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47 母への報告
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「ブッ!!」
突然母が口に含んでいた紅茶を吹き出した。
「キャアッ!!だ、大丈夫?!お母さんっ!」
「ゴホッゴホッゴホッ!だ、大丈夫よ・・ちょっと驚いただけだから。」
激しく咳き込みながら母はナフキンで口元を拭きながら涙目で私を見た。
「テ、テア・・あ、貴女・・今何て言ったの?」
「え?私が何て言ったか・・?ヘンリーが好きな女性はキャロルって事?」
「違う、そこじゃないわ。その先の台詞よ。」
「ああ・・・キャロルもヘンリーの事が好きみたいって言った事?」
「そう、それよっ!」
母はビシッと私を指さしながら言った。
「ねぇ、その言葉・・・キャロルが言ったの?ヘンリーの事を好きだって?」
「まさか!キャロルはそんな事言わないわ。言えるはずないじゃない。だって・・・ヘンリーは私の許婚なんだから・・。私に気を遣って言えないのよ・・・。」
そう、私はヘンリーに良く思われていなかったのに、付きまとっていた。そしてキャロルはヘンリーに惹かれ・・気持ちを伝えたいはずなのに私がいるから告白できない・・。
「だから、私が2人の中を取り持ってあげようと思ったの。もし本当に2人がお互いの事を好きだと言う事が分ったら・・・許嫁の関係を終わらせようと思ってるのよ。その為の第一段階として、まずは私からヘンリーと距離を空ける・・そうすればキャロルもヘンリーに接近しやすくなるでしょう?」
「あのね・・テア。ヘンリーを許嫁の関係を終わらせるのは大いに賛成だけど・・本当にキャロルがヘンリーの事を好きだと思っているの?」
母が何故か呆れたような視線でこちらを見る。
「ええ、勿論よ。だって3人で馬車に乗った時だって・・ヘンリーとキャロルはとても仲良さげに話をしていたのよ。それこそ私の入る隙間も無い程に。でも・・・美男美女の組み合わせだったから・・まるで絵画のワンシーンみたいに素敵だったわ・・。」
うっとりしたように言う。
「あのね、テア。それには訳があって、実はキャロルは・・・。」
その時―
コンコン
ドアをノックする音が聞こえた。
「何か用かしら?」
母が返事をするとカチャリとダイニングルームのドアが開かれ、夜勤のメイドが顔を出して来た。
「あの・・・旦那様からお電話が入っておりますが・・。」
「まあ?あの人から?!やっと電話を掛けてきたわね・・。」
母は両手を組むと突然ボキボキと指を鳴らした。え・・?あ、あんな事・・・出来たの?戸惑う私の方を母は振り向くと言った。
「テア。ちゃんと残さず食べるのよ?」
「ハ、ハイ・・・・。」
私の返事を聞いた母は満足したように頷くと、つかつかと部屋を足早に出て行った。
その後ろ姿が・・酷く怒っているように見えたのは私の気のせいだろか・・?
こうして私は1人、誰もいないダイニングルームで残りのサンドイッチを食べ終え・・・部屋へと帰って行った―。
****
翌朝―
ジリジリジリジリ・・・・ッ!
7時にセットした目覚まし時計が鳴り、私はもぞもぞとベッドから手を伸ばしてベッドサイドに置かれた目覚まし時計をバチンと止めて、ゆっくり起き上がった。
そして、そっと右手首に触れると痛みはもうほとんど感じなくなっていた。
「良かった・・今日はもう三角巾で腕を吊る必要は無さそうだわ。」
私は朝の準備を始めた―。
洋服を着替え終えたところでノックの音がした。
コンコン
「テア様、お目覚めになっていますか?」
メイドのマリの声だ。
「ええ、起きているわ。マリ、中に入って。」
「失礼致します。」
カチャリとドアが開き、マリは右手が自由になっている私を見ると驚きの声を上げた。
「まあ、テア様。もう腕の具合は良いのですか?」
「ええ、お陰様ですっかり良くなったわ。この分だと今日の講義は自分でノートを書き取りできそうだわ。」
「それは良かったですね。後は私がやりますね。」
「ありがとう、マリ。」
マリに朝の支度の続きをやってもらう事にした。
そして、その後意外な展開が私を待っていた―。
突然母が口に含んでいた紅茶を吹き出した。
「キャアッ!!だ、大丈夫?!お母さんっ!」
「ゴホッゴホッゴホッ!だ、大丈夫よ・・ちょっと驚いただけだから。」
激しく咳き込みながら母はナフキンで口元を拭きながら涙目で私を見た。
「テ、テア・・あ、貴女・・今何て言ったの?」
「え?私が何て言ったか・・?ヘンリーが好きな女性はキャロルって事?」
「違う、そこじゃないわ。その先の台詞よ。」
「ああ・・・キャロルもヘンリーの事が好きみたいって言った事?」
「そう、それよっ!」
母はビシッと私を指さしながら言った。
「ねぇ、その言葉・・・キャロルが言ったの?ヘンリーの事を好きだって?」
「まさか!キャロルはそんな事言わないわ。言えるはずないじゃない。だって・・・ヘンリーは私の許婚なんだから・・。私に気を遣って言えないのよ・・・。」
そう、私はヘンリーに良く思われていなかったのに、付きまとっていた。そしてキャロルはヘンリーに惹かれ・・気持ちを伝えたいはずなのに私がいるから告白できない・・。
「だから、私が2人の中を取り持ってあげようと思ったの。もし本当に2人がお互いの事を好きだと言う事が分ったら・・・許嫁の関係を終わらせようと思ってるのよ。その為の第一段階として、まずは私からヘンリーと距離を空ける・・そうすればキャロルもヘンリーに接近しやすくなるでしょう?」
「あのね・・テア。ヘンリーを許嫁の関係を終わらせるのは大いに賛成だけど・・本当にキャロルがヘンリーの事を好きだと思っているの?」
母が何故か呆れたような視線でこちらを見る。
「ええ、勿論よ。だって3人で馬車に乗った時だって・・ヘンリーとキャロルはとても仲良さげに話をしていたのよ。それこそ私の入る隙間も無い程に。でも・・・美男美女の組み合わせだったから・・まるで絵画のワンシーンみたいに素敵だったわ・・。」
うっとりしたように言う。
「あのね、テア。それには訳があって、実はキャロルは・・・。」
その時―
コンコン
ドアをノックする音が聞こえた。
「何か用かしら?」
母が返事をするとカチャリとダイニングルームのドアが開かれ、夜勤のメイドが顔を出して来た。
「あの・・・旦那様からお電話が入っておりますが・・。」
「まあ?あの人から?!やっと電話を掛けてきたわね・・。」
母は両手を組むと突然ボキボキと指を鳴らした。え・・?あ、あんな事・・・出来たの?戸惑う私の方を母は振り向くと言った。
「テア。ちゃんと残さず食べるのよ?」
「ハ、ハイ・・・・。」
私の返事を聞いた母は満足したように頷くと、つかつかと部屋を足早に出て行った。
その後ろ姿が・・酷く怒っているように見えたのは私の気のせいだろか・・?
こうして私は1人、誰もいないダイニングルームで残りのサンドイッチを食べ終え・・・部屋へと帰って行った―。
****
翌朝―
ジリジリジリジリ・・・・ッ!
7時にセットした目覚まし時計が鳴り、私はもぞもぞとベッドから手を伸ばしてベッドサイドに置かれた目覚まし時計をバチンと止めて、ゆっくり起き上がった。
そして、そっと右手首に触れると痛みはもうほとんど感じなくなっていた。
「良かった・・今日はもう三角巾で腕を吊る必要は無さそうだわ。」
私は朝の準備を始めた―。
洋服を着替え終えたところでノックの音がした。
コンコン
「テア様、お目覚めになっていますか?」
メイドのマリの声だ。
「ええ、起きているわ。マリ、中に入って。」
「失礼致します。」
カチャリとドアが開き、マリは右手が自由になっている私を見ると驚きの声を上げた。
「まあ、テア様。もう腕の具合は良いのですか?」
「ええ、お陰様ですっかり良くなったわ。この分だと今日の講義は自分でノートを書き取りできそうだわ。」
「それは良かったですね。後は私がやりますね。」
「ありがとう、マリ。」
マリに朝の支度の続きをやってもらう事にした。
そして、その後意外な展開が私を待っていた―。
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