<番外編>政略結婚した夫の愛人は私の専属メイドだったので離婚しようと思います

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売

文字の大きさ
上 下
187 / 194

レベッカ一行の世界漫遊の旅 5 (母との再会 3)

しおりを挟む
 視界が真っ白に染まり、私は思わず眩しさのあまりに目を閉じた。
そしてゆっくりと目を開け……私は驚きのあまり固まってしまった。

「え……?こ、ここはどこ‥‥?」

さっきまで私は目の前にジャングル、背後には白い砂浜と言う場所で立っていたのに、今目の前に広がる光景はまるきり別物だった。

足元には美しい花々が咲き乱れた地平線が広がっている。
青く澄んだ空には虹がかかり、遠くの方には神殿らしきものが見えている。

「な、何‥‥この光景は‥‥?」

次の瞬間、私は大事なことに気付いた。
私以外、誰もこの場所にいないのだ。

私1人がこの場所に佇んでいる。ここにはミラージュもサミュエル王子もナージャさんやセネカさんの姿が無い。

そして私を追いかけて来たお父様たちやアレックス王子たちの姿も消えているのだ。

「一体ここは‥‥?」

思わずポツリと呟くと、背後で声が聞こえた。

「ここは『エデンの楽園』を模した疑似空間なのよ。あの無人島とは切り離された場所に存在しているの」

それはとても優し気な女性の声だった。

「え?!」

私は勢いよく振り向いた。
すると、金色に輝く長い髪に白いドレスを着た美しい女性が立っていて私をじっと見つめている。

ま、まさか……?

「お、お母様‥‥?」

声を震わせながら尋ねてみた。

「ええ、そうよ。レベッカ。私は貴女の母‥‥レイラよ」

「お母様……」

私の目に涙が浮かんだ。
今まで一度も涙なんか流したことが無かったのに、生まれて初めて私の目から涙が流れ落ちた。

「レベッカ」

お母様が私の名を呼ぶ。

「お母様ーっ!!」

次の瞬間、私は走り出していた。
そしてお母様の胸に飛び込むと、まるで子供の用に泣きじゃくった。

「お母様‥‥お母様‥‥会いたかった‥‥!」

するとお母様も私を強く抱きしめると涙を流した。

「私もよ、レベッカ。17年間‥‥一度も貴女のことを忘れたことは無かったわ。いつか必ず会える日が来ると信じて待っていて‥‥本当に良かったわ…」

その後、私とお母様は暫くの間互いの身体を抱きしめあって涙を流した――。


****

「お母様、ここは別の空間だと話していたけれど……他の人達はどうなったの?」

2人で神殿の階段に座ると、お母様に尋ねた。

「ええ、彼らは今もあの島にいるわ。ただ時を止めているけどね、何しろミラージュが超音波を使おうとしたから。流石にあの島でそれを使われたらただでは済まないと思ったからよ。ついでに貴女との感動の再会を邪魔されたくなかったからね?」

母は悪戯っぽく笑みを浮かべた。

「ええ、本当に助かりました。私、お父様たちだけではなく元・夫やその家族からも追われているみたいだったので」

「ええ、知っているわ。それにしても図々しい人達よね。皆レベッカの力を狙っているのよ。貴女がどれだけ凄い力を持っているか…失って初めてその重要性を知ったのだから」

お母様は少しだけ悔しそうな表情を浮かべた――。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた

miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」 王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。 無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。 だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。 婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。 私は彼の事が好きだった。 優しい人だと思っていた。 だけど───。 彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

お飾り王妃の愛と献身

石河 翠
恋愛
エスターは、お飾りの王妃だ。初夜どころか結婚式もない、王国存続の生贄のような結婚は、父親である宰相によって調えられた。国王は身分の低い平民に溺れ、公務を放棄している。 けれどエスターは白い結婚を隠しもせずに、王の代わりに執務を続けている。彼女にとって大切なものは国であり、夫の愛情など必要としていなかったのだ。 ところがある日、暗愚だが無害だった国王の独断により、隣国への侵攻が始まる。それをきっかけに国内では革命が起き……。 国のために恋を捨て、人生を捧げてきたヒロインと、王妃を密かに愛し、彼女を手に入れるために国を変えることを決意した一途なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:24963620)をお借りしております。

完結 愛のない結婚ですが、何も問題ありません旦那様!

音爽(ネソウ)
恋愛
「私と契約しないか」そう言われた幼い貧乏令嬢14歳は頷く他なかった。 愛人を秘匿してきた公爵は世間を欺くための結婚だと言う、白い結婚を望むのならばそれも由と言われた。 「優遇された契約婚になにを躊躇うことがあるでしょう」令嬢は快く承諾したのである。 ところがいざ結婚してみると令嬢は勤勉で朗らかに笑い、たちまち屋敷の者たちを魅了してしまう。 「奥様はとても素晴らしい、誰彼隔てなく優しくして下さる」 従者たちの噂を耳にした公爵は奥方に興味を持ち始め……

処理中です...