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26 周囲の反応
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教室へ戻ると既に廊下の窓からオリエンテーションが始まっている様子が見えた。皆誰もが教授の話を真剣に聞いている。
「何だか恥ずかしいわ・・・ただでさえ遅れて教室に入るだけでも目立つのに、こんな状態で中に入るなんて・・・。」
私は思った通りの事を口にした。
「大丈夫、テア。俺が一緒なんだから平気だ。それに今、俺が座っている席は一番ドアに近い場所なんだ。2人でそこに一緒に座ればいい。」
「ありがとう、ニコル。心強いわ。」
私は正直な気持ちを述べた。
「よし、それじゃ中へ入ろう。」
ニコルはドアをガチャリと開けた。
教室の中へ入った途端、一斉にクラスメイトの視線が集まり、ざわめきが起こる。そして私は見てしまった。ヘンリーが私を見た瞬間、驚きの表情から・・怒りに満ちた目で私を睨みつけるのを。
ああ・・やっぱり私の予想した通りの反応だった。一方のキャロルは驚いた様子で目を見開いてこちらを見ている。
「どうしたんだね?2人とも・・君、それにその怪我は?」
年配の男性教授は私を見るとすぐに尋ねてきた。するとニコルが代わりに答えた。
「遅れて申し訳ございません。彼女は本日ある事が原因で右手首を怪我してしまいました。その為に医務室へ行ってきたのです。」
「ある事・・?」
教授が首を捻る。
「申し訳ございません。これ以上の事は彼女のプライバシーにかかわる事なのでお答えできません。」
ニコルは妙に思わせぶりな言い方をする。
「なるほど・・よし、分かった。2人ともまずは席に着きなさい。」
教授に言われた私たちはニコルが話していた席に2人で座った。それを見届けた教授は再びオリエンテーションの話を再開した―。
*****
オリエンテーリングが終了し、今日の私達の入学初日の日程は全て終了した。
「ありがとう、ニコル。今日は色々貴方のお陰で助かったわ。」
笑みを浮かべて隣の席に座るニコルにお礼を言った。
「いや、そんなことは無いよ。ほら、それより・・・見てごらん。」
ニコルが視線を移したので、私も同じ方向を見て驚いた。何とヘンリーがキャロルを残して私のカバンを持ってすごい勢いでこちらへ向かって歩いてきているからだ。
「何だろうね?彼の様子は・・怒っているのか、それとも・・。」
その直後、ヘンリーは私たちの席にたどり着いた。手には私の学生カバンを持っている。
「テアッ!」
その声は・・・やはり怒りに満ちていた。するとその途端、帰り支度をしていた学生たちがざわめいた。
「おい・・・聞いたか・・?」
「やっぱり噂は本当だったのね・・・?」
「仮にも女子にあんな乱暴な言葉使うなんて・・。」
「誰?あの人・・・。」
「あいつ・・最低だな。」
最低・・・特にその言葉が大きく聞こえた。途端にヘンリーの表情が変わる。身体が一瞬硬直し・・・次に露骨な作り笑いをして私に言った。
「どうしたんだ?テア。その怪我は・・・。驚いたよ。いなくなったと思えば、そんな状態で戻って来るんだから。」
ヘンリーは今までにない位柔和な態度で私に接してきた。
「決まっているだろう?それだけ酷い怪我だったんだよ。ところで何しに彼女のところへ来たんだ?」
「君は・・誰だ?」
ジロリとヘンリーはニコルを見る。
「俺はニコル・オットマンだ。外部からの新入生だよ。よろしく、ヘンリー・マイルズ?」
するとピクリとヘンリーの眉が動いた。
「俺を・・知ってるのか?」
「当たり前だろう?クラスメイトなんだから。それに・・・今の君はすっかり有名人みたいだしな?」
「おい・・それは一体どういう意味だ?」
「別に・・・ところで何しにここへ来たんだい?今までさんざん彼女を放置していたくせに。」
ニコルは私をチラリと見ながらヘンリーに言う。
「ああ、それは・・。」
そして私を見た。
「テアに学生カバンを持ってきたからだ。」
ヘンリーは片腕が不自由な私にカバンを突き出してきた—。
「何だか恥ずかしいわ・・・ただでさえ遅れて教室に入るだけでも目立つのに、こんな状態で中に入るなんて・・・。」
私は思った通りの事を口にした。
「大丈夫、テア。俺が一緒なんだから平気だ。それに今、俺が座っている席は一番ドアに近い場所なんだ。2人でそこに一緒に座ればいい。」
「ありがとう、ニコル。心強いわ。」
私は正直な気持ちを述べた。
「よし、それじゃ中へ入ろう。」
ニコルはドアをガチャリと開けた。
教室の中へ入った途端、一斉にクラスメイトの視線が集まり、ざわめきが起こる。そして私は見てしまった。ヘンリーが私を見た瞬間、驚きの表情から・・怒りに満ちた目で私を睨みつけるのを。
ああ・・やっぱり私の予想した通りの反応だった。一方のキャロルは驚いた様子で目を見開いてこちらを見ている。
「どうしたんだね?2人とも・・君、それにその怪我は?」
年配の男性教授は私を見るとすぐに尋ねてきた。するとニコルが代わりに答えた。
「遅れて申し訳ございません。彼女は本日ある事が原因で右手首を怪我してしまいました。その為に医務室へ行ってきたのです。」
「ある事・・?」
教授が首を捻る。
「申し訳ございません。これ以上の事は彼女のプライバシーにかかわる事なのでお答えできません。」
ニコルは妙に思わせぶりな言い方をする。
「なるほど・・よし、分かった。2人ともまずは席に着きなさい。」
教授に言われた私たちはニコルが話していた席に2人で座った。それを見届けた教授は再びオリエンテーションの話を再開した―。
*****
オリエンテーリングが終了し、今日の私達の入学初日の日程は全て終了した。
「ありがとう、ニコル。今日は色々貴方のお陰で助かったわ。」
笑みを浮かべて隣の席に座るニコルにお礼を言った。
「いや、そんなことは無いよ。ほら、それより・・・見てごらん。」
ニコルが視線を移したので、私も同じ方向を見て驚いた。何とヘンリーがキャロルを残して私のカバンを持ってすごい勢いでこちらへ向かって歩いてきているからだ。
「何だろうね?彼の様子は・・怒っているのか、それとも・・。」
その直後、ヘンリーは私たちの席にたどり着いた。手には私の学生カバンを持っている。
「テアッ!」
その声は・・・やはり怒りに満ちていた。するとその途端、帰り支度をしていた学生たちがざわめいた。
「おい・・・聞いたか・・?」
「やっぱり噂は本当だったのね・・・?」
「仮にも女子にあんな乱暴な言葉使うなんて・・。」
「誰?あの人・・・。」
「あいつ・・最低だな。」
最低・・・特にその言葉が大きく聞こえた。途端にヘンリーの表情が変わる。身体が一瞬硬直し・・・次に露骨な作り笑いをして私に言った。
「どうしたんだ?テア。その怪我は・・・。驚いたよ。いなくなったと思えば、そんな状態で戻って来るんだから。」
ヘンリーは今までにない位柔和な態度で私に接してきた。
「決まっているだろう?それだけ酷い怪我だったんだよ。ところで何しに彼女のところへ来たんだ?」
「君は・・誰だ?」
ジロリとヘンリーはニコルを見る。
「俺はニコル・オットマンだ。外部からの新入生だよ。よろしく、ヘンリー・マイルズ?」
するとピクリとヘンリーの眉が動いた。
「俺を・・知ってるのか?」
「当たり前だろう?クラスメイトなんだから。それに・・・今の君はすっかり有名人みたいだしな?」
「おい・・それは一体どういう意味だ?」
「別に・・・ところで何しにここへ来たんだい?今までさんざん彼女を放置していたくせに。」
ニコルは私をチラリと見ながらヘンリーに言う。
「ああ、それは・・。」
そして私を見た。
「テアに学生カバンを持ってきたからだ。」
ヘンリーは片腕が不自由な私にカバンを突き出してきた—。
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