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1 私と、許嫁
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8月・・照りつける太陽がまぶしい季節。
お気に入りの外出着を着て、つばの広い真っ白な帽子をかぶった私は許嫁である「ヘンリー・マイルズ」と一緒に10年ぶりに再会する大切な親友が現れるのを今か今かと船着き場の桟橋で待っていた。
「ねえ、ヘンリー。港って素敵よね?ここから世界中へ行く事ができるなんて・・・ロマンがあると思わない?いつか一緒にどこか遠い外国へ行ってみたいな。」
私はじっと海を見つめ、ヘンリーの袖を握り締めながら彼に語り掛けた。今、私の隣に立つヘンリーは許嫁同士。私とヘンリーが許嫁になったきっかけは10年前に同じ子爵家である私と彼の父が偶然お酒の席で知り合って、すっかり意気投合したからである。そして2人とも同じ年の男の子と女の子の子供がいるという事を知り、口約束で私と彼は許嫁となったのだった。けれども別に書面で婚約を交わしたわけでもない曖昧な関係の許嫁である。それでも私は彼の事が大好きで、2年後・・・20歳になったら彼と正式に婚約を交わすことは間違いないだろうと子供の頃からずっと信じて、現在にまで至っている。
「ふ~ん・・・別に俺はそうは思わないけどな・・・。だけど・・・テア。何もこの暑いのに俺を連れ出すことはなかっただろう・・?」
どこか恨めしそうな視線を向けてヘンリーは言う。
「ご、ごめんね・・・。でも青い海って素敵でしょう?潮風も気持ちいいし。」
言いながら私はヘンリーの横顔を見つめた。
彼は地味な茶色の髪色の私と違い、髪は輝くような金色で外見もとてもハンサムで私の自慢の許嫁だった。私の方が一方的に彼の事を好きなので、どこかへ出かけたりするときはいつも私の方から声をかけていた。正直に言えばそこが少し寂しいところではあった。せめて一度でもいいからヘンリーから声をかけて欲しいと切に願っているのだが、一向に彼からの誘いは無い。
ひょっとして・・私って、本当はヘンリーから何とも思われていないのかな・・?いつもどこか冷めたヘンリーを見ていると、時折不安な気持ちがこみあげてきてしまう。だから私は彼に気を使ってしまうのだ。
「ごめんね・・・。今日は付き合わせちゃって。でも町の案内をしてあげるって約束してたから・・荷物も多いだろうし・・。それに私よりもヘンリーの方が町について色々詳しいでしょう?」
「まあ・・別に特に予定は無かったから構わないけどさ・・。それで?そのキャロルっていう女性は9月から俺たちと同じ学校に入学するんだっけ?」
「ええ。そうなのよ。彼女は寮に入るのだけど、週末は我が家で過ごす事になるの。」
「ふ~ん・・・。」
ヘンリーはたいして興味がなさそうに話を聞いている。
「ヘンリー・・・暑いなら・・木陰で待とうか?」
「ああ、それがいいな。」
2人で船着き場から少し離れた芝生の生えた木陰に移動しかけたとき・・・。
ボーッ・・・・
水平線から汽笛の音が聞こえてきた。
「あ!ヘンリーッ!船よっ!船が来たわっ!あれに親友のキャロルが乗ってるのよ。」
指さしてまだ豆粒ほどの大きさにしか見えない蒸気船を指さすも、ヘンリーは興味なさげに言う。
「ああ・・・そうかい。それじゃ親友が下りてくるまでは俺は木陰にいるから・・・テアは桟橋で待ってればいいだろう?」
それだけ言うとヘンリーは海に背を向けて芝生の方へ向かうと、木の下に座り込んでしまった。
「ヘンリー・・・。」
本当は船から降りてきたキャロルは荷物を沢山持っているだろうから、ヘンリーにも荷物を持つのを手伝ってもらいたかったけども・・・仕方ない。私の方から誘ってしまったんだし・・。
「ふう・・・」
一度だけ深いため息をつくと私は一人、親友のキャロルを迎える為に再び桟橋へと向かった―。
お気に入りの外出着を着て、つばの広い真っ白な帽子をかぶった私は許嫁である「ヘンリー・マイルズ」と一緒に10年ぶりに再会する大切な親友が現れるのを今か今かと船着き場の桟橋で待っていた。
「ねえ、ヘンリー。港って素敵よね?ここから世界中へ行く事ができるなんて・・・ロマンがあると思わない?いつか一緒にどこか遠い外国へ行ってみたいな。」
私はじっと海を見つめ、ヘンリーの袖を握り締めながら彼に語り掛けた。今、私の隣に立つヘンリーは許嫁同士。私とヘンリーが許嫁になったきっかけは10年前に同じ子爵家である私と彼の父が偶然お酒の席で知り合って、すっかり意気投合したからである。そして2人とも同じ年の男の子と女の子の子供がいるという事を知り、口約束で私と彼は許嫁となったのだった。けれども別に書面で婚約を交わしたわけでもない曖昧な関係の許嫁である。それでも私は彼の事が大好きで、2年後・・・20歳になったら彼と正式に婚約を交わすことは間違いないだろうと子供の頃からずっと信じて、現在にまで至っている。
「ふ~ん・・・別に俺はそうは思わないけどな・・・。だけど・・・テア。何もこの暑いのに俺を連れ出すことはなかっただろう・・?」
どこか恨めしそうな視線を向けてヘンリーは言う。
「ご、ごめんね・・・。でも青い海って素敵でしょう?潮風も気持ちいいし。」
言いながら私はヘンリーの横顔を見つめた。
彼は地味な茶色の髪色の私と違い、髪は輝くような金色で外見もとてもハンサムで私の自慢の許嫁だった。私の方が一方的に彼の事を好きなので、どこかへ出かけたりするときはいつも私の方から声をかけていた。正直に言えばそこが少し寂しいところではあった。せめて一度でもいいからヘンリーから声をかけて欲しいと切に願っているのだが、一向に彼からの誘いは無い。
ひょっとして・・私って、本当はヘンリーから何とも思われていないのかな・・?いつもどこか冷めたヘンリーを見ていると、時折不安な気持ちがこみあげてきてしまう。だから私は彼に気を使ってしまうのだ。
「ごめんね・・・。今日は付き合わせちゃって。でも町の案内をしてあげるって約束してたから・・荷物も多いだろうし・・。それに私よりもヘンリーの方が町について色々詳しいでしょう?」
「まあ・・別に特に予定は無かったから構わないけどさ・・。それで?そのキャロルっていう女性は9月から俺たちと同じ学校に入学するんだっけ?」
「ええ。そうなのよ。彼女は寮に入るのだけど、週末は我が家で過ごす事になるの。」
「ふ~ん・・・。」
ヘンリーはたいして興味がなさそうに話を聞いている。
「ヘンリー・・・暑いなら・・木陰で待とうか?」
「ああ、それがいいな。」
2人で船着き場から少し離れた芝生の生えた木陰に移動しかけたとき・・・。
ボーッ・・・・
水平線から汽笛の音が聞こえてきた。
「あ!ヘンリーッ!船よっ!船が来たわっ!あれに親友のキャロルが乗ってるのよ。」
指さしてまだ豆粒ほどの大きさにしか見えない蒸気船を指さすも、ヘンリーは興味なさげに言う。
「ああ・・・そうかい。それじゃ親友が下りてくるまでは俺は木陰にいるから・・・テアは桟橋で待ってればいいだろう?」
それだけ言うとヘンリーは海に背を向けて芝生の方へ向かうと、木の下に座り込んでしまった。
「ヘンリー・・・。」
本当は船から降りてきたキャロルは荷物を沢山持っているだろうから、ヘンリーにも荷物を持つのを手伝ってもらいたかったけども・・・仕方ない。私の方から誘ってしまったんだし・・。
「ふう・・・」
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