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9 応援したいから
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動物園は家族連れやカップル・・友人同士で連れ立っている人達ばかりだった。私の様に1人で周っている人は1人もいない。・・折角お洒落してきたのに・・・結局無駄だったみたいだ。さっさと1週したら、すぐにここを出よう。大体日差しも強いし、偏頭痛持ちの私にはこの照り付ける暑さと太陽は正直言って辛いし。
動物園を出たら・・どこか木陰の涼しい場所で休むことにしよう・・・。
ぐるりと1周周って動物園を出ると、先ほど私が馬車から降りる時に手を貸してくれた御者の男性が木陰に馬車を移動させて馬の毛の手入れをしていた。そうだ・・あの人に手を貸してくれたお礼を伝えておこう。
「先程は有難うございました。」
私は男性に近付くと背後からお礼を言った。
「え?あ・・・お嬢様・・ヘンリー様と先程のお嬢様はどうされたのですか?」
彼は私が1人でいる事に疑問を抱いたのか尋ねてきた。
「ヘンリーとキャロルは2人で動物園の中を見て周っているんです。私は一足先に出てきました。馬車を降りる時は手を貸して頂いて有難うございました。」
「いえ・・・俺のような使用人が、お嬢様に手を差し出すのは恐れ多いのに・・お気の毒で見ていられなくて。」
同情のこもった目で見つめられた。
「ありがとうございます・・・。」
思わず胸がジンとなってうつむきながらお礼を言った。
「それではお2人が戻られるまで・・馬車の中で待っていますか?」
男性が馬車のドアを開けてくれた。
「いえ、いいんです。私はこの馬車には乗りませんから。2人にもそう話してあります。」
手を振って断ると、男性は驚いた表情を浮かべた。
「ええ・・?それではどうやってお屋敷迄帰られるのですか?」
「辻馬車を拾って帰ります。だから気にしないでください。」
「ですが・・・・」
尚も男性は言いよどむけれども、私は言った。
「ヘンリーとキャロルを2人きりにしてあげたいんです。お似合いだと思いませんか?あの2人は。それに・・・私の見たところヘンリーはキャロルに好意を持っていると思うんです。」
「た、確かに・・・そう見えますけど・・・。」
「私は・・・ヘンリーに嫌われたくないので・・もしヘンリーとキャロルが両想いなら、私は応援してあげたいんです。」
「お嬢様・・・。」
彼は声を詰まらせて私を見た。
「そういうわけですので・・私はここで退散しますね。」
頭を下げると、私はその場を立ち去った―。
****
「う~ん・・どれにしようかしら・・。」
私は今雑貨屋さんに来ていた。明後日からはいよいよ私たちは大学生になる。高校時代とはガラリと生活スタイルか変わるので、この際心機一転新しい文房具を買いにやってきていた。
「わあ~・・・このガラスペン・・すごくきれいで書きやすそう・・。」
手に取ったガラスペンは太陽の光にかざすとキラキラ輝いてそれは美しかった。
「うん、決めたわ。このガラスペンを今度から筆記用具代わりにしましょう。」
私はペンの軸部分が青い色のガラスペンを手に取るとお会計をする為にカウンターへ向かった―。
「ありがとうございましたー。」
店員さんの声に見送られ、私はお店を出た。
「フフフ・・・素敵な買い物が出来たわ。大学で使うのが今から楽しみだわ・・。」
素敵なガラスペンを買えたことで、先ほどまで落ち込んでいた自分の心が少しだけ浮上した。お店を出た目の前には大きな広場があり、高さ2mほどの時計塔がある。時刻はそろそろ12時を指そうとしていた。
「え・・?もうこんな時間だったの・・?」
何だか動物園にいた時よりも長い時間を雑貨屋さんで過ごしてしまっていたようだった。
「どこかでお昼を食べて・・辻馬車を拾えば丁度帰るのに都合が良い時間かもしれないわね・・。」
あたりを見渡すと、若い男性が商売をしているドーナツ屋さんの屋台が目に入った。屋台の隣には大きなパラソルが立てられ、ベンチが置かれている。
「ドーナツ・・・美味しそう。あれを食べて帰りましょう。」
私ドーナツ屋さんへ向かうと、そこでドーナツを2個、アイスミルクティーを注文し、ベンチで涼みながらお腹を満たした。
「お嬢さん。おひとりなんですか?」
屋台の男性が声をかけてきた。
「はい、先ほどまでは連れがいたのですけど・・今は1人です。あ、あの・・このあたりで辻馬車が拾える場所はありませんか?」
「辻馬車?ああ・・・それなら丁度この屋台の先・・を行ったところに辻馬車を経営している店があるから直接訪れてみるといいよ。」
「本当ですか?ありがとうございます。」
ドーナツを食べえた私はすぐに辻馬車の店に向かい、運よく1台借りることが出来た。そしてそのまま屋敷迄送ってもらい、帰宅したのは午後3時を過ぎていた―。
動物園を出たら・・どこか木陰の涼しい場所で休むことにしよう・・・。
ぐるりと1周周って動物園を出ると、先ほど私が馬車から降りる時に手を貸してくれた御者の男性が木陰に馬車を移動させて馬の毛の手入れをしていた。そうだ・・あの人に手を貸してくれたお礼を伝えておこう。
「先程は有難うございました。」
私は男性に近付くと背後からお礼を言った。
「え?あ・・・お嬢様・・ヘンリー様と先程のお嬢様はどうされたのですか?」
彼は私が1人でいる事に疑問を抱いたのか尋ねてきた。
「ヘンリーとキャロルは2人で動物園の中を見て周っているんです。私は一足先に出てきました。馬車を降りる時は手を貸して頂いて有難うございました。」
「いえ・・・俺のような使用人が、お嬢様に手を差し出すのは恐れ多いのに・・お気の毒で見ていられなくて。」
同情のこもった目で見つめられた。
「ありがとうございます・・・。」
思わず胸がジンとなってうつむきながらお礼を言った。
「それではお2人が戻られるまで・・馬車の中で待っていますか?」
男性が馬車のドアを開けてくれた。
「いえ、いいんです。私はこの馬車には乗りませんから。2人にもそう話してあります。」
手を振って断ると、男性は驚いた表情を浮かべた。
「ええ・・?それではどうやってお屋敷迄帰られるのですか?」
「辻馬車を拾って帰ります。だから気にしないでください。」
「ですが・・・・」
尚も男性は言いよどむけれども、私は言った。
「ヘンリーとキャロルを2人きりにしてあげたいんです。お似合いだと思いませんか?あの2人は。それに・・・私の見たところヘンリーはキャロルに好意を持っていると思うんです。」
「た、確かに・・・そう見えますけど・・・。」
「私は・・・ヘンリーに嫌われたくないので・・もしヘンリーとキャロルが両想いなら、私は応援してあげたいんです。」
「お嬢様・・・。」
彼は声を詰まらせて私を見た。
「そういうわけですので・・私はここで退散しますね。」
頭を下げると、私はその場を立ち去った―。
****
「う~ん・・どれにしようかしら・・。」
私は今雑貨屋さんに来ていた。明後日からはいよいよ私たちは大学生になる。高校時代とはガラリと生活スタイルか変わるので、この際心機一転新しい文房具を買いにやってきていた。
「わあ~・・・このガラスペン・・すごくきれいで書きやすそう・・。」
手に取ったガラスペンは太陽の光にかざすとキラキラ輝いてそれは美しかった。
「うん、決めたわ。このガラスペンを今度から筆記用具代わりにしましょう。」
私はペンの軸部分が青い色のガラスペンを手に取るとお会計をする為にカウンターへ向かった―。
「ありがとうございましたー。」
店員さんの声に見送られ、私はお店を出た。
「フフフ・・・素敵な買い物が出来たわ。大学で使うのが今から楽しみだわ・・。」
素敵なガラスペンを買えたことで、先ほどまで落ち込んでいた自分の心が少しだけ浮上した。お店を出た目の前には大きな広場があり、高さ2mほどの時計塔がある。時刻はそろそろ12時を指そうとしていた。
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何だか動物園にいた時よりも長い時間を雑貨屋さんで過ごしてしまっていたようだった。
「どこかでお昼を食べて・・辻馬車を拾えば丁度帰るのに都合が良い時間かもしれないわね・・。」
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「本当ですか?ありがとうございます。」
ドーナツを食べえた私はすぐに辻馬車の店に向かい、運よく1台借りることが出来た。そしてそのまま屋敷迄送ってもらい、帰宅したのは午後3時を過ぎていた―。
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