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24 助けに来てくれた人
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パタパタパタパタ・・・ッ
背後から駆け足が近づいてきた。
「君、大丈夫かい?」
突然声を掛けられて驚いて振り向くと、そこにはランチの時にお世話になった彼が心配そうな顔で私を見下ろしていた。
「え・・・?貴方は・・・?」
すると彼は言った。
「気付かなかったかな?俺と君は同じクラスメイトだったんだけど。」
「え?そうだったんですかっ?!」
ヘンリーとキャロルの事ばかりに気を取られていたので、全く気付かなかった。
「行こう。連れて行ってあげるよ。」
彼は私の前に回り込むとしゃがんだ。
「え・・?」
戸惑っていると彼は言った。
「怪我・・痛いんだろう?医務室に行くんだよね?連れ行ってあげるよ。」
「だけど・・それではご迷惑では・・。」
すると彼は言った。
「遠慮する事はないさ。これから1年間クラスメイトになるわけだし・・同級生なんだから敬語も無しだ。テア。」
「え・・?ど、どうして私の名前を・・?」
「それは・・・。」
彼は苦笑しながら言う。
「あれだけ大きな声で互いの名前を呼び合っていれば・・覚えてしまうさ。」
「あ・・・わ、私達・・そうとう目立っていたのね・・・?」
赤面しながら言うと、彼はクスリと笑った。
「ほら、早く行こう。」
「それじゃ・・お言葉に甘えて・・・。」
私は彼の背中に身を預けると、彼は私の膝を抱えて軽々と立ち上がった。
「よし、行こう。」
「ええ・・お願い。」
そして彼は私をおんぶしたまま歩き出した。
「どう?痛まないかい?」
彼は背中の上にいる私を気遣って声を掛けて来る。
「ええ・・・大丈夫。それにしても・・・クラスの人達から注目されていたなんて・・すごく恥ずかしいわ・・。」
「いや。そんな事は無いさ。むしろ・・いい方向へ流れていると思うよ?」
「え?」
彼の話している言葉の意味が分からなかった。
「あの・・それはどういう意味なのかしら・・?」
「つまり・・クラスメイト達は・・君達3人の会話を聞いて・・あの男は何て身勝手な男なのだろうと、もう噂し始めているんだよ。入学初日だって言うのに・・彼の評判は既にがた落ちだ。」
「え・・?」
「クラスの皆は・・テア。君に同情しているよ。それに君と彼は付属の高校から大学へ進学してきているんだろう。どうやら彼は高校時代からあまり評判が良くなかったみたいだね?だからより一層テアへの同情が集まっている。君に酷い態度を取ればとるほどにね?」
知らなかった・・・。それではヘンリーは自分で自分の首を絞めているのだろうか・・?
「テア。その怪我だって・・恐らく彼にやられたんだろう?ヘンリーに・・。」
「は、はい・・でも彼には悪気は・・・。」
「悪気があろうとなかろうと・・・女性にそんな怪我を負わす男はろくな奴じゃないさ。悪いことは言わない。彼からは離れたほうがいい。」
「ええ・・・。」
勿論、彼に言われるまでも無く・・・私はヘンリーの心がキャロルに向いていると言う事を知ってしまったから・・・ゆくゆくは離れるつもりだった。そして、私は一つ重要な事を忘れていた。
「あ、そう言えば・・・私の名前はテア・オルソンと言うの。貴方の名前を教えてくれる?」
「俺?俺の名前はニコル・オットマンだ。よろしく、テア。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
そこまで会話したとき・・・。
「よし、着いたよ。」
ニコルに言われて顔を上げると、そこは先ほど訪れた医務室だった。ニコルは私を背中に背負ったままドア越しから呼びかけた。
「すみませんっ!いらっしゃいますか?」
すると・・・
カチャリ
医務室のドアが開き、先ほどの先生が顔をのぞかせた。
「何だい?病人か怪我人でも出たのか?」
先生はニコルを見た後、視線を私に移した。
「あれ・・?君は・・?」
「すみません・・・また治療をお願い出来ますか・・?」
私はニコルの背中の上で赤面しならがら先生にお願いした―。
背後から駆け足が近づいてきた。
「君、大丈夫かい?」
突然声を掛けられて驚いて振り向くと、そこにはランチの時にお世話になった彼が心配そうな顔で私を見下ろしていた。
「え・・・?貴方は・・・?」
すると彼は言った。
「気付かなかったかな?俺と君は同じクラスメイトだったんだけど。」
「え?そうだったんですかっ?!」
ヘンリーとキャロルの事ばかりに気を取られていたので、全く気付かなかった。
「行こう。連れて行ってあげるよ。」
彼は私の前に回り込むとしゃがんだ。
「え・・?」
戸惑っていると彼は言った。
「怪我・・痛いんだろう?医務室に行くんだよね?連れ行ってあげるよ。」
「だけど・・それではご迷惑では・・。」
すると彼は言った。
「遠慮する事はないさ。これから1年間クラスメイトになるわけだし・・同級生なんだから敬語も無しだ。テア。」
「え・・?ど、どうして私の名前を・・?」
「それは・・・。」
彼は苦笑しながら言う。
「あれだけ大きな声で互いの名前を呼び合っていれば・・覚えてしまうさ。」
「あ・・・わ、私達・・そうとう目立っていたのね・・・?」
赤面しながら言うと、彼はクスリと笑った。
「ほら、早く行こう。」
「それじゃ・・お言葉に甘えて・・・。」
私は彼の背中に身を預けると、彼は私の膝を抱えて軽々と立ち上がった。
「よし、行こう。」
「ええ・・お願い。」
そして彼は私をおんぶしたまま歩き出した。
「どう?痛まないかい?」
彼は背中の上にいる私を気遣って声を掛けて来る。
「ええ・・・大丈夫。それにしても・・・クラスの人達から注目されていたなんて・・すごく恥ずかしいわ・・。」
「いや。そんな事は無いさ。むしろ・・いい方向へ流れていると思うよ?」
「え?」
彼の話している言葉の意味が分からなかった。
「あの・・それはどういう意味なのかしら・・?」
「つまり・・クラスメイト達は・・君達3人の会話を聞いて・・あの男は何て身勝手な男なのだろうと、もう噂し始めているんだよ。入学初日だって言うのに・・彼の評判は既にがた落ちだ。」
「え・・?」
「クラスの皆は・・テア。君に同情しているよ。それに君と彼は付属の高校から大学へ進学してきているんだろう。どうやら彼は高校時代からあまり評判が良くなかったみたいだね?だからより一層テアへの同情が集まっている。君に酷い態度を取ればとるほどにね?」
知らなかった・・・。それではヘンリーは自分で自分の首を絞めているのだろうか・・?
「テア。その怪我だって・・恐らく彼にやられたんだろう?ヘンリーに・・。」
「は、はい・・でも彼には悪気は・・・。」
「悪気があろうとなかろうと・・・女性にそんな怪我を負わす男はろくな奴じゃないさ。悪いことは言わない。彼からは離れたほうがいい。」
「ええ・・・。」
勿論、彼に言われるまでも無く・・・私はヘンリーの心がキャロルに向いていると言う事を知ってしまったから・・・ゆくゆくは離れるつもりだった。そして、私は一つ重要な事を忘れていた。
「あ、そう言えば・・・私の名前はテア・オルソンと言うの。貴方の名前を教えてくれる?」
「俺?俺の名前はニコル・オットマンだ。よろしく、テア。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
そこまで会話したとき・・・。
「よし、着いたよ。」
ニコルに言われて顔を上げると、そこは先ほど訪れた医務室だった。ニコルは私を背中に背負ったままドア越しから呼びかけた。
「すみませんっ!いらっしゃいますか?」
すると・・・
カチャリ
医務室のドアが開き、先ほどの先生が顔をのぞかせた。
「何だい?病人か怪我人でも出たのか?」
先生はニコルを見た後、視線を私に移した。
「あれ・・?君は・・?」
「すみません・・・また治療をお願い出来ますか・・?」
私はニコルの背中の上で赤面しならがら先生にお願いした―。
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