
王子は絶望感に苛まれ後悔をする。
婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。
アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。
いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。
だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・
「いつわたしが婚約破棄すると言った?」
私に飽きたんじゃなかったんですか!?
……………………………
たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!
婚約破棄されなかった者たち
ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。
令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。
第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。
公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。
一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。
その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。
ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
私との婚約は政略ですか?恋人とどうぞ仲良くしてください
稲垣桜
恋愛
リンデン伯爵家はこの王国でも有数な貿易港を領地内に持つ、王家からの信頼も厚い家門で、その娘の私、エリザベスはコゼルス侯爵家の二男のルカ様との婚約が10歳の時に決まっていました。
王都で暮らすルカ様は私より4歳年上で、その時にはレイフォール学園の2年に在籍中。
そして『学園でルカには親密な令嬢がいる』と兄から聞かされた私。
学園に入学した私は仲良さそうな二人の姿を見て、自分との婚約は政略だったんだって。
私はサラサラの黒髪に海のような濃紺の瞳を持つルカ様に一目惚れをしたけれど、よく言っても中の上の容姿の私が婚約者に選ばれたことが不思議だったのよね。
でも、リンデン伯爵家の領地には交易港があるから、侯爵家の家業から考えて、領地内の港の使用料を抑える為の政略結婚だったのかな。
でも、実際にはルカ様にはルカ様の悩みがあるみたい……なんだけどね。
※ 誤字・脱字が多いと思います。ごめんなさい。
※ あくまでもフィクションです。
※ ゆるふわ設定のご都合主義です。
※ 実在の人物や団体とは一切関係はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる