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レベッカを探せ 4 〜キング一家の旅 11
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「ほら、早くどこか宿屋を探してきなよ」
「そうだ、アレックスや。もうすうぐ日が暮れる。今の路銀で事足りる宿屋を探してくるのだ」
『デネス』の港町に到着した俺たちは早速、クソ兄貴と変態親父に命令された。
「おいっ!ふざけるなっ!俺は船酔いでぶっ倒れていたお前たちの分まで船の上で必死に働いていたんだぞ!いつもいつも俺ばかりこき使いやがって!たまにはてめえらで宿屋を探してこいっ!俺はいやだぞっ!ここから一歩も動くものかっ!」
俺は腕組みすると、ドカッと胡坐をかいて地面に座り込んだ。
「ねぇ、そんなところに座り込んでいたら町の人達に迷惑だし、第一恥ずかしくないのかい?」
「そうだ、ランスの言う通りだ。お前も大人なら分かるだろう?どういう行動が相手の迷惑になるかくらい」
クズ兄貴が俺の正面に回り込んで説得し、親父まで加勢してくる。
「うるせぇっ!!貴様らはなぁ‥お、俺の大切なデロリアンを…か、勝手に売りやがったんだぞ…そ、そんな奴らの言う事なんか…き、聞けるかよ…」
あ、駄目だ。
言ってるそばからデロリアンの美しい毛並み…優しい瞳を思い出すだけで…悲しみが溢れてくる…。
「くっ…デ、デロリアン…」
思わず目頭が熱くなりかけた時…。
「あ~いやだいやだ。また泣きべそかいてるよ」
「あぁ、全くだ。成人男性のくせにベソベソと泣きおって…情けない男だ」
「な、何だとぉっ?!誰のせいで泣いてると思ってるんだよっ!!元はと言えば…貴様らが勝手に…お、俺のデロリアンを売り払ったからだろうっ?!返せっ!俺のデロリアンを帰せよっ!!」
俺は溢れる涙を拭うことも忘れ、道端で叫び…冷たい視線に晒されていることに気がついた。
「おいおい…何だ?アイツ…」
「馬鹿っ!見るんじゃねぇ!頭のおかしな奴だったらどうするんだ?!」
「でも男泣きする姿…意外と素敵じゃない?」
「しかし、あんなマッチョが顔を真っ赤にして泣きわめく姿…うけるな」
「デロリアンて誰かしら…余程大切な女性だったのかもしれないわね…」
俺の方を見て町の連中がコソコソ囁きあっている会話の内容が全て耳に入ってくる。
「て、てめえら…さっきから何見てんだよっ!俺は…俺は見せ者じゃねぇっ!!とっとと失せろっ!!」
俺の喚き声に人々は蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
「おい!親父っ!兄貴っ!もうこんな町いられるかっ!今すぐ出るぞっ!」
こんな…こんな醜態晒した町になんか、滞在出来るかっ!!
「あれ~…いいのかなぁ…そんなこと言っても…」
「ああ、そうだ。お前がベソベソ泣いている姿はこの魔道具に全て記録されておるのだからな?」
ロリコン親父は代々キング家に伝わる家宝の指輪を俺の前で見せつけた。
この指輪には不思議な魔力が備わっており、自分が記録しておきたい映像と音声を指輪に残しておくことが出来るのだ。
そしてこいつらはよりにもよって、デロリアンを失って泣き叫ぶ俺の姿を残していやがったのだ。
「ほらほらどうする~アレックス。君が泣き叫んでいるこの映像をレベッカに会った時、見せてあげてもいいんだよ~」
兄貴がニコニコしながら俺に迫ってくる。
そう、今の俺は…こいつらに脅迫されて縁を切ることが出来ずにいたのだ。
「わ、分かった…!宿屋を探してくればいいのだろうっ?!」
あんな映像をレベッカに見られたら…俺はもう終わりだっ!!
「ちくしょーっ!!今に見てろよっ!!」
こうして俺は宿屋を探すべく、夕暮れの『デネス』の町を駆け回ることになった―。
「そうだ、アレックスや。もうすうぐ日が暮れる。今の路銀で事足りる宿屋を探してくるのだ」
『デネス』の港町に到着した俺たちは早速、クソ兄貴と変態親父に命令された。
「おいっ!ふざけるなっ!俺は船酔いでぶっ倒れていたお前たちの分まで船の上で必死に働いていたんだぞ!いつもいつも俺ばかりこき使いやがって!たまにはてめえらで宿屋を探してこいっ!俺はいやだぞっ!ここから一歩も動くものかっ!」
俺は腕組みすると、ドカッと胡坐をかいて地面に座り込んだ。
「ねぇ、そんなところに座り込んでいたら町の人達に迷惑だし、第一恥ずかしくないのかい?」
「そうだ、ランスの言う通りだ。お前も大人なら分かるだろう?どういう行動が相手の迷惑になるかくらい」
クズ兄貴が俺の正面に回り込んで説得し、親父まで加勢してくる。
「うるせぇっ!!貴様らはなぁ‥お、俺の大切なデロリアンを…か、勝手に売りやがったんだぞ…そ、そんな奴らの言う事なんか…き、聞けるかよ…」
あ、駄目だ。
言ってるそばからデロリアンの美しい毛並み…優しい瞳を思い出すだけで…悲しみが溢れてくる…。
「くっ…デ、デロリアン…」
思わず目頭が熱くなりかけた時…。
「あ~いやだいやだ。また泣きべそかいてるよ」
「あぁ、全くだ。成人男性のくせにベソベソと泣きおって…情けない男だ」
「な、何だとぉっ?!誰のせいで泣いてると思ってるんだよっ!!元はと言えば…貴様らが勝手に…お、俺のデロリアンを売り払ったからだろうっ?!返せっ!俺のデロリアンを帰せよっ!!」
俺は溢れる涙を拭うことも忘れ、道端で叫び…冷たい視線に晒されていることに気がついた。
「おいおい…何だ?アイツ…」
「馬鹿っ!見るんじゃねぇ!頭のおかしな奴だったらどうするんだ?!」
「でも男泣きする姿…意外と素敵じゃない?」
「しかし、あんなマッチョが顔を真っ赤にして泣きわめく姿…うけるな」
「デロリアンて誰かしら…余程大切な女性だったのかもしれないわね…」
俺の方を見て町の連中がコソコソ囁きあっている会話の内容が全て耳に入ってくる。
「て、てめえら…さっきから何見てんだよっ!俺は…俺は見せ者じゃねぇっ!!とっとと失せろっ!!」
俺の喚き声に人々は蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
「おい!親父っ!兄貴っ!もうこんな町いられるかっ!今すぐ出るぞっ!」
こんな…こんな醜態晒した町になんか、滞在出来るかっ!!
「あれ~…いいのかなぁ…そんなこと言っても…」
「ああ、そうだ。お前がベソベソ泣いている姿はこの魔道具に全て記録されておるのだからな?」
ロリコン親父は代々キング家に伝わる家宝の指輪を俺の前で見せつけた。
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そしてこいつらはよりにもよって、デロリアンを失って泣き叫ぶ俺の姿を残していやがったのだ。
「ほらほらどうする~アレックス。君が泣き叫んでいるこの映像をレベッカに会った時、見せてあげてもいいんだよ~」
兄貴がニコニコしながら俺に迫ってくる。
そう、今の俺は…こいつらに脅迫されて縁を切ることが出来ずにいたのだ。
「わ、分かった…!宿屋を探してくればいいのだろうっ?!」
あんな映像をレベッカに見られたら…俺はもう終わりだっ!!
「ちくしょーっ!!今に見てろよっ!!」
こうして俺は宿屋を探すべく、夕暮れの『デネス』の町を駆け回ることになった―。
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