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30 母への違和感
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そんな・・・まさか母の知り合いに見られていたなんて・・・。
自分の顔が青ざめていくのが分った。そんな私を母はじっと見つめると言った。
「ヘンリーの母親と親しくしている御婦人がお茶会に来ていたのよ・・。その御婦人から聞いたのよ?今から数日前に・・ヘンリーが金色の髪の見慣れない少女と親し気に動物園から出てきた姿を見たって。・・テア。まさか、その金色の髪の少女って・・・。」
駄目・・・。やっぱり母は騙せない・・。私は覚悟を決めて話をする事にした。
「あ、あのね。その金色の髪の少女って・・・キャロルの事なの。」
言った後唇を噛みしめて俯いた。お母さんに何て言われるのか・・怖かった。ただでさえ、お父さんと違ってお母さんはあまりヘンリーの事を良く思っていない。その上、キャロルとヘンリーが動物園から出てきた姿を他の知り合いの人から聞かされるなんて・・・。きっとお茶会の席で・・恥をかかせてしまったかもしれない。それどころかキャロルの事まで悪く思われたら?
ドキドキしながら母の次の言葉を待った。
「え・・・?ヘンリーと一緒にいた少女って・・キャロルだったの?」
てっきり怒られるかと思ったのに、母の反応は意外なものだった。怒りよりも戸惑いの表情が母の顔に浮かんでいた。
「え、ええ・・。キャロルだったの。実は、3人で一緒に動物園に行ったのだけど、その日はとても暑くて、持病の偏頭痛が起こってしまったの。だから2人だけで動物園に行って貰って、私は先に1人で帰って来たの。」
母に何か言われる前に、私は早口で一気に話した。
「そう・・・。だからキャロルとヘンリーは2人で動物園を見て回って・・出てきたところをたまたま・・私の知り合いの御婦人が見てしまったというわけね?」
「ええ、そうなの・・・。」
母の反応を見ながら返事をした。
「ふ~ん・・なるほど・・キャロルとヘンリーが・・・。・・・・・・ね。」
母は1人、納得したようにうなずき・・小声で何事が呟いた。
「え?お母さん?今・・何て言ったの?」
母のの最後の言葉が聞き取れず、私は聞きなおした。
「いいえ、何でもないわ。」
何故か首を振って否定する母。本当はもっと追求したかったけれども、私自身が怪我した本当の理由を明かしていないので、それ以上尋ねるのは諦める事にした。
「そう・・ならいいけど。」
そしてすっかり生ぬるくなってしまったハーブティーに口を付けた―。
****
その夜の事―
夜8時
夕食後、部屋で1人読書をしているとドアをノックする音が聞こえた。
コンコン
「はい、誰かしら?」
するとドア越しから声が聞こえてきた。
「お嬢様、私です。マリです。お嬢様にキャロル様から電話が入っております。」
「え?キャロルから?!」
何かあの後ヘンリーとあったのだろうか・・・。でもキャロルには帰りの馬車の件でお世話になったから、お礼を言いたいと思っていたので丁度良かった。
急いで椅子から降りるとドアへと向かった。カチャリとドアを開けると、そこにはメイドのマリが立っていた。
「あ、お嬢様。」
「ありがとう、マリ。呼びに来てくれて。」
「お電話はリビングの方に繋がっております。」
「分ったわ、すぐに向かうから。」
そして私は足早にリビングへと向かった―。
リビングへ行って、私は足を止めた。何やら中から話し声が聞こえてきている。
え・・?誰だろう・・・・?
よくみると、リビングのドアは少しだけ開いており、そこから母の声が漏れていたのだ。そして母は電話で話をしている。
もしかして、母はキャロルと話をしているのだろうか・・・?
そっとドアに近寄り、ノブに触れようとしたときに母の声が聞こえてきた。
「そう、キャロル。これからも・・あの事・・宜しく頼むわね?」
え?あの事・・・?あの事って一体何の事・・・?何だろう?何となく・・違和感を感じ・・ノブに触れる手がピタリと止まってしまった。
その時・・・母がパッと顔を上げて、こちらを見た。
「あ・・・。」
私は・・・母と視線が合ってしまった―。
自分の顔が青ざめていくのが分った。そんな私を母はじっと見つめると言った。
「ヘンリーの母親と親しくしている御婦人がお茶会に来ていたのよ・・。その御婦人から聞いたのよ?今から数日前に・・ヘンリーが金色の髪の見慣れない少女と親し気に動物園から出てきた姿を見たって。・・テア。まさか、その金色の髪の少女って・・・。」
駄目・・・。やっぱり母は騙せない・・。私は覚悟を決めて話をする事にした。
「あ、あのね。その金色の髪の少女って・・・キャロルの事なの。」
言った後唇を噛みしめて俯いた。お母さんに何て言われるのか・・怖かった。ただでさえ、お父さんと違ってお母さんはあまりヘンリーの事を良く思っていない。その上、キャロルとヘンリーが動物園から出てきた姿を他の知り合いの人から聞かされるなんて・・・。きっとお茶会の席で・・恥をかかせてしまったかもしれない。それどころかキャロルの事まで悪く思われたら?
ドキドキしながら母の次の言葉を待った。
「え・・・?ヘンリーと一緒にいた少女って・・キャロルだったの?」
てっきり怒られるかと思ったのに、母の反応は意外なものだった。怒りよりも戸惑いの表情が母の顔に浮かんでいた。
「え、ええ・・。キャロルだったの。実は、3人で一緒に動物園に行ったのだけど、その日はとても暑くて、持病の偏頭痛が起こってしまったの。だから2人だけで動物園に行って貰って、私は先に1人で帰って来たの。」
母に何か言われる前に、私は早口で一気に話した。
「そう・・・。だからキャロルとヘンリーは2人で動物園を見て回って・・出てきたところをたまたま・・私の知り合いの御婦人が見てしまったというわけね?」
「ええ、そうなの・・・。」
母の反応を見ながら返事をした。
「ふ~ん・・なるほど・・キャロルとヘンリーが・・・。・・・・・・ね。」
母は1人、納得したようにうなずき・・小声で何事が呟いた。
「え?お母さん?今・・何て言ったの?」
母のの最後の言葉が聞き取れず、私は聞きなおした。
「いいえ、何でもないわ。」
何故か首を振って否定する母。本当はもっと追求したかったけれども、私自身が怪我した本当の理由を明かしていないので、それ以上尋ねるのは諦める事にした。
「そう・・ならいいけど。」
そしてすっかり生ぬるくなってしまったハーブティーに口を付けた―。
****
その夜の事―
夜8時
夕食後、部屋で1人読書をしているとドアをノックする音が聞こえた。
コンコン
「はい、誰かしら?」
するとドア越しから声が聞こえてきた。
「お嬢様、私です。マリです。お嬢様にキャロル様から電話が入っております。」
「え?キャロルから?!」
何かあの後ヘンリーとあったのだろうか・・・。でもキャロルには帰りの馬車の件でお世話になったから、お礼を言いたいと思っていたので丁度良かった。
急いで椅子から降りるとドアへと向かった。カチャリとドアを開けると、そこにはメイドのマリが立っていた。
「あ、お嬢様。」
「ありがとう、マリ。呼びに来てくれて。」
「お電話はリビングの方に繋がっております。」
「分ったわ、すぐに向かうから。」
そして私は足早にリビングへと向かった―。
リビングへ行って、私は足を止めた。何やら中から話し声が聞こえてきている。
え・・?誰だろう・・・・?
よくみると、リビングのドアは少しだけ開いており、そこから母の声が漏れていたのだ。そして母は電話で話をしている。
もしかして、母はキャロルと話をしているのだろうか・・・?
そっとドアに近寄り、ノブに触れようとしたときに母の声が聞こえてきた。
「そう、キャロル。これからも・・あの事・・宜しく頼むわね?」
え?あの事・・・?あの事って一体何の事・・・?何だろう?何となく・・違和感を感じ・・ノブに触れる手がピタリと止まってしまった。
その時・・・母がパッと顔を上げて、こちらを見た。
「あ・・・。」
私は・・・母と視線が合ってしまった―。
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