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レベッカ一行の世界漫遊の旅 3 (ノマード王国の旅 27)
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「本当に…初めからこうすれば良かったですわ」
小さな手乗りサイズのドラゴンに変身したミラージュは私の肩の上に乗ってため息を付いた。
「ええ、そうね。私も迂闊だったわ。ミラージュがドラゴンの姿に変身すれば身体のサイズを変えられるということをすっかり忘れていたのだから」
「行きもこの姿でレベッカ様と同じラクダに乗っていれば、あんなにペッペとラクダに唾を吐かれる事も、ラクダ酔いすることもなかったのですから!」
ミラージュは自分に腹を立てているのか、プンプンしている。
今、私達は宿泊している宿屋を出て再びノマード王国へ向けて砂漠超えをしていた。一番先頭を進むのはサミュエル皇子で、その後ろをナージャさん、そして一番後ろを行くのは私と手乗りドラゴン…もとい、肩乗り?ドラゴンのミラージュである。
「ところで…本当に良かったのかしら」
「何がですか?」
ミラージュが尋ねてきた。
「ナージャさんの事よ。あのオアシスの町では売れっ子で有名な占い師だったのに、誰にも何も言わずにテントを畳んで勝手に店じまいして…組合の人や常連さん達が驚くんじゃないかしら?」
「何ですか?組合とは?」
「う~ん…占い連盟の組合とか…?」
「そんなものがあるのですか?」
「さぁ、知らないわ。でも勝手に店を出して占いをして良いとは思えなくて。ほら、よく場所代を払わないと出店させてくれない場合ってあるでしょう?」
「ああ…なるほど、確かに言われてみればそうですね。でもあのナージャさんは規格外の方なので、果たしてそのような一般常識が通用する方でしょうか?」
ミラージュも私から見れば十分規格外だと思うけど。まぁ、かくいう私も規格外の人間の部類ではあるけれども。
「それにしても暑いわね~…」
太陽を見上げながらぼやくとレベッカが言った。
「それではレベッカ様お得意の天候を操ってみてはいかがですか?」
おおっ!ミラージュ、中々ナイスな事を言ってくれる。けれど…。
「いいえ、やっぱりやめておきましょう。急に砂漠の天候が変わったら、どんな異変を来すか分からないわ。こんなところで天変地異を引き起こすわけにはいかないものね」
「なるほど…それならまだ耐えなければなりませんね」
そして私とミラージュは体力の温存の為、口を閉ざして黙々とノマード王国へ帰還を果たした―。
****
「ひええええっ!!お、お許しをっ!」
ラクダを借りた店主を私達は今、恐喝していた。ミラージュが片手で店主の襟首をつかみ、持ち上げているのだ。さすがはミラージュ!
「貴方…よくも私達を騙して下さいましたね?覚悟は出来ていますか?」
「す、すみませんっ!すみませんっ!身なりが良かったので、少々ぼったくっても大丈夫だろうと思ったんです!どうせよそ者だろうから黙っていればバレないと思ったんです!ほんの出来心なんですっ!」
この店主…よほどヘタレなのだろう。首を締め上げられただけでペラペラと白状するのだから。
「なる程…しかし、お前はこの辺りでは有名な店主だったらしいじゃないか。阿漕な商売をして、そのうち噂が広まって誰も客が寄り付かなくなったから、この国を初めて訪れた何も知らない旅人を次から次へと騙して来たと聞いてるぞ?」
サミュエル皇子が店主を見上げながら腕組みして言う。何故か違和感を感じる光景だ。
「す、すみません!お金はぼったくった分は返金しますから、どうかお許しください!」
「そうね、なら…」
私が言いかけたが、ミラージュは首を振った。
「いいえ!全額返金していただきますっ!」
「「「えっ?!」」」
私とサミュエル王子、そして店主の声がハモる。
「な、何故全額なんですかっ?!ラクダは借りていったじゃありませんか!」
「そのラクダが問題なんですよっ!何なんですかっ?!ぺっぺっぺと唾ばかり吐いて…そのせいでどれだけ臭かったと思ってるんですかっ!慰謝料として全額返金して頂きます!」
「ええ~っ!!そ、そんな無茶苦茶な~っ!」
店主の泣きわめく声が店内に響き渡るのだった―。
小さな手乗りサイズのドラゴンに変身したミラージュは私の肩の上に乗ってため息を付いた。
「ええ、そうね。私も迂闊だったわ。ミラージュがドラゴンの姿に変身すれば身体のサイズを変えられるということをすっかり忘れていたのだから」
「行きもこの姿でレベッカ様と同じラクダに乗っていれば、あんなにペッペとラクダに唾を吐かれる事も、ラクダ酔いすることもなかったのですから!」
ミラージュは自分に腹を立てているのか、プンプンしている。
今、私達は宿泊している宿屋を出て再びノマード王国へ向けて砂漠超えをしていた。一番先頭を進むのはサミュエル皇子で、その後ろをナージャさん、そして一番後ろを行くのは私と手乗りドラゴン…もとい、肩乗り?ドラゴンのミラージュである。
「ところで…本当に良かったのかしら」
「何がですか?」
ミラージュが尋ねてきた。
「ナージャさんの事よ。あのオアシスの町では売れっ子で有名な占い師だったのに、誰にも何も言わずにテントを畳んで勝手に店じまいして…組合の人や常連さん達が驚くんじゃないかしら?」
「何ですか?組合とは?」
「う~ん…占い連盟の組合とか…?」
「そんなものがあるのですか?」
「さぁ、知らないわ。でも勝手に店を出して占いをして良いとは思えなくて。ほら、よく場所代を払わないと出店させてくれない場合ってあるでしょう?」
「ああ…なるほど、確かに言われてみればそうですね。でもあのナージャさんは規格外の方なので、果たしてそのような一般常識が通用する方でしょうか?」
ミラージュも私から見れば十分規格外だと思うけど。まぁ、かくいう私も規格外の人間の部類ではあるけれども。
「それにしても暑いわね~…」
太陽を見上げながらぼやくとレベッカが言った。
「それではレベッカ様お得意の天候を操ってみてはいかがですか?」
おおっ!ミラージュ、中々ナイスな事を言ってくれる。けれど…。
「いいえ、やっぱりやめておきましょう。急に砂漠の天候が変わったら、どんな異変を来すか分からないわ。こんなところで天変地異を引き起こすわけにはいかないものね」
「なるほど…それならまだ耐えなければなりませんね」
そして私とミラージュは体力の温存の為、口を閉ざして黙々とノマード王国へ帰還を果たした―。
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「ひええええっ!!お、お許しをっ!」
ラクダを借りた店主を私達は今、恐喝していた。ミラージュが片手で店主の襟首をつかみ、持ち上げているのだ。さすがはミラージュ!
「貴方…よくも私達を騙して下さいましたね?覚悟は出来ていますか?」
「す、すみませんっ!すみませんっ!身なりが良かったので、少々ぼったくっても大丈夫だろうと思ったんです!どうせよそ者だろうから黙っていればバレないと思ったんです!ほんの出来心なんですっ!」
この店主…よほどヘタレなのだろう。首を締め上げられただけでペラペラと白状するのだから。
「なる程…しかし、お前はこの辺りでは有名な店主だったらしいじゃないか。阿漕な商売をして、そのうち噂が広まって誰も客が寄り付かなくなったから、この国を初めて訪れた何も知らない旅人を次から次へと騙して来たと聞いてるぞ?」
サミュエル皇子が店主を見上げながら腕組みして言う。何故か違和感を感じる光景だ。
「す、すみません!お金はぼったくった分は返金しますから、どうかお許しください!」
「そうね、なら…」
私が言いかけたが、ミラージュは首を振った。
「いいえ!全額返金していただきますっ!」
「「「えっ?!」」」
私とサミュエル王子、そして店主の声がハモる。
「な、何故全額なんですかっ?!ラクダは借りていったじゃありませんか!」
「そのラクダが問題なんですよっ!何なんですかっ?!ぺっぺっぺと唾ばかり吐いて…そのせいでどれだけ臭かったと思ってるんですかっ!慰謝料として全額返金して頂きます!」
「ええ~っ!!そ、そんな無茶苦茶な~っ!」
店主の泣きわめく声が店内に響き渡るのだった―。
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