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レベッカ一行の世界漫遊の旅 5 (母との再会 2)
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「それよりもお母様。こんな疑似空間を作れるほどの力があったのなら、何故さっさと島から逃げ出そうとは思わなかったのですか?」
するとお母様が悲し気な顔を浮かべた。
「それはね、あの人に言われたのよ。もしこの島を逃げれば、レベッカがどうなるか分からないぞって。あの人は不思議な指輪を持っていて、この島を自分の思い通りに管理することが出来るらしいのよ。ヤング家の秘宝の指輪だと言っていたわ。どこまでその言葉が本当なのかは分からなかったけど、貴方を盾に脅迫してきたから言うことを聞かざるを得なかったのよ。それにここで待っていれば、いつか貴女に会えると信じていたから。でも…待っていて本当に良かったわ」
お母様はそう言うと、再び私を抱きしめてきた。
私も抱きしめ返し…ふと、島にのこしてきた仲間たちの事が頭に浮かんだ。
「お母様、お願いがあります。ミラージュはずっとお母様に会いたがっていたの。それに、私には頼もしい仲間がいるのよ?ずっと一緒に旅をしてきた大切な仲間が。皆に会わせたいの。お願い……ここに皆を呼んでくれる?」
「ええ、それは構わないわよ。けれどいいの?レベッカ。貴女の力の事をその人達は全員知ってるのかしら?」
「あ…」
お母様に指摘されて、思い出した。
そうだった。
私は自分の力のことをサミュエル王子には内緒にしていたのだ。私が普通の人間とは違うということを知られたくは無かったから……。
「……」
思わず黙ってしまうと、お母様が優しく笑った。
「そう…レベッカ。貴女には大切な男性がいるのね?」
大切……?
私は今までサミュエル王子をどんな目で見ていたのだろう?でも、仮にサミュエル王子が私の前からいなくなってしまったとしたら?
それは…きっと心にぽっかり穴が空いてしまったように感じてしまうかもしれない。
私は正直な気持ちをお母様に告げた。
「多分‥‥大切な男性なのだと思います。私のことを恐れて、いなくなってしまったら…きっと寂しいし…悲しくなると思います」
「そうなのね…?つまりレベッカはその男性のことが好きなのね?」
好き?
私がサミュエル王子のことを…?
サミュエル王子は私にはっきり好意を示してくれるけれども、私は一度も王子の気持ちに返事をしたことは無かった。
だけど…。
するとお母様が言った。
「とにかく、本当にその男性のことを大切に思っているなら…自分のことをありのままに話すべきだと思うわ。私は恋に失敗してしまったけど、人間社会の荒波にもまれて生きてきた貴女なら、大丈夫な気がするわ」
そうだ。
私は…私の秘密を知って貰ったうえでサミュエル王子の本心が知りたい。
「大丈夫です、お母様。どうか私の仲間たちをここへ呼び寄せて下さい」
「いいわよ。では、目を閉じて呼び寄せたい人たちを思い浮かべて…」
私はお母様の言う通り、目を閉じた――。
するとお母様が悲し気な顔を浮かべた。
「それはね、あの人に言われたのよ。もしこの島を逃げれば、レベッカがどうなるか分からないぞって。あの人は不思議な指輪を持っていて、この島を自分の思い通りに管理することが出来るらしいのよ。ヤング家の秘宝の指輪だと言っていたわ。どこまでその言葉が本当なのかは分からなかったけど、貴方を盾に脅迫してきたから言うことを聞かざるを得なかったのよ。それにここで待っていれば、いつか貴女に会えると信じていたから。でも…待っていて本当に良かったわ」
お母様はそう言うと、再び私を抱きしめてきた。
私も抱きしめ返し…ふと、島にのこしてきた仲間たちの事が頭に浮かんだ。
「お母様、お願いがあります。ミラージュはずっとお母様に会いたがっていたの。それに、私には頼もしい仲間がいるのよ?ずっと一緒に旅をしてきた大切な仲間が。皆に会わせたいの。お願い……ここに皆を呼んでくれる?」
「ええ、それは構わないわよ。けれどいいの?レベッカ。貴女の力の事をその人達は全員知ってるのかしら?」
「あ…」
お母様に指摘されて、思い出した。
そうだった。
私は自分の力のことをサミュエル王子には内緒にしていたのだ。私が普通の人間とは違うということを知られたくは無かったから……。
「……」
思わず黙ってしまうと、お母様が優しく笑った。
「そう…レベッカ。貴女には大切な男性がいるのね?」
大切……?
私は今までサミュエル王子をどんな目で見ていたのだろう?でも、仮にサミュエル王子が私の前からいなくなってしまったとしたら?
それは…きっと心にぽっかり穴が空いてしまったように感じてしまうかもしれない。
私は正直な気持ちをお母様に告げた。
「多分‥‥大切な男性なのだと思います。私のことを恐れて、いなくなってしまったら…きっと寂しいし…悲しくなると思います」
「そうなのね…?つまりレベッカはその男性のことが好きなのね?」
好き?
私がサミュエル王子のことを…?
サミュエル王子は私にはっきり好意を示してくれるけれども、私は一度も王子の気持ちに返事をしたことは無かった。
だけど…。
するとお母様が言った。
「とにかく、本当にその男性のことを大切に思っているなら…自分のことをありのままに話すべきだと思うわ。私は恋に失敗してしまったけど、人間社会の荒波にもまれて生きてきた貴女なら、大丈夫な気がするわ」
そうだ。
私は…私の秘密を知って貰ったうえでサミュエル王子の本心が知りたい。
「大丈夫です、お母様。どうか私の仲間たちをここへ呼び寄せて下さい」
「いいわよ。では、目を閉じて呼び寄せたい人たちを思い浮かべて…」
私はお母様の言う通り、目を閉じた――。
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