許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました

結城芙由奈@コミカライズ発売中

文字の大きさ
上 下
24 / 77

24 助けに来てくれた人

しおりを挟む
パタパタパタパタ・・・ッ

背後から駆け足が近づいてきた。

「君、大丈夫かい?」

突然声を掛けられて驚いて振り向くと、そこにはランチの時にお世話になった彼が心配そうな顔で私を見下ろしていた。

「え・・・?貴方は・・・?」

すると彼は言った。

「気付かなかったかな?俺と君は同じクラスメイトだったんだけど。」

「え?そうだったんですかっ?!」

ヘンリーとキャロルの事ばかりに気を取られていたので、全く気付かなかった。

「行こう。連れて行ってあげるよ。」

彼は私の前に回り込むとしゃがんだ。

「え・・?」

戸惑っていると彼は言った。

「怪我・・痛いんだろう?医務室に行くんだよね?連れ行ってあげるよ。」

「だけど・・それではご迷惑では・・。」

すると彼は言った。

「遠慮する事はないさ。これから1年間クラスメイトになるわけだし・・同級生なんだから敬語も無しだ。テア。」

「え・・?ど、どうして私の名前を・・?」

「それは・・・。」

彼は苦笑しながら言う。

「あれだけ大きな声で互いの名前を呼び合っていれば・・覚えてしまうさ。」

「あ・・・わ、私達・・そうとう目立っていたのね・・・?」

赤面しながら言うと、彼はクスリと笑った。

「ほら、早く行こう。」

「それじゃ・・お言葉に甘えて・・・。」

私は彼の背中に身を預けると、彼は私の膝を抱えて軽々と立ち上がった。

「よし、行こう。」

「ええ・・お願い。」

そして彼は私をおんぶしたまま歩き出した。


「どう?痛まないかい?」

彼は背中の上にいる私を気遣って声を掛けて来る。

「ええ・・・大丈夫。それにしても・・・クラスの人達から注目されていたなんて・・すごく恥ずかしいわ・・。」

「いや。そんな事は無いさ。むしろ・・いい方向へ流れていると思うよ?」

「え?」

彼の話している言葉の意味が分からなかった。

「あの・・それはどういう意味なのかしら・・?」

「つまり・・クラスメイト達は・・君達3人の会話を聞いて・・あの男は何て身勝手な男なのだろうと、もう噂し始めているんだよ。入学初日だって言うのに・・彼の評判は既にがた落ちだ。」

「え・・?」

「クラスの皆は・・テア。君に同情しているよ。それに君と彼は付属の高校から大学へ進学してきているんだろう。どうやら彼は高校時代からあまり評判が良くなかったみたいだね?だからより一層テアへの同情が集まっている。君に酷い態度を取ればとるほどにね?」

知らなかった・・・。それではヘンリーは自分で自分の首を絞めているのだろうか・・?

「テア。その怪我だって・・恐らく彼にやられたんだろう?ヘンリーに・・。」

「は、はい・・でも彼には悪気は・・・。」

「悪気があろうとなかろうと・・・女性にそんな怪我を負わす男はろくな奴じゃないさ。悪いことは言わない。彼からは離れたほうがいい。」

「ええ・・・。」

勿論、彼に言われるまでも無く・・・私はヘンリーの心がキャロルに向いていると言う事を知ってしまったから・・・ゆくゆくは離れるつもりだった。そして、私は一つ重要な事を忘れていた。

「あ、そう言えば・・・私の名前はテア・オルソンと言うの。貴方の名前を教えてくれる?」

「俺?俺の名前はニコル・オットマンだ。よろしく、テア。」

「こちらこそ、よろしくお願いします。」

そこまで会話したとき・・・。

「よし、着いたよ。」

ニコルに言われて顔を上げると、そこは先ほど訪れた医務室だった。ニコルは私を背中に背負ったままドア越しから呼びかけた。

「すみませんっ!いらっしゃいますか?」

すると・・・

カチャリ

医務室のドアが開き、先ほどの先生が顔をのぞかせた。

「何だい?病人か怪我人でも出たのか?」

先生はニコルを見た後、視線を私に移した。

「あれ・・?君は・・?」

「すみません・・・また治療をお願い出来ますか・・?」

私はニコルの背中の上で赤面しならがら先生にお願いした―。







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

手放したくない理由

ねむたん
恋愛
公爵令嬢エリスと王太子アドリアンの婚約は、互いに「務め」として受け入れたものだった。貴族として、国のために結ばれる。 しかし、王太子が何かと幼馴染のレイナを優先し、社交界でも「王太子妃にふさわしいのは彼女では?」と囁かれる中、エリスは淡々と「それならば、私は不要では?」と考える。そして、自ら婚約解消を申し出る。 話し合いの場で、王妃が「辛い思いをさせてしまってごめんなさいね」と声をかけるが、エリスは本当にまったく辛くなかったため、きょとんとする。その様子を見た周囲は困惑し、 「……王太子への愛は芽生えていなかったのですか?」 と問うが、エリスは「愛?」と首を傾げる。 同時に、婚約解消に動揺したアドリアンにも、側近たちが「殿下はレイナ嬢に恋をしていたのでは?」と問いかける。しかし、彼もまた「恋……?」と首を傾げる。 大人たちは、その光景を見て、教育の偏りを大いに後悔することになる。

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

愛人をつくればと夫に言われたので。

まめまめ
恋愛
 "氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。  初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。  仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。  傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。 「君も愛人をつくればいい。」  …ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!  あなたのことなんてちっとも愛しておりません!  横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。 ※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…

婚約者の不倫相手は妹で?

岡暁舟
恋愛
 公爵令嬢マリーの婚約者は第一王子のエルヴィンであった。しかし、エルヴィンが本当に愛していたのはマリーの妹であるアンナで…。一方、マリーは幼馴染のアランと親しくなり…。

幼馴染と仲良くし過ぎている婚約者とは婚約破棄したい!

ルイス
恋愛
ダイダロス王国の侯爵令嬢であるエレナは、リグリット公爵令息と婚約をしていた。 同じ18歳ということで話も合い、仲睦まじいカップルだったが……。 そこに現れたリグリットの幼馴染の伯爵令嬢の存在。リグリットは幼馴染を優先し始める。 あまりにも度が過ぎるので、エレナは不満を口にするが……リグリットは今までの優しい彼からは豹変し、権力にものを言わせ、エレナを束縛し始めた。 「婚約破棄なんてしたら、どうなるか分かっているな?」 その時、エレナは分かってしまったのだ。リグリットは自分の侯爵令嬢の地位だけにしか興味がないことを……。 そんな彼女の前に現れたのは、幼馴染のヨハン王子殿下だった。エレナの状況を理解し、ヨハンは動いてくれることを約束してくれる。 正式な婚約破棄の申し出をするエレナに対し、激怒するリグリットだったが……。

とある虐げられた侯爵令嬢の華麗なる後ろ楯~拾い人したら溺愛された件

紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵令嬢リリアーヌは、10歳で母が他界し、その後義母と義妹に虐げられ、 屋敷ではメイド仕事をして過ごす日々。 そんな中で、このままでは一生虐げられたままだと思い、一念発起。 母の遺言を受け、自分で自分を幸せにするために行動を起こすことに。 そんな中、偶然訳ありの男性を拾ってしまう。 しかし、その男性がリリアーヌの未来を作る救世主でーーーー。 メイド仕事の傍らで隠れて淑女教育を完璧に終了させ、語学、経営、経済を学び、 財産を築くために屋敷のメイド姿で見聞きした貴族社会のことを小説に書いて出版し、それが大ヒット御礼! 学んだことを生かし、商会を設立。 孤児院から人材を引き取り育成もスタート。 出版部門、観劇部門、版権部門、商品部門など次々と商いを展開。 そこに隣国の王子も参戦してきて?! 本作品は虐げられた環境の中でも懸命に前を向いて頑張る とある侯爵令嬢が幸せを掴むまでの溺愛×サクセスストーリーです♡ *誤字脱字多数あるかと思います。 *初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ *ゆるふわ設定です

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。

かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。 ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。 二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

恋人でいる意味が分からないので幼馴染に戻ろうとしたら‥‥

矢野りと
恋愛
婚約者も恋人もいない私を憐れんで、なぜか幼馴染の騎士が恋人のふりをしてくれることになった。 でも恋人のふりをして貰ってから、私を取り巻く状況は悪くなった気がする…。 周りからは『釣り合っていない』と言われるし、彼は私を庇うこともしてくれない。 ――あれっ? 私って恋人でいる意味あるかしら…。 *設定はゆるいです。

処理中です...