許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました

結城芙由奈@コミカライズ発売中

文字の大きさ
上 下
47 / 77

47 母への報告

しおりを挟む
「ブッ!!」

突然母が口に含んでいた紅茶を吹き出した。

「キャアッ!!だ、大丈夫?!お母さんっ!」

「ゴホッゴホッゴホッ!だ、大丈夫よ・・ちょっと驚いただけだから。」

激しく咳き込みながら母はナフキンで口元を拭きながら涙目で私を見た。

「テ、テア・・あ、貴女・・今何て言ったの?」

「え?私が何て言ったか・・?ヘンリーが好きな女性はキャロルって事?」

「違う、そこじゃないわ。その先の台詞よ。」

「ああ・・・キャロルもヘンリーの事が好きみたいって言った事?」

「そう、それよっ!」

母はビシッと私を指さしながら言った。

「ねぇ、その言葉・・・キャロルが言ったの?ヘンリーの事を好きだって?」

「まさか!キャロルはそんな事言わないわ。言えるはずないじゃない。だって・・・ヘンリーは私の許婚なんだから・・。私に気を遣って言えないのよ・・・。」

そう、私はヘンリーに良く思われていなかったのに、付きまとっていた。そしてキャロルはヘンリーに惹かれ・・気持ちを伝えたいはずなのに私がいるから告白できない・・。

「だから、私が2人の中を取り持ってあげようと思ったの。もし本当に2人がお互いの事を好きだと言う事が分ったら・・・許嫁の関係を終わらせようと思ってるのよ。その為の第一段階として、まずは私からヘンリーと距離を空ける・・そうすればキャロルもヘンリーに接近しやすくなるでしょう?」

「あのね・・テア。ヘンリーを許嫁の関係を終わらせるのは大いに賛成だけど・・本当にキャロルがヘンリーの事を好きだと思っているの?」

母が何故か呆れたような視線でこちらを見る。

「ええ、勿論よ。だって3人で馬車に乗った時だって・・ヘンリーとキャロルはとても仲良さげに話をしていたのよ。それこそ私の入る隙間も無い程に。でも・・・美男美女の組み合わせだったから・・まるで絵画のワンシーンみたいに素敵だったわ・・。」

うっとりしたように言う。

「あのね、テア。それには訳があって、実はキャロルは・・・。」

その時―

コンコン

ドアをノックする音が聞こえた。

「何か用かしら?」

母が返事をするとカチャリとダイニングルームのドアが開かれ、夜勤のメイドが顔を出して来た。

「あの・・・旦那様からお電話が入っておりますが・・。」

「まあ?あの人から?!やっと電話を掛けてきたわね・・。」

母は両手を組むと突然ボキボキと指を鳴らした。え・・?あ、あんな事・・・出来たの?戸惑う私の方を母は振り向くと言った。

「テア。ちゃんと残さず食べるのよ?」

「ハ、ハイ・・・・。」

私の返事を聞いた母は満足したように頷くと、つかつかと部屋を足早に出て行った。
その後ろ姿が・・酷く怒っているように見えたのは私の気のせいだろか・・?

 こうして私は1人、誰もいないダイニングルームで残りのサンドイッチを食べ終え・・・部屋へと帰って行った―。



****

 翌朝―

ジリジリジリジリ・・・・ッ!

7時にセットした目覚まし時計が鳴り、私はもぞもぞとベッドから手を伸ばしてベッドサイドに置かれた目覚まし時計をバチンと止めて、ゆっくり起き上がった。
そして、そっと右手首に触れると痛みはもうほとんど感じなくなっていた。

「良かった・・今日はもう三角巾で腕を吊る必要は無さそうだわ。」

私は朝の準備を始めた―。



 洋服を着替え終えたところでノックの音がした。

コンコン

「テア様、お目覚めになっていますか?」

メイドのマリの声だ。

「ええ、起きているわ。マリ、中に入って。」

「失礼致します。」

カチャリとドアが開き、マリは右手が自由になっている私を見ると驚きの声を上げた。

「まあ、テア様。もう腕の具合は良いのですか?」

「ええ、お陰様ですっかり良くなったわ。この分だと今日の講義は自分でノートを書き取りできそうだわ。」

「それは良かったですね。後は私がやりますね。」

「ありがとう、マリ。」

マリに朝の支度の続きをやってもらう事にした。


そして、その後意外な展開が私を待っていた―。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約者と養い親に不要といわれたので、幼馴染の側近と国を出ます

衿乃 光希
恋愛
卒業パーティーの最中、婚約者から突然婚約破棄を告げられたシェリーヌ。 婚約者の心を留めておけないような娘はいらないと、養父からも不要と言われる。 シェリーヌは16年過ごした国を出る。 生まれた時からの側近アランと一緒に・・・。 第18回恋愛小説大賞エントリーしましたので、第2部を執筆中です。 第2部祖国から手紙が届き、養父の体調がすぐれないことを知らされる。迷いながらも一時戻ってきたシェリーヌ。見舞った翌日、養父は天に召された。葬儀後、貴族の死去が相次いでいるという不穏な噂を耳にする。28日の更新で完結します。

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

初夜に大暴言を吐かれた伯爵夫人は、微笑みと共に我が道を行く ―旦那様、今更擦り寄られても困ります―

望月 或
恋愛
「お前の噂を聞いたぞ。毎夜町に出て男を求め、毎回違う男と朝までふしだらな行為に明け暮れているそうだな? その上糸目を付けず服や装飾品を買い漁り、多大な借金を背負っているとか……。そんな醜悪な女が俺の妻だとは非常に不愉快極まりない! 今後俺に話し掛けるな! 俺に一切関与するな! 同じ空気を吸ってるだけでとんでもなく不快だ……!!」 【王命】で決められた婚姻をし、ハイド・ランジニカ伯爵とオリービア・フレイグラント子爵令嬢の初夜は、彼のその暴言で始まった。 そして、それに返したオリービアの一言は、 「あらあら、まぁ」 の六文字だった。  屋敷に住まわせている、ハイドの愛人と噂されるユーカリや、その取巻きの使用人達の嫌がらせも何のその、オリービアは微笑みを絶やさず自分の道を突き進んでいく。 ユーカリだけを信じ心酔していたハイドだったが、オリービアが屋敷に来てから徐々に変化が表れ始めて…… ※作者独自の世界観満載です。違和感を感じたら、「あぁ、こういう世界なんだな」と思って頂けたら有難いです……。

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。

かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。 ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。 二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

【完結】他人に優しい婚約者ですが、私だけ例外のようです

白草まる
恋愛
婚約者を放置してでも他人に優しく振る舞うダニーロ。 それを不満に思いつつも簡単には婚約関係を解消できず諦めかけていたマルレーネ。 二人が参加したパーティーで見知らぬ令嬢がマルレーネへと声をかけてきた。 「単刀直入に言います。ダニーロ様と別れてください」

そんなに妹が好きなら死んであげます。

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』 フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。 それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。 そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。 イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。 異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。 何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……

手放したくない理由

ねむたん
恋愛
公爵令嬢エリスと王太子アドリアンの婚約は、互いに「務め」として受け入れたものだった。貴族として、国のために結ばれる。 しかし、王太子が何かと幼馴染のレイナを優先し、社交界でも「王太子妃にふさわしいのは彼女では?」と囁かれる中、エリスは淡々と「それならば、私は不要では?」と考える。そして、自ら婚約解消を申し出る。 話し合いの場で、王妃が「辛い思いをさせてしまってごめんなさいね」と声をかけるが、エリスは本当にまったく辛くなかったため、きょとんとする。その様子を見た周囲は困惑し、 「……王太子への愛は芽生えていなかったのですか?」 と問うが、エリスは「愛?」と首を傾げる。 同時に、婚約解消に動揺したアドリアンにも、側近たちが「殿下はレイナ嬢に恋をしていたのでは?」と問いかける。しかし、彼もまた「恋……?」と首を傾げる。 大人たちは、その光景を見て、教育の偏りを大いに後悔することになる。

処理中です...